ミーハーに振り返る1998年の韓国映画
小沢英裕(SUM)
1999/2/6受領
芸能人の容姿やメイク・ファッションは当然変化していくものだと思うが、こと韓国の芸能界の変化はずいぶん私好みに揺れた印象が強い。せっかくなので、ミーハーな視点で1998年の作品を追っかけてみたい。
まずは女優がいかに綺麗だったか、という視点で見てみよう。
明るく暖かい映像も評価されて、興行的にもメロドラマの頂点に立った『手紙』と『八月のクリスマス』ではその映像センスに彩られて輝きを増したクィーンを見逃すわけにはいかないだろう。前者でベテランのチェ・ジンシルが、後者で映画では新人扱いしても構わないシム・ウナが素晴らしい男性に出会って光り輝く様子は「映画史に残る」という言葉を使っても許してもらえるだろう。
男性との出会いで輝いていく、というなら『ファースト・キス』のチェ・ジウも外せない。あか抜けない女性が綺麗に輝いていくのは、かつて『ミスター・マンマ』のチェ・ジンシルではメガネをはずした一瞬でヤラレタと思ったが、こっちはあか抜けないままのところから、私は枕かかえて応援してしまった。『ファースト・キス』は豪華な友情出演も見物で、モデル出身歌手パク・チユンがちょい役で出ていたのはもうけものだった。
透き通って冷たい映像で怖さの表現に成功したホラー『女校怪談』とブラックコメディ『クワイエット・ファミリー』は、いずれも若い女優陣を眺めているだけでストーリーと関係なく楽しんでしまった男性がいたに違いない。『女校怪談』では新人教師役のイ・ミヨンも魅力的だがキム・ギュリたち女子高生が、そして『クワイエット・ファミリー』ではコ・ホギョンと、ちょっとツンとしていてでも惹かれるティーンズガールたちが、すこぶる魅力的である。
冷たい映像と言えば映像の迫力が超弩級だった『ソウル・ガーディアンズ 退魔録』でチュ・サンミ。演技としての評価は保留するが、あれでファンになる人もいるだろう。日本のCMにも出ていて勢いは十分。
映画としてはつまらなかったが、ニューエイジものでちょっと冷たい前衛作品『バイ・ジュン 〜さらば愛しき人〜』では注目株キム・ハヌルの不安定で漂うように生きる姿が印象に残った。
それからキム・ヘスの名前も挙げなくてはなるまい。『ニューヨークデイドリーム』で見せたプライドの高い女性と、ラブコメ『チム 〜あこがれの人〜』で見せた憎めない姉御とは、いずれも脇役ながらどちらも魅力的で印象に残り、とても同一人物とは思えない。
不倫もの佳作『情事』は、大人の映像美で、イ・ミスクもとことん大人の女で、もう大人の恋をしたくなること請け合い。普通の主婦として悩みながら変わっていく微妙な心境を表現した演技はたいしたものである。
次に男優が格好良かった映画をみるとどうか。
今年、女性に「あなたに付いていきます」と思わせたトップは『手紙』のパク・シニャンと、映画の質はさほど高くもないかもしれないがアクションドラマ『男の香り』のキム・スンウであろうか。パク・シニャンのただただ頭が下がるばかりの熱演も見事だったが、女性へのアピールではこちらも負けていないキム・スンウは普通っぽくも甘いマスク、何よりあの目がいい。
ラブコメで一番支持された作品である『チム 〜あこがれの人〜』では、アン・ジェウクがやってくれた。女装でこれだけ女の子をしびれさせるなんて、世界でも稀じゃなかろうか??
夢のあるドタバタコメディ『エキストラ』では憎めないキャラクターなイム・チャンジョンが可愛い。彼ってついこないだまで韓国コメディの顔だったパク・チュンフンの跡が継げそうだ。
本格ティーンズアイドル青春もの『セブンティーン』はアイドルグループSechs Kiesがカッコよ過ぎでファンから見ればもう反則で、そうでなくても案外格好良く、作品全体として無難に仕上がっているからいい。
あまり話題にならなかった割に面白かった作品『水の上の一夜』は官能系で、ユ・ジハは男優的にはポイント高かった。
ダークな魅力の格好良さは『ソウル・ガーディアンズ 退魔録』でシン・ヒョンジュンである。チョン・ウソンと並んで彼らには演技力はいらないのかもしれない。
というわけで最後に出てくるのは彼、韓国映画界を背負って立つ男ハン・ソッキュの名は外せないだろう。彼はメロ映画の金字塔『八月のクリスマス』をして、またしても何かを背負ったようなキャラクターで打ちのめしてくれた。「彼の映画はどれも何も言わずに見てほしい」という言い回しを使うなら、普通は「彼」に監督の名前を入れるものだが、なぜだか俳優の彼の名前を当てはめても当たっているから不思議である。
自分が見られた映画ということで、ここで扱ったのは、1997年公開がロングランとなって1998年扱いでもある『手紙』から9月公開の『情事』までとなった。年末には良質でヒットしたラブもの『美術館の隣の動物園』でシム・ウナが、スーパーヒットメロドラマ『約束』でチョン・ドヨンが男性を引きつけており、今年は女優が目立った1年とも言える気はするが、冬の作品は逆に男優の活躍するものの数も目立つ。先ほどの『約束』の主役パク・シニャンを筆頭に、ラブコメ『陽が西から昇ったら』でイム・チャンジョンが、アクション『太陽はない』でチョン・ウソンが女性の方を安心してミーハー道に引き込んでくれることは間違いない。
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