HOME団体概要support シネマコリア!メルマガ登録サイトマッププライバシー・ポリシーお問合せ



サイト内検索 >> powered by Google

■日本で観る
-上映&放映情報
-日本公開作リスト
-DVDリリース予定
-日本発売DVDリスト
■韓国で観る
-上映情報
-週末興行成績
-韓国で映画鑑賞
■その他
-リンク集
-レビュー&リポート
■データベース
-映画の紹介
-監督などの紹介
-俳優の紹介
-興行成績
-大鐘賞
-青龍賞
-その他の映画賞


ラクダ(たち)


題名
英題
ハングル
ラクダ(たち)
Camel(s)
낙타(들)
製作年 2001
時間 91
製作 ファイン・コミュニケーション
監督 パク・キヨン
出演 イ・デヨン
パク・ミョンシン
日本版
Video
DVD
なし

 韓国西海岸の入り江を舞台にした、中年男女の一日だけの不倫の物語。主演の俳優二人とスタッフ10名によって、たった12日間で即興的にデジタル・カメラで撮影された白黒作品。現代人の孤独を日常的に静かに淡々と描き出したアート・フィルム。主人公達は終わりの見えない砂漠を歩く「らくだ」のように、目標のない人生を歩む。

 40代の男(イ・デヨン)と30代後半の女(パク・ミョンシン)が、韓国西海岸の小さな入り江にやってくる。二人は今日はじめて名前を知った仲。そんな彼らが一緒に旅することになったのは、お互いの中に似た部分を感じとったからだ。目的地に到着した二人。ここへは、以前、汽車に乗ってやってきたことがあるのだが、今はモーテル、刺身料理屋、カラオケに変わってしまっていた・・・ 食堂で夕食をとり、お互いについて質問しあう。カラオケで、ぎこちなく歌を歌い、キスをする。そして、モーテルで関係を結んだ二人。男は、もっと若い頃に出会っていたら自分たちがどうなっていたかを問うが、女は無言のまま。そして、朝が来て二人はまた食堂へ向かう。

 感情をあらわにしない演技を披露した主演の二人は、シナリオもなく、いわゆる演技も排除した本作を、ほとんど即興で演じていったという。イ・デヨンは劇団チャイムに所属し、『蜚言所(ピオンソ)』、『私に会いに来て』、『魚座』、『そこ』などの演劇に出演している演劇出身の中年男優。『私に会いに来て』の演技で、1996年には百想芸術大賞演劇部門新人賞を受賞している。映画では、『明日に流れる川』で同性愛に目覚める主人公のジョンミンを、『JSA』イ・ビョンホンの上官を演じているほか、『ペパーミント・キャンディー』『我が心のオルガン』などにも出演している。パク・ミョンシンは劇団漢江で活動し、いくつかの演劇に出演している演劇出身女優。演劇『五月の新婦』ではイ・デヨンと共演しており、映画初出演となる本作の後、『オアシス』にタクシー運転手の妻役で出演している。

 『モーテルカクタス』のパク・キヨン監督第二作。脚本と編集も監督のパク・キヨンが担当。撮影監督はチェ・チャンミン。音楽はパク・チンソク。製作はコ・チュンギル。製作費は9,800万ウォンと超低予算。

 元々の計画では、10代・20代の男女が主人公の『モーテルカクタス』、30代の男女が主人公の『砂漠』、そして40代の男女が主人公の『ラクダ(たち)』の三部作として製作する予定だったが、『砂漠』の製作費が調達できず、第二作として『ラクダ(たち)』を製作した。この三部作には「サボテン(=カクタス)」、「砂漠」、「らくだ」といずれも砂漠絡みの題名が付けられているが、監督によれば「砂漠」は乾いた現代社会を象徴しているとか。

 『モーテルカクタス』は、モーテルという限定された場所に訪れる四組のカップルを描いたが、『ラクダ(たち)』では登場人物が完全に固定され、逆に空間を移動していくのが異なる。しかし、両作品ともモーテルが重要な場所として登場してくるのは同じ。

 第6回(2001)釜山国際映画祭「韓国映画パノラマ」部門、第31回(2002)ロッテルダム国際映画祭、第52回(2002)ベルリン国際映画祭フォーラム部門、第16回(2002)フリブール国際映画祭コンペ部門、第15回(2002)シンガポール国際映画祭コンペ部門、第4回(2002)ブエノスアイレス国際独立映画祭、第3回全州国際映画祭2002特別上映部門、第28回(2002)シアトル国際映画祭Asian Trade Winds部門、第27回(2002)トロント国際映画祭ナショナル・シネマ・プログラム部門、第21回(2002)バンクーバー国際映画祭龍虎賞(Dragons and Tigers)部門、2002年ウィーン国際映画祭、第46回(2002)ロンドン映画祭ワールドシネマ部門、第26回(2003)イェテボリ映画祭韓国映画特別展、韓国インディペンデント映画2004招待作品。

 第16回(2002)フリブール(Fribourg)国際映画祭グランプリ・シナリオ賞、2002年ウィーン国際映画祭国際映画評論家協会(FIPRESCI)賞Special Mention受賞作品。

 2001年に、第6回釜山国際映画祭「韓国映画パノラマ」部門でワールド・プレミア上映された後、世界各国の映画祭に招待され、2002年9月27日にソウルのコア・アートホールで単館公開された。

初版:2002/10/3
最新版:2002/10/19



投稿者:カツヲうどんさん 投稿日:2002/10/13 21:58:42

 デジタル・カメラの普及とキネコ(ビデオ映像をフィルム・ネガ化する一番安い手法)の発達は、映画の個人主義化という変化を再びもたらしたが、「作家性」という言い訳を振り回した、独善的で、つまらない作品を増やす弊害ももたらした。

 この『ラクダ(たち)』も、そんなつまらない作品の一つである。

 デジタル・カメラ(つまりビデオ撮影)の特性を活かし、とにかく長回しの連続、出演者は、現場での緊張維持にさぞかし疲れた事だろう。もちろん、この映画には、出口の見えない状況を、あてもなくグルグルと巡り続けなければならない絶望感が、特にラストには良く出ている。だが、それを取ってしまえば、ダラダラと不倫カップルのつまらなそうな様子を映した疑似観察の様子が続くだけで、退屈なこと極まりない。観客は一方的に忍耐力を要求された挙句、観終わった後は「え? それで?」でおしまいなのだ。

 また劇中、私がとにかく気になったことは、不倫旅行をする二人が始終陰鬱で楽しそうな気配がまったくないことである。パク・キヨン監督の狙いとも受け取れるが、不倫であっても、好き合った者同士の旅行なのだから、楽しい瞬間は必ずあるはずなのに、映画の二人は始終、視線が合うことすら避けあっているのだ。「家族や周囲に対して後ろめたい」ということなのかも知れないし、二人の仲は既に末期症状、心中を考えているのかもしれない。それとも、この映画は監督自身の実話を投影したものなのだろうか?

 意外な事に、韓国の某映画誌の批評家たちは、この『ラクダ(たち)』に対して、高い評価を与え続けている。これは、外国人の私には本作品の価値が見えなかっただけ、という事なのかもしれない。だが、批評家たちの高い評価は、娯楽一辺倒の映画作りばかりに血道を上げる韓国映画業界への抵抗とも読めるし、彼らが一般客から全くズレた視点で映画を観ているだけ、と読む事も可能だ。

 映画の始まりだけは、若き日のヴィム・ベンダース監督作品を連想させる出来となっているが、その後はビデオ撮り作品の暗い未来を象徴するかのような作品である。

【評価:★】


Copyright © 1998- Cinema Korea, All rights reserved.