監督のチャン・ソヌが、詩人金芝河(キム・ジハ)との対話から「魂までも売り渡す社会」というモチーフを得て製作した作品。1988年のソウル・オリンピックを控えて高度成長期にあった韓国社会を背景に、社会的成功を得るためなら何でもするサラリーマンが、最後には社会全体から裏切られる様を描く。
大手化学調味料会社「有味社」の販促課に配置された新入社員キム・パンチョク(金販促:アン・ソンギ)は、ライバル会社「甘味社」の社員の行きつけのバー「成功時代」のマダム、ソン・ソビ(ソン消費:イ・ヘヨン)に近づき相手企業の情報を収集。彼女をCMに起用した新調味料「アグマ」は、その他のメディア戦略も功を奏して売り上げは上々。ついには業界トップにまで会社を押し上げた業績が認められて地位と名誉を得たパンチョクは、ソビの利用価値がなくなったと考え、彼女と手を切る。順風満帆に見えたパンチョクの人生だが、ハイテク調味料「コンピュー味」にソビを起用したCMでライバル会社の逆襲が始まる。慌てふためいたパンチョクは再びソビに近づき結婚を申し込むのだが相手にされず、僻地の営業所に左遷されてしまう。故郷でもあるその地で一発逆転のアイディアを思い付いたパンチョクは本社に直行するのだが・・・
当時、平民党総裁だったキム・デジュンが、この映画を見るために初めて韓国映画が上映されている映画館を訪れたというエピソードがある。製作はファン・ギソン。企画はイ・チュニョン。撮影監督はユ・ヨンギル。脚本も監督のチャン・ソヌが担当している。
第25回(1989)百想芸術大賞男子演技賞(アン・ソンギ)・女子演技賞(イ・ヘヨン)・シナリオ賞、第9回(1989)映画評論家協会賞脚本賞受賞、第39回ベルリン国際映画祭、第16回モスクワ国際映画祭、環太平洋映画祭'88 in 大宮、第13回くまもと映画祭、第3回(1989)福岡アジア映画祭、アジアシネマフェスティバル in 大阪東方圏聞録'89出品作品。
初版:1998/8/15
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