アイアン・パーム
題名 英題 ハングル |
アイアン・パーム Iron Palm 아이언 팜 |
製作年 |
2002 |
時間 |
121 |
製作 提供 共同提供 配給 |
シネワイズ・フィルム マイ・フィルム STARMAX イコリア ファニーベスト コリア・ピクチャーズ |
監督 |
ユク・サンヒョ |
出演 |
チャ・インピョ キム・ユンジン パク・クァンジョン チャーリー・チョン |
日本版 Video DVD |
なし |
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ロサンゼルスのコリアタウンでロケを行ったロマンチック・コメディ。初恋の相手に対する一途な愛を追い求める純情男の奮闘記。
5年前に自分を捨ててロスへ行ってしまった元彼女ジニー(キム・ユンジン)を探して、電気炊飯器ひとつ持ってアメリカへやってきたチェ・ギョンダル(チャ・インピョ)。彼は、一生愛すると誓った恋人を思うたびに、電気炊飯器の熱いご飯の中に指を突っ込んで鍛錬(中国拳法の鉄砂掌のマネ)をするチョット変な男。韓国も韓国語も、そして韓国名までも捨てて、アメリカでは「アイアン・パーム(鉄砂掌)」と名乗っている彼は、空港で出会ったタクシー運転手ドンソク(パク・クァンジョン)の助けを得て、ジニーを探し始める。一方のジニーは焼酎カクテルバーの出店を夢見る無類の焼酎好き。現在はバーテンダーをしているが、金もアメリカ市民権も持つ事業家のボーイフレンド、アドミラル(チャーリー・チョン)と共に幸せな毎日を送っていた。ところが、そんな彼女の前にある日突然、元彼のアイアン・パームが! そして、全てを持つ男と、国も名も捨ててアメリカへやってきた男の間に、ジニー争奪戦が繰り広げられる。
台詞の多くが英語のため、アメリカで生活した経験があり英語に堪能なキム・ユンジンとチャ・インピョがキャスティングされた。貴公子然としたイメージの強いチャ・インピョが、タイトル・ロールの田舎っぺ風純情男を「壊れた」演技で熱演。彼の敵役を演じるチャーリー・チョンは、『ER』などの有名テレビ番組にも出演したことがある在米韓国人男優。
監督はこれが長編デビュー作となる新人のユク・サンヒョ(39,陸相孝)。彼は、新聞記者から転進して、シナリオ・ライターとなり、『薔薇色の人生』(1994)、『錦紅よ錦紅よ』(1995)、『祝祭』(1996)などの脚本・脚色を担当した人物。『薔薇色の人生』では青龍賞、大鐘賞、百想芸術大賞、映画評論家協会賞など著名な映画賞の脚本賞を総ナメにした。また、1994年に製作した短編『悲しい熱帯』は、第1回ソウル短編映画祭で観客賞を受賞しており、1998年に製作した『タートルネック・セーター』は第1回コダック・イーストマン短編製作支援作。現在は南カリフォルニア大学でシナリオの勉強をしている。
映画好きの監督が、アメリカで撮った韓国映画。監督が米国在住の映画狂だけあって、ビリー・ワイルダー、チャーリー・チャップリン、セルジオ・レオーネ、ブルース・リー作品など、ハリウッド・クラシックからの引用やパロディが見受けられる。
製作はホン・ジヨンとキム・ドンウク。脚本は監督のユク・サンヒョ。撮影はフィリップ・リー。照明はロジャー・チンギリアン。音楽はマーシャ・セーガル。編集はエブラハム・イム。
韓国では「できの悪いハリウッド風クラシック・コメディ」、「貧弱な笑い、国籍不明の焼酎カクテルを飲んだ感じ」と酷評され、興行成績も散々だった。
初版:2002/5/6
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投稿者:カツヲうどんさん 投稿日:2002/4/29 21:37:40
この作品、ある一面では非常に良く出来た映画である。登場するキャラクターも、ユク・サンヒョ監督の海外に住む同胞に対する愛情と批判が滲み出ており、よく考え抜かれている。だが、それはあくまでも「アメリカ式映画術」の範囲内での話だ。
まるで映画学校教科書そのままのような出来具合は、作品のパワー不足を大きく増幅させ、まじめ過ぎる演出姿勢は、映画を一層つまらなくしている。そもそも、この監督の個性はコメディを撮るには、向いていないのではないか? 投資側との「大人の事情」で、コメディを撮らざるをえなかったのだとしたら、何と不幸な見本であることか。
また、この作品、スタッフの名前を見ればわかるとおり、ほとんどが現地のスタッフで占められている。そのせいか、韓国人が撮った韓国映画というには、何とも中途半端で収まりが悪い仕上がりとなっている。それは、北野武監督が、同様に現地スタッフ編成で製作した『BROTHER』の歯切れの悪さ、出来損ない感覚に通じるものだ。
主演のギョンダル演じるチャ・インピョの魅力の無さは尋常でなく、とにかく観ていてイライラする。彼自身のアメリカ留学経験が、妙にねじれた愛国コンプレックスを生み出してしまったのではないか、と余計な妄想を広げてしまう。
キム・ユンジンは、彼女の持っている聡明な個性がなんだか役柄にそぐわない。彼女の英語の上手さ・表現力の豊かさも逆効果だ。
ギョンダルの相棒を演じるパク・クァンジョンのタクシー運転手こそ、唯一この作品の中で、一番説得力を持つ存在だろう。ギョンダルの恋敵を演じるチャーリー・チョンはハリウッドで活躍している俳優で、チャ・インピョが足元にも及ばないくらい俳優として魅力的だ。だから、三角関係の行方とそれを巡るドタバタが、全然納得のゆくものになっていかない。
かつて韓国には、ペ・チャンホ監督の手による『ディープ・ブルー・ナイト』という、荒いがアメリカ移住の現実を赤裸々に描いた傑作がある。だが、この『アイアン・パーム』には、『ディープ〜』が持っていた第三者でも共感させてしまう強引な現実感が全くない。あえていえば、主人公を袋叩きにする韓国系とおぼしきティーン連中こそ、一番追うべき対象だったのではないか? 彼らこそ、まさに『ディープ〜』の残した韓国映画が描くべき子供たちだと思うのだが。
そして物語のラスト。果たして、あなたならヒロイン=ジニーの選択をするだろうか? 私なら絶対しないだろう。ギョンダルのような男と老後を暮らすなんてまっぴら御免である。
【評価:★★】
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