日本でもしばしば話題となるコンピュータ・ゲームの若者に対する悪影響を題材にしたスリラー。インターネット・ゲームにハマッた若者が、ゲームの世界と現実の世界を区別できなくなり、連続殺人を犯してしまう様を描く。
夏のある日、サッカーの日韓戦が行われ皆がテレビ観戦に熱中している時、ある若者(チョ・ハンジュン)がソウル市内にあるパラダイス・ヴィラを訪れる。彼はコンピュータネットワーク上で「20歳」というIDを使用しているのだが、オンライン・ゲームの中で彼が貯めたアイテム/武器をハッキングして盗んだ人物(IDは「バイアグラ」)が、ここパラダイス・ヴィラにいることをつきとめたのだ。そして、サッカー・ゲームが中継されている100分の間に、不気味な連続殺人事件が発生する。
「ヴィラ(Villa)」は元々は郊外住宅・別荘といった意味だが、韓国では市内にある多世帯住宅を「ヴィラ」と呼んでいる。日本でいえばちょっと洒落たマンションといったところ。パラダイス・ヴィラの住民達は一見平穏そうに見えるが、実は、隣家のピアノ講師(ハ・ユミ)と不倫関係にあるファンド・マネージャー(イ・ジヌ)、援助交際をする少女、浄水器を売るために屋上の水タンクに土を入れる主婦、カメラで住民を盗撮する学生など、秘密を持った人々ばかり。
『九老アリラン』、『われらの歪んだ英雄』、『永遠なる帝国』、『虹鱒』が日本でも紹介されているパク・チョンウォン監督作品。監督の前作『虹鱒』と同様、限定された空間内で極限状態におかれた人間がさらけ出す本性を描く。
美術はオ・サンマン。
「善」と「悪」、「純粋」と「狂気」の二つの顔を演じきった新人チョ・ハンジュンは、漢陽大学演劇映画科在学中の学生。映画はこれまで『チャン』に出演している。
2000年の釜山国際映画祭でワールド・プレミア上映され同年末には公開予定だったが、劇中に登場するオンライン・ゲーム「ヘルブレス」の権利元が「ゲーム中毒になった若者が猟奇的な殺戮を繰り広げるという内容により、自社ゲームのイメージが傷つけられる」と上映禁止仮処分を申請したため封切りが延期された。そして、六ヶ月に及ぶ法廷闘争の末、勝訴し、2001年末に一般公開にこぎつけた。
第5回(2000)釜山国際映画祭韓国映画パノラマ部門でワールド・プレミア上映。第34回(2001)シッチェス国際映画祭「オリエント・エクスプレス」部門招待作品。
初版:2001/12/10
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