HOME団体概要support シネマコリア!メルマガ登録サイトマッププライバシー・ポリシーお問合せ



サイト内検索 >> powered by Google

■日本で観る
-上映&放映情報
-日本公開作リスト
-DVDリリース予定
-日本発売DVDリスト
■韓国で観る
-上映情報
-週末興行成績
-韓国で映画鑑賞
■その他
-リンク集
-レビュー&リポート
■データベース
-映画の紹介
-監督などの紹介
-俳優の紹介
-興行成績
-大鐘賞
-青龍賞
-その他の映画賞


《通訳は見た!》 『寵愛』イ・ジヒョン&オ・ジホ編

Text by 尹春江
2002/3/21受領


Profile 尹春江(ユン チュンガン)

 シナリオ翻訳家。新潟県生まれの在日3世。和光大学人文学部卒。大学在学中に韓国へ留学。駐日韓国企業のOLを経てフリーランスに。NHKで放送された『接続』『太白山脈』『祝祭』など韓国映画の字幕翻訳多数。



 『寵愛』の女優イ・ジヒョンと男優のオ・ジホ、今回主演ふたりの来日時の通訳を務めるという幸運に恵まれた。イ・ジヒョンは去年の11月に、そしてオ・ジホは今年2月にそれぞれ来日し、撮影当時の心境やエピソード、そして完成した映画について大いに語ってくれた。


● 巨匠も認めたイ・ジヒョンの肢体

「あんなに色が白くて背が高くてきれいな女の人を、それまで見たことも会ったこともなかった」(後にオ・ジホが語ったイ・ジヒョンの第一印象)

 成田空港到着出口に現れたイ・ジヒョンはうわさ通り背が高く、透き通るような白い肌と黒い瞳、長い黒髪が印象的だった。映画を撮影した頃より6キロ増えてしまったという体重をかなり気にしながらも今回の取材旅行を素直に喜んでいた(いや、本人より同行のマネージャーさんの方が更に喜んでいたかな)。ちなみに、プレスリリースには「撮影のとき6キロ減量した」とあるから、これが普段の彼女の体重なのだろう。私から見れば「健康美」そのもの。しかし、この「体重」が後に騒動を引き起こすことになるとは・・・

 今回、プロモーションのスケジュール表を見て少しばかり驚いた。通常、取材はホテルの一室を貸し切って行なわれることが多い。朝から晩までひたすら「質問に答え、写真を撮る」の繰り返しだ。しかし今回は「移動」が多く、その先は「○○スタジオ」とある。そう、プロのカメラマンによる撮影が極めて多いのだ。そして、取材最終日の午前から午後にかけては「Sスタジオ」とあるではないか! えっ、まさか・・・ それって、かの有名なカメラマン、S大先生に私も会えるってこと?!

 ホテル到着後、すぐにミーティングがはじまった。滞りなく終わるはずが、例の「Sスタジオ」で引っかかった。それもそのはず、ヌードグラビアの撮影が予定されていたのだ。配給会社側は韓国に事前に送ったという撮影内容が記されたFAXまで持ち出して一生懸命説明をするが、なかなか話がかみ合わない。どうも日本の配給とイ・ジヒョンの間に入った会社が、詳細をマネージャーに説明せずに「OK」を出していたようだ。

 このあと揉めに揉めた。「S先生に撮っていただくことで『寵愛』の宣伝に、そして彼女のイメージアップにつながるんですよ」といくら周囲が説得してもマネージャーさんは「カメラマンとの信頼関係がない」と、決して首を縦に振らない。結局、OKするにしても、「『寵愛』のイメージで撮りたい」というS大先生の意向とは全く違う撮影になってしまうとのことで「お断り」することになってしまった。本人はさすがにちょっと残念そうだったが、そんな彼女をマネージャーさんがしきりに説得(慰め?)していたのがなんだか可笑しくもあった。マネージャーさんは「もちろん今後映画の中で必要があればヌードやベッドシーンにも応じる」と言っていたが、『寵愛』は既に終わった仕事なので、今更そのイメージでというのは・・・ そしてここ日本で再びヌードになればそのニュースはその日のうちに韓国のマスコミに知れ渡り、イメージダウンになりかねないと判断したようだった。

 実は今回の揉め事はこれ一回きりではなかった。他のスタジオでもスタイリストが用意した洋服がマネージャーさんの承諾を得られず、急遽、別の服で間に合わせるというハプニングも。元々用意された服は、彼女にぴったり似合っていたのだけれど。マネージャーさんは彼女の肌の露出を極端に嫌っていたように思える。そして彼はしきりに「太りすぎ」を口にしていた。けれど、『寵愛』のイメージとはまたちょっと違った健康美が眩しいほどセクシーで、被写体の彼女には誰もが目を奪われていた。

 それにしても、こんなゴタゴタ続きでもカメラの前ではヘコんだ様子をおくびにも出さないイ・ジヒョンはさすがだ。女優になる前は主に写真のモデルをやっていただけあって、自然にポーズをとりながらたちどころにオーラを醸し出す。何かを察知する能力に長けているのだろう。そして彼女はいつだって果敢に挑み、自信に溢れていた。

 彼女の悩み、それは、女優にしては大きすぎるし、モデルにしては小さすぎるという自身の中途半端な身長(172cm)とか。なんともうらやましい話だが、当の本人は結構本気で気にしていた。現在は大学一年に復学したそうだ。「妹より学年が下なの」と少し恥ずかしそうに打ち明けたその素顔には、まだあどけなさが残っていた。

 最終日、フライト時間ぎりぎりまでショッピングを楽しんだ彼女。お友達にとノートやペンをたくさん買い込んでいた姿が今でも忘れられない。


● 素直な好青年、オ・ジホ

「ジホ・オッパは、むちゃくちゃいい人。一見、相当遊んでるように見えるけど実は全然そうじゃなくて・・・ 撮影現場ではジホ・オッパがムードメーカー。落ち込む私をいつも勇気づけてくれたの。私たちはある意味『兄妹』だった。」(イ・ジヒョンが語ったオ・ジホの素顔)

(*) オッパ:直訳すると「お兄ちゃん」。韓国の女性は、親しい間柄になると(恋愛感情の有無にかかわらず)、血が繋がっていなくても、年上の男性をオッパと呼ぶ。

 配給会社や宣伝会社の担当スタッフのほとんどは女性だ。そしてインタビュアーもこの業界では女性が多い。今回そのほとんどがオ・ジホをひと目見て驚き、そしてうっとりしながら「なんてカッコいーーーの!」を連発。その大半が「藤木直人と金城武をたして二で割ったような顔」と形容していた。

 かたや、寝るとき以外の二日間をほぼ一緒に過ごしたスタッフからは、ため息混じりに「いい子だよねぇ〜」という声が。

 そう、オ・ジホはイ・ジヒョンが話していた以上にカッコよくて、その上、茶目っ気たっぷりのナイスガイだった。そして、いっときも体を動かさずにはいられないという彼のボディはまさに「彫刻」そのもの。

 通訳という仕事は、ある一定の場所・時間においてその相手(ここでは俳優)と一番密に繋がるもの。わがままな監督・俳優もいるため「通訳さんって大変ですねぇ」と周りから憐れみの目で見られるのが常だが、今回だけは逆に「羨望の的」。なぜってオ・ジホは、とっても気さくで、時には「お疲れでしょう」と気を使ってくれたり、肩を揉むフリをしてくれるんだもの。もうホンと「いい子」そのものだった。映画の中の彼は、暗くてちょっとオタクっぽいイメージだったけれど、実物は全く正反対だったというわけ。

 素直な気くばり青年、その原点は?

 彼は高校三年生まで全羅南道の木浦(モッポ)で育ったそうだ。昨今の韓国の若者はいわゆる故郷=出身地の話をしたがらない。「ソウル出身」というのがひとつのステータスでもあるからだ。でも彼はあっけらかんと「おじさんが今でも漁業を営んでいる」とむしろ誇らしげに語っていた。彼の根っからの「いい人」の部分は、木浦という海辺の大自然の中で育まれたに違いない。

 インタビュー時、彼は質問に対して控えめで、しゃべりすぎるということがなかった。そして演技の話になると当時を振り返り、必ず「今だったらもっと上手く演じられるはず」と締めくくった。

 二泊三日と短い滞在ではあったが、私は彼の人柄に魅せられてしまった。韓国では血が繋がっていなくても親しい間柄になると、年下から「イモ(おばさん=母親の姉妹)」、「サムチョン(おじさん=父母の兄弟)」と呼ばれる。私からすれば彼はさしあたり「チョッカー(甥っ子)」ってところかな。

 次回はアクション・コメディに挑戦したいと言っていたオ・ジホ。現在26歳。これからが本当の意味での勝負だと日本の「イモ」は思います。日本にも影ながら応援している人が少なからずいるという事実を胸に・・・ 目指せ! 第二のチャン・ドンゴン!(本人曰く「今最も気になる男優」だそうです)


Copyright © 1998- Cinema Korea, All rights reserved.