情

画像提供:駐日韓国大使館 韓国文化院(以下、同じ)
題名 英題 ハングル |
情 My Heart 정 |
製作年 |
1999 |
時間 |
114 |
製作 配給 |
昶浩プロダクション 映画人 |
監督 |
ペ・チャンホ |
出演 |
キム・ユミ キム・ミョンゴン ユン・ユソン ナム・ジョンヒ キム・ジョング チョン・イナ チェ・スッチン キム・スンス カン・ギファ キム・ジフン ユン・ヒチョル ホ・ギルジャ |
日本版 Video DVD |
なし |
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伝統的な韓国の封建文化が色濃く残る1910年代から1960年代を背景として一人の女性の人生を描く。韓国の情緒の本質は「恨」ではなく「情」だと考えているのが特徴で、韓国の四季を写し撮った美しい映像と、「恨」が「情」に昇華してゆく過程が描かれているのが、この映画を価値あるものにしている。ペ・チャンホの前作『ラブ・ストーリー』に続いて監督の妻キム・ユミが主役を演じ、脚本も夫婦で執筆するなど夫婦共同作業の映画。
田舎で結婚式が執り行われている。新婦は16歳のスニ。そして新郎は10歳になったばかりの子供。10数年後、留学していたスニ(キム・ユミ)の夫(チョン・イナ)が帰ってくる。ところが夫は新しい女性を連れてきており、離婚を宣言。姑は必死でそれに反対するが、スニは家を出ることにする。数年後、酒問屋を営むスニの前に陶器職人のドクスン(キム・ミョンゴン)が現れ、二人はめでたく結ばれる。生まれて初めて本当の愛を知り、山奥の家で幸せな生活を送るスニ。しかし、ドクスンは事故で死んでしまい、スニは再びさすらいの旅に出る。そして、赤ん坊をおぶった餓死寸前の女性ポンニョ(ユン・ユソン)と出会ったスニは、彼女の一人息子を育てることになる。
劇中で主人公のスニが何度も朗読するのは、『春香伝』などと並ぶ古典の名作『薔花紅蓮伝』。
この映画がデビュー作となるチョン・イナは『エマ夫人』シリーズで有名なチョン・イニョプ監督の息子で、元々はプロ野球選手候補として将来を嘱望されていた人物。プロ野球への道は大学時代の交通事故で断念したが、元中日ドラゴンズのイ・サンフン(サムソン・リー)とは高校の同級生で親友とか。
製作はペ・チャンホ。脚本は監督のペ・チャンホと主演のキム・ユミ夫妻。撮影は『NOWHERE 情け容赦無し』のソン・ヘンギ。現象は映画振興委員会。海外セールスは美路ビジョンが担当。
1980年代は人気興行監督として知られたペ・チャンホ監督のインディペンデント映画で、韓国映画界の主流システムに対抗して、スターシステムを廃し、投資者を募ることなく自力で10億ウォンの製作費を捻出した。しかし、上映してくれる映画館が見つからず完成から封切りまで1年4ヶ月かかってしまった。監督の復活を期待してか、韓国の週刊映画雑誌『シネ21』(No.257)は公開にあわせて特集「ペ・チャンホの情」を掲載したが、残念ながら興行的には散々な結果だった。
人間の「ソウル」を扱った作品のみ集めた第1回(1999)フランス・ベノデ(Benodet)国際映画祭で審査委員大賞・最優秀観客賞を受賞。また、イタリア・ウディネの第14回(2000)Far East映画祭では、韓国映画週間のクロージング作品として上映され、最優秀観客賞を受賞した。第5回(2000)釜山国際映画祭韓国映画パノラマ部門、2000年スコットランド・エジンバラ映画祭、第3回(2001)ドーヴィル・アジア映画祭、第20回(2000)ハワイ国際映画祭招待作品。
第1回(2000)釜山映画評論家協会賞監督賞(ペ・チャンホ)受賞作品。
初版:2000/7/31
最新版:2001/2/27
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【ソチョンの鑑賞ノート】
第5回(2000)釜山国際映画祭で英語字幕付を鑑賞。
映画の作りとしては、それほど優れているとは思いません。全体は4つのエピソードから構成されているのですが、お互いのエピソードに直接的な関係はあまりないので、全4話のNHK朝ドラを見たような感じです。
でも、これは極めてペ・チャンホらしい作品です。最初のエピソードは、幼くして結婚させられるものの長じた夫が他の女性を好きになり一方的に離婚を宣言。2番目のエピソードは、やっと生涯の伴侶を見つけて幸福を噛み締めようとしていたその瞬間に事故で夫を失う。そして3番目のエピソードは、不幸な母子と出会うが、理不尽な夫により母と子が引き裂かれるのを見守るしかない主人公。3つ目のエピソードまでに関してはストーリーだけ読むと一昔前の韓国映画にありがちだった「悲しい女の物語」ですが、各エピソードは、例えば最初のエピソードでは当初は辛くあたっていた姑が夫が離婚をすると言い出すと逆に主人公を必死で守ろうとするなど、希望に満ちた救いのある終わり方をしています。そして、主人公の女性は自分の逆境を耐え忍ぶというより、前向きに懸命に生きている。ペ・チャンホ流のヒューマニズムによって、「恨(ハン)」というどちらかというと後ろ向きな概念が、「情」という前向きな概念に見事に変貌を遂げています。
それにしても、ラスト4番目の母親と息子のエピソードは個人的にかなり来ました。息子に絶対的な愛を注ぎ込む母親。その慈愛に満ちた微笑ましいエピソードの数々には「こういうこと、あるある!」と笑いながらも、ふと自分の母親のことを思い出さざるを得ません。世界中どこでも同じだと思いますが、母親にとって一番かわいいのは出来の良し悪しを問わず息子のようで、うちの母親も私に対して映画とまったく同じ行動をとるんです。今は母が健在なので耐えられますが、他界した後にもう一度『情』を見たら、きっと号泣するでしょう。
いくつかのエピソードはありますが、監督が一番描きたかったのは、絶対的な家族愛、そしてそれがいかなる過程で生み出され、いかに大事なものであり、時代は変われど不変であるということに違いありません。装いは韓国の伝統的な社会ですが、扱っているテーマは極めて普遍的。母親の子に対する愛情が絶対的なものである限り、この映画は永遠に不滅です。
2000年12月2日執筆
投稿者:SUMさん 投稿日:2002/2/24 19:09:57
前半の大部分は1980年代までの韓国映画の典型「女性残酷物語」で、それこそコリアン・エロス並の展開だと感じるところもなくはないが、三番目のエピソードで女と女の友情は、これらの類型には珍しいし、結末も未来がある。
ペ・チャンホにしてみれば、現在活況な韓国映画界も自分らの苦難の上にある、ある意味一番の苦労を知らない世代の活躍といったところか。
【評価:★★★★】
投稿者:むらさん 投稿日:2003/12/7 23:17:44
シネマコリア特別無料上映会で見せていただきました。四つのエピソードのうち、個人的にはやっぱり四つ目がよかったです。
二つ目で幸せになれるか、という矢先の不幸。三つ目の他人との幸せな生活も長く続かない。
血がつながらないながらも、母親の愛情のすべて受け、息子も全身で母親を愛する姿を見て、思わず涙してしまいました。
見終わってとてもいい気持ちにさせていただきました。ありがとうございます。
【評価:★★★★】
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