青年修道僧ユリが繰り広げる壮絶な修行を描いた超前衛仏教映画。あまりに性描写や残酷なシーンが多く、映画評論家の間でも賛否両論となったが、カンヌ国際映画祭「国際批評家週間」に招待された初めての韓国映画となった。パク・サンニュンの小説『死に関する一つの研究』が原作で、「ユリ」は漢字で「[羊/久]里」と書き、「生は死である」ことを暗示する言葉とか。監督のヤン・ユノと男優パク・シニャンのデビュー作。彼らは東国大学の同期生でもある。
売春婦を母に持つ修道僧ユリ(パク・シニャン)は、33才になった年に観念のユートピア「ユリ」に入って行く。「ユリ」は僧侶達が真理を追究する場であるが、一般社会の慣習や雑念を忘れ去るために全裸で入っていく苦難の地。ユリはここで若き尼僧やオカマで好色な僧侶に出会い、殺人とセックス遍歴を続ける。そして、40日間の壮絶な修行の後に悟りを開く。
あまりに衝撃的で難解な作品であるが、基本的には思索と哲学を目指している。思索という意味では、ペ・ヨンギュンの『達磨はなぜ東へ行ったのか』に相通ずるものがあるが、『達磨はなぜ東へ行ったのか』の映像が静謐な自然美に満ちあふれているのに対し、『ユリ』は絶え間ない殺戮と倒錯的セックスの連続である点が異なる。いずれにせよ、パゾリーニの『ソドムの市』や寺山修司を思わせるその実験的映像からは韓国映画の多様性と進歩性、そして可能性を感じることができる。
第49回(1996)カンヌ国際映画祭「国際批評家週間」、トロント国際映画祭、ロッテルダム国際映画祭、第1回(1996)釜山国際映画祭「新しい波」部門招待、第17回(1996)青龍賞新人男優賞(パク・シニャン)、第33回(1997)百想芸術大賞新人演技賞(パク・シニャン,イ・ウンジョン)受賞作品。
初版:1999/2/13
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