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ブルース・リーを探して


題名
英題
原題
ハングル
ブルース・リーを探して
Looking for Bruce Lee!
李小龍を探せっ!
이소룡을 찾아랏 !
製作年 2001
時間 74
製作
配給
ドラッグ・フィルム
インディー・ストーリー
監督 カン・ロン
出演 《クライング・ナッツ》
ハン・ギョンノク
パク・ユンシク
イ・サンヒョク
イ・サンミョン
日本版
Video
DVD
なし

 インディーズ・ロック・バンド「クライング・ナッツ(Crying Nut)」主演による「ソウルに関する不思議な物語」。ジャンルを確定するのは難しい映画だが、あえて言えば「ロック・ドキュメンタリー」と「コミカル・ミステリー」のチャンポン。

 今日もまた、弘益大学前のライブ・ハウスでパンク・ロックをシャウトするクライング・ナッツ。ところが、彼等の周辺で謎の連続殺人事件が発生する。おかしなことに犠牲者の死体の傍らには常にブルース・リーの写真や映像などが発見され、巷では「ブルース・リー・ウィルス」の犠牲になったのでは?との噂が流れる。そして、クライング・ナッツのベーシスト、ハン・ギョンノクがこの謎の事件を解決するべく聞き込み捜査を開始するのだが・・・

 犯罪捜査物ではなく、捜査の過程で出会う、無国籍/多国籍なソウルに生きる不思議な人々を描く内容。

 クライング・ナッツはソウルの弘益大学付近にあるライブハウスを主な活動場所にしている実在のバンド。「朝鮮パンク」と呼ばれる彼等オリジナルの演奏スタイルを持ち、コリアン・インディーズ・バンドとしてはかなり有名。デビューアルバム『Crying Nut』(1998)は、インディーズ・バンドとしては韓国で初めて10万枚の売上を記録した。『なせば成る』『新羅の月夜』などで音楽演奏も担当している。この映画ではメンバー四人(ハン・ギョンノク,パク・ユンシク,イ・サンヒョク,イ・サンミョン)が実名で出演している。

 これが長編劇映画デビューとなる監督のカン・ロンは、高校卒業後にフランスに留学し、1997年に16mm短編映画『Diving into Instant Noodles』を監督した人物。『イ・ジェスの乱』の助監督、海外ロケのドキュメンタリー作品の撮影スタッフ、それに外国オペラの韓国内公演でマネージャーをつとめた経験もある。1999年に、ピアニスト、パントマイマー、舞踊家、写真家、俳優など多彩なマイノリティー・アーティストによって構成された劇団「モンゴル・モンゴル」を設立し、以後、劇作家・演出家として活躍。2001年にはクライング・ナッツのミュージック・ビデオ『夜が深かったね』を監督した。映画界だけでなく、様々なアーティスト達との交流によりクロス・ボーダーかつミックスド・カルチャー的作品を目指しているのが特徴。ちなみに、子供の頃は香港のカンフー映画や京劇に熱中していたとか。本作は監督の「ソウルに関する不思議な物語」三部作の第一話。脚本も監督のカン・ロンが担当。撮影はイ・ビョンホ。音楽は言うまでもなくクライング・ナッツ。

 デジタルカメラで撮影された1億5千万ウォンあまりの低予算インディーズ・ムーヴィー。クライング・ナッツが所属しているレーベル「ドラッグ」が製作した。映画振興委員会2001年度上半期デジタル長編映画配給支援事業選定作。インディペンデント・ムーヴィーを専門に配給するインディー・ストーリーの配給で2002年1月にソウルのアート・ソンジェ・センターで単館公開された。

 第5回(2001)富川国際ファンタスティック映画祭ワールド・ファンタスティック・シネマ部門、第2回TOKYO FILMeX 2001特別招待作品部門(フィルム・サプライズ)、第51回(2002)メルボルン映画祭招待作品。

初版:2002/1/27


【ソチョンの鑑賞ノート】

 TOKYO FILMeX 2001で鑑賞。

 監督は、映画プロパーの人物ではなく、普段から様々な分野のアーティストと交流し、かつ異国的なもの、多国籍なもの、無国籍なものに関心が強いという。この作品は、そんな監督が、国際都市となり無国籍化・多国籍化が進むソウルに集う不可思議な人々を、スチール写真、パンク・ロックなど多彩な表現方法を駆使して表現したかった「映像」といえる。

 オープニングの切れのある映像や、セピア調のスチール写真を使って、ある少女を描くシーンなど、ところどころに非凡なセンスを垣間見ることは出来る。が、この作品は総じて「映画」的な魅力に欠けている。

 ロック・ドキュメンタリー映画として観るには、クライング・ナッツの音楽は魅力に乏しすぎる。韓国ではかなり有名なインディーズ・ロック・バンドとのことだが、少なくともこの作品の中での演奏は「一発で観客を魅了する音楽性」からは程遠い。Music Video タイプの作品に必須の疾走感、爽快感、昂揚感を与えてくれる音楽ではないのだ。

 また、無国籍化・多国籍化が進んだソウルを楽しむには、登場人物たちがいかにもとってつけたようなキャラクターばかりで人間的魅力に欠ける。

 監督が意図するところ、やりたいことは痛いほど分かるが、それを具現化するにはクライング・ナッツも、脇役陣も力不足だったようだ。というより、監督がイメージしているほどには、現実のソウルは無国籍化・多国籍化が進んでおらず、結果として完全なドキュメンタリー映画として成立させることが出来ず、中途半端な作品に仕上がってしまったというところか。

2002年1月27日執筆


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