HOME団体概要support シネマコリア!メルマガ登録サイトマッププライバシー・ポリシーお問合せ



サイト内検索 >> powered by Google

■日本で観る
-上映&放映情報
-日本公開作リスト
-DVDリリース予定
-日本発売DVDリスト
■韓国で観る
-上映情報
-週末興行成績
-韓国で映画鑑賞
■その他
-リンク集
-レビュー&リポート
■データベース
-映画の紹介
-監督などの紹介
-俳優の紹介
-興行成績
-大鐘賞
-青龍賞
-その他の映画賞


シネマコリア2003
『純愛中毒』Q&Aセッション



Text by HIGA Photo by 宮田浩史
2003/10/14受領

日時:2003年8月31日(日)
場所:草月ホール
通訳:尹春江
司会:西村嘉夫

 シネマコリア2003で開催された『純愛中毒』のパク・ヨンフン監督のQ&Aセッションの模様をお届けします。本作は、シネマコリア2003では『中毒』という原題を直訳した題名で上映されましたが、その後『純愛中毒』という邦題で劇場公開されましたので、表記はすべて『純愛中毒』で統一しています。また、当日は2回のQ&Aセッションが行われましたが、本稿ではそれを1つにまとめています。ご了承下さい。

 なお、『純愛中毒』は多様な解釈ができる作品です。このQ&Aセッションで監督がお話しになっているのは、監督はそういうつもりで撮られたということであって、これが唯一絶対の正解ではありません。皆さんの解釈はそれはそれで大事にされた上で、お読み下さい。

 最後になりましたが、このQ&Aセッションでは「映画の秘密」についてネタバレしています。まだご覧になってらっしゃらない方は、映画本編をご覧のうえ、お読みになることをオススメ致します。



《Q&Aセッション1回目》

司会: こちらの作品は日本の上映では福岡・名古屋・東京と3度目ですが、観客の反応は福岡・名古屋・東京・韓国とそれぞれ違いはありましたでしょうか。
監督: 実は私は『純愛中毒』を韓国での試写以来約1年ぶりに見たわけです。そうして改めて見るとどうしてあんなふうにしたんだろうかとか、また日本まで来たのにプリントの状態が少し良くないのではというふうに感じたりました。改めて皆さんとこのような時間を共有できて良かったと思っています。この作品は配給が決まっているので皆さんが劇場で見られましたら、またそのときの感想というのは少し違ったものになると思います。なぜなら、韓国でこの作品を作ったときに音響のシステムにはドルビー・デジタルという一番良いものを使っていますので、それがあれば皆さんに訴える感情というのがまた違うものが出てくるかと思います。韓国でこの映画は2002年10月に上映されたんですが、第1週、第2週は観客動員数はとても良かったと思います。そしてその後やはり見た人たちの間で、特にネチズン(パソコンを通したファンたち)の間でかなり話題になった作品と言えます。そして最終的には韓国で150万人を動員しました。実はこの作品は韓国の反応としては、どちらかと言いますと、多分私はこういった形では初めて作った作品だと思います。なぜなら韓国ではこういった兄嫁と弟の愛というものはかなりセンセーショナルでモラル的には許されないといった風潮が残っているからです。それと、韓国内では当時も今もそうなんですけれど、商業的に成功するといわれている映画はコメディが主流なんです。ですからこういった真面目で深刻な映画というのは、自分自身でも大丈夫かなといったような気持ちになっていました。韓国内ではそれなりの評価があり、とてもよい評価から中間くらいにかけての評価だったと思います。そして、今年、福岡アジア映画祭とシネマコリアで上映された訳なんですけれども、日本の方たちの映画を見る姿勢に私自身非常に驚いています。皆さん、とても真面目に見ていただいているということをすごく感じました。また、この映画を皆さんと見まして、韓国で観客と一緒に見た時とまた違った感情を持つことができました。ですので、もう少しこの作品をいい作品に仕上げていれば、またもっと違った意味でここにいる観客にもいい作品を見せられたのではないかなという後悔と、他にまた恥ずかしさみたいなものを感じております。

司会: 具体的に何かこうしたほうが良かったと思われたところはありますか?
監督: 韓国で上映されたときにも同じことを思ったんですが、監督というものはどの監督もそうだと思うんですが、見た後に必ず思うことは「時既に遅し」と・・・ 私は特にこの映画の中で大事なものとして使われているネックレスの部分に関してはもう少し観客に分かりやすくすれば良かったんではないかと思います。特にエジュが本物のネックレスを発見したシーンですね。そのシーンに関してもう少し説明ができれば良かったんではないかなと思います。特に映画の中で扱っている小物である、このネックレスが重要な部分をしめているんですが、これに関しては特にそのシナリオの部分をもっと分かりやすくれば良かったんではないかと思います。

司会: 監督さんからはかなり控えめなコメントが続いているんですが、おそらく日本の観客の皆さんの感想や反応を知りたいと思ってらっしゃると思います。皆さん、ご質問、ご感想はいかがでしょうか。

質問: 大変楽しく拝見させていただきました。質問なんですが、キャスティングの経緯を教えてください。イ・ビョンホンさんが『バンジージャンプする』に出られていて、ちょうど表面上のシチュエーションが逆だったため(『バンジージャンプする』でイ・ビョンホンは、自分の男子生徒が昔の彼女の生まれ変わりではないかと悩む男性教師を演じている)、そのあたりの演技を興味深く見ていたため、ラストのどんでん返しに少しびっくりしました。今回のキャスティングについて何か意図的なものがあれば教えてください。
監督: 『バンジージャンプする』とはまったく関係ありません。『バンジージャンプする』は、『純愛中毒』が上映される1年位前にソウルで上映されたのですが、『純愛中毒』の中にもあった「憑依」と、それに加えて「同性愛」というコードの映画だったといえます。『バンジージャンプする』に関して言うなら、本当に科学的なものをそのまま「憑依」として受け止めていた映画だったのですが、私の映画『純愛中毒』は直接的な言い方になりますが、「憑依」と「詐欺」というのがそのコードとなっています。このイ・ビョンホンさん演じるテジンがいかに兄嫁を騙すか、イコール観客を騙すかであったかと思います。私はこの演技をできる俳優はイ・ビョンホンさんしかいないと思いました。なぜならイ・ビョンホンさんの年齢で、この内面演技ができるだけの演技力を持った人は他にいないと思ったからです。そして、今でも私はイ・ビョンホンさんは韓国の男優の中でも最高の俳優だと思っています。それで、彼にシナリオを渡したところ『バンジージャンプする』をやったり、『オールイン』などいろいろなものにキャスティングが決まっていたと思うんですが、すぐに「やりたい」という良いお返事をいただけました。

質問: さきほど監督のおっしゃっていた韓国の社会通念という観点から、この映画を撮ろうと思った動機を教えてください。
監督: このシナリオを読んで、果敢にこの映画に挑戦してみようといった感じではなく、一言で言うならシナリオが良かったからです。日本では日本文化の中で守らなければならない道徳的なルールあると思いますし、また韓国には儒教文化ということで社会的に守らなければならないルールが多々あります。その中で、仮に血が繋がっていないとはいってもこのような愛というのは韓国ではモラル的には許されないとなっています。ジャンルとしては勿論この映画はメロ・ドラマです。1997年にパク・チョルス監督の助監督を辞めまして、そしてデビュー作の準備をしていたんですが、結局2つほど製作が流れてしまって、その後にこのシナリオに出会いました。そして、それを読んだ時に、確かにメロ・ドラマではありましたが、今までなかったタイプでとても面白くて、ドロドロしたただのメロ・ドラマではないというところがとても気に入りました。このシナリオのよさで選んだといえます。

質問: 面白かったのですが、どう終わるのかと思いながら見ていたら「えーっ」という感じで、そのまま終わってしまったのですが。監督には聞いてはいけないことだと思いますが、この主人公2人の今後はどうなると思われているのでしょうか。一観客として非常に気になるので、ぜひ聞かせてください。
監督: 今質問された方が何をおっしゃりたいか良く分かります。そして、今、皆さん、この席でびっくりされて、この現実を受け入れられない方というのは他に沢山いらっしゃるかと思われます。が、それはそれで映画の意図どおりに皆さんが騙されたということだと思います(笑)。まず、先ほども少し言いましたが、この映画のコードは「憑依」と「詐欺」という2つです。結局これで皆さんをいかに騙すかということなんですが、そして最後に大どんでん返しを作るためには、これは間違いなく「憑依」なんだということを観客の方に思わせなければなりません。前半でそのようなものを多く見せてそして騙すという作業に従事し、そして最後の最後にエピローグで実は違ったんだということが明らかにされるわけです。で、ご質問された内容についてですが、この2人はこれから生きる2人なので、生きると同時に「できれば楽しく生きてほしい」というのが私の願いです。なぜなら、自分が兄嫁を愛するという、韓国社会で言うところの「狂った愛」を、非現実的ではあるんですが、それを成就するためには、ほとんど死んだ状態の兄を、ある意味殺してまでも、自分たちがそこまでしたんだから幸せにならなければならないと私は思っています。観客の皆さんがどういうふうに考えられるかは自由だと思います。しかし、私自身としては、2人はこれから先、死んだ兄のためにも幸せにならなくてはいけないと思っています。実は韓国で一般公開されたときに、出てくる観客が誰一人として笑って出てこなくて、すごく暗い表情になっていました。それを見たとたん、「あー、やっぱり駄目だったか」という心境になりました。

司会: 今日は日本の観客の顔を見られていかがですか?
監督: 韓国で上映後に見た観客の顔より随分明るくてとてもよかったです。あざ笑っているのかどうか定かではありませんが(笑)、とても明るいような気がします。

質問: 映画の中で地下鉄の出口のところで、兄が兄嫁(妻)を迎えに来ていて、そこに兄嫁の好きな音楽がかかっているというシーンはとても綺麗なシーンだったと思いました。そこにレコード店の主人がちょっと出てきますが、その人はエンドロールのところで友情出演という扱いになっていたと思うんですが、韓国では有名な方だと思いますが、監督とも親しい方なんでしょうか。
監督: その前にですね、兄ホジンはとてもよい夫として描かれているんですが、韓国の男性もそうですし、また僕もそうなんですが、あれほどよい夫を家庭でも演じてはいません。それと、ご質問のレコード屋の主人ですが、チョン・フンさんと申しまして、私の大学の同期になります。舞台演出家でかなり有名な方です。皆さんもご存知でしょうか。『NANTA』を演出された方でもあります。

司会: 音楽が非常に印象的なんですが、音楽監督はどういった方なのでしょうか?
監督: 音楽監督はチョン・ジェヒョンという方なんですが、彼自身「ベーシス」というグループのボーカルも担当したり、基本的にはシンガーソングライターです。実は彼のことは全く面識はなかったんです。当初『八月のクリスマス』『春の日は過ぎゆく』チョ・ソンウさんという有名な音楽監督さんにお願いしたかったんですが、かなり忙しい人なのでどうしようかと思っていたときに、プロデューサーから紹介されました。彼は音楽活動を続けながらも、フランスに映画音楽の勉強に行ってきて、ちょうど帰国したところだったんです。彼にシナリオを渡して、依頼することになりました。彼は、映画のコードをよく読み取ってくださって、とてもよい音楽を作ってくれたと思います。

司会: 先ほどの質問にあった地下鉄から上がってくる時にBGMをかけますが、その曲を音楽監督自身が歌われていると伺ったんですが・・・
監督: おっしゃるとおりです。「ウンスのテーマ」といい、彼が歌っています。

質問: 今後、映画に出演してほしい俳優さんがいらしたら教えてください。
監督: 実は個人的には、やはりまたイ・ビョンホンさんとやりたいという気持ちはあります。ただ、韓国では監督一人の意向で男優さん、女優さんを決めることはできません。なぜなら企画製作側次第でトップスターを持ってこなくてはいけない場合もありますし、そうでない俳優たちを何人か使ってやろうということになることもあります。ただ、イ・ビョンホンさんの場合ですと、トップ・スターに入る方なので、彼のスケジュール次第ということではあります。私が思うに、韓国はトップスター自体が少ないので彼らのスケジュールにもよりますが、それよりも何よりも、シナリオを読んで、「スケジュールも空いているし、私がやってみたいです」といった俳優さんに作品を合わせて作り、いい面を一杯引き出すのが監督業ではないかと考えております。使いたいと考えている俳優さんはイ・ビョンホンさんですが。


サイン会の模様

《Q&Aセッション2回目》

司会: 監督はこの作品では、どんな愛の形というのを描かれたかったのでしょうか。
監督: 皆さん、私の映画をわざわざ見に来てくださってありがとうございます。そろそろお腹の空く頃だと思いますが・・・ 私は今までの韓国的なモラルで考えると想像できないような愛を描きたかったのだと思います。ここに流れているコンセプトは今まで誰も韓国では扱ったことのないもので、既存のメロ・ドラマとは全く違った形の愛を描いているかと思います。そして、自分を殺してまでも、兄嫁に対する愛を貫き通す一人の男のこれもまたひとつの愛の形ではないか?ということを皆さんに伝えたかったのです。

司会: 今のお話にもあったんですが、韓国の恋愛ドラマ、メロ・ドラマは非常に分かりやすくて、感動して泣ける映画が多いんですが、監督が撮られている映画はそういう作品、いわゆる韓国的な恋愛映画とちょっと違うように思います。尊敬されている別の監督さんはいらっしゃいますか? 韓国の方でも、外国の方でもいいですが、お好きな作品や監督はおありなんでしょうか。
監督: 私は別段どの監督が好きであるとか、影響を受けている、ある作品からすごく影響をされたということは全くありません。今回この映画を作るにあたって、製作陣と打ち合わせをした中で出た意見としては、今まであった韓国のメロをもちろん基準にするんですが、そのラインよりも少し高度というか、少しいろんな要素を加味して、そして今までのメロ・ドラマとは少し違ったものを作り出そうというラインを1つ設けて、それに合わせてつくりました。皆さん今みてお分かりになったと思いますが、この映画はどの監督が作っても今ぐらいの水準のものが出来たのではないかと私自身は思っています。シナリオ自体がとてもいいものだったので、これは誰が作っても今ぐらいの水準にはなるのではと思っております。

司会: とてもそうは思えないですが(笑)。監督さんは今日お客さんの反応が非常に良いということで気を良くされていまして、今回もご無理を願ってご登壇いただいております。何か質問や感想などありましたら、どうぞ。

質問: 最後に兄嫁さんが秘密を知ってしまった訳ですが、彼女はその後どういう風になるんでしょうか。
監督: 私はできれば、ウンスとテジン、ホジンになっているテジンがこれから幸せに生きることを願っています。もちろんそういったことを撮影時に考えた訳ではないんですが、何も希望もない現実、もしくは少し狂った愛ではあるけれど果てしなく自分を愛してくれる弟と一緒に暮らすべきなのか、でも最後には結局弟の嘘を見抜きつつもこの人と生きていこうといった様々な混乱や葛藤を、子供もできている状態で彼女が乗り越え、敢えてこの人と一緒に暮らしていこう、この愛を貫こうと思ったわけですから、そう思った以上2人は幸せに暮らすべきだと思います。

質問: 撮影に当たって苦労されたこととかエピソードがあれば教えてください。また、キャストがどのようにして選ばれたのかということについてもお願いします。
監督: 苦労話なんですけれど、これといった心理的な苦労というのはあまりなかったです。俳優にもスタッフにも恵まれまして、とてもいい人たちと出会えて、そういう意味での苦労はなかったと思います。ただ一つ危険なシーンというんですか、そういうシーンがあったので大きな事故が起こらなければいいな、と思いました。他には、家のシーンはオープンセットで夏に撮影したんですが、一つには雨が多かったために撮影が押してしまったということと、もう一つはこのオープンセットについては家を中心にいろんなシーンを撮るんですが、夏場でまたものすごい田舎だったために蝉の声がすごくて、その度に鳴き止むのを待つといったことをしていました。しかし、いよいよそういった悠長なこともできなくなってきたので、スタッフが蝉のいそうな木の所へ行って、先に蝉を取るということしました。そういった苦労がちょっとあったくらいでしょうか。次に、キャスティングについてですが、第一に考えたのはアングルですね。二人が並んだときに兄嫁と弟という形で見た時に誰が似合うかと考えたときにイ・ビョンホンさんとイ・ミヨンさんというイメージが浮かび上がってきました。そして特にこの映画は、内面の世界の演技がすごく要求されるといった内容ですので、そういう意味でスター俳優さんを選んだわけです。その観点から見て、トップスターの中で一番そういう心理的演技がうまいということでイ・ビョンホンさんの名前があがり、そして女性ではイ・ミヨンさんがその演技力を買われて、最初にこの2人にシナリオが送られました。そしてまた運がよかったと思うのですが、この2人がシナリオを読んで、とてもいいシナリオだと言ってくださり、この作品に出演してくださることになりました。


監督にサインを求める長蛇の列

質問: この作品を全体的に見て、静かで深くて切ない映画であると同時に全く想像のつかないようなストーリーだった思います。このようなストーリーになる様なヒントとなったエピソードがあれば教えてください。
監督: そうですね。いわゆるどんでん返しがこの映画にはあったと思うんですが、そのどんでん返しがあったと観客が思う、そういった感情を受けるためにどうするかというのが実は大事なことだったんです。そのために私たち製作陣が考えたことは「憑依」という蓑を被った「詐欺」を観客に感じてほしいということ。観客=ウンスというわけなんですけども、結局ウンスをいかに騙すかということ=観客が騙されるということなので、そういったことに一番気を使いました。それで、先ほど質問された方が「とてもびっくりされた」という感想をおっしゃられたんですが、それはこちらの意図したことなので、上手くいったというというか、映画が成功したと言えると思います。そのどんでん返しを作るために私たちは映画の中にいろいろなことをちりばめました。韓国でもどちらかと言いますと、いろんな韓国的、文化的なモラルについて言う方もいたんですが、それでも10人中7〜8人位からは肯定的な評価を受けましたし、また今回日本で上映されるにあたりましては、日本の方たちにとてもいい反応をされているんだという感触を私は持っています。


Copyright © 1998- Cinema Korea, All rights reserved.