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蜂の飛行


題名
英題

原題
ハングル
蜂の飛行
The Flight of the Bee
Bee Fly
蜂が飛ぶ
벌이 날다
製作年 1999
時間 90(韓国版)
88(TOKYO FILMeX 2000版)
製作 ミン・ビョンフン
ジャムシェド・ウスモノフ
監督 ミン・ビョンフン
ジャムシェド・ウスモノフ
出演 Muhammadjon Shodi
Mastura Ortik
Taghoymurod Rozik
Beknazar Kabirov
日本版
Video
DVD
なし

 キアロスタミ映画を連想させる、セピア調の美しい映像が特徴のインディペンデント映画。ロシアのとある村を舞台に世の中の偏見と既得権層に対抗して戦う小学校教師を描く。ロシア国立映画学校で同級生だったミン・ビョンフンと、タジキスタンのニューウェーブ、ジャムシェド・ウスモノフ(Jamshed Usmonov)が共同演出し、中央アジアのタジキスタン共和国で5ヶ月に及ぶロケを敢行。ミン・ビョンフンは、製作・監督・撮影・編集と一人四役をこなした。ジャムシェド・ウスモノフにとっても、これが長編デビュー作となる。ちなみに、ウスモノフは1991年に『井戸』という作品を撮っており、『井戸』と『蜂の飛行』は連作の関係にある。

 タジキスタンのある田舎の村の物語。『蜂の飛行』と題する子供向けの物語の出版を夢見ている小学校の先生アノロフ(Muhammadjon Shodi)は、隣りに住む金持ち(Taghoymurod Rozik)が悩みの種。村の実権を握っているその金持ちはアノロフの家に面した壁にトイレを作り、アノロフの家にはトイレ臭が充満する。加えて、金持ちは暇があるとアノロフの妻(Mastura Ortik)を覗くという趣味を持っている。金持ちに抗議しても相手にされなかったアノロフは村の検事に仲裁を求めるが、検事は「私有地で何をしようが勝手だ!」と彼の訴えを無視する。世の中の不条理に腹を立てたアノロフは全財産をはたいて、検事の家の隣りの土地を買い、検事の家の脇に公衆トイレ用の穴を掘り始める。そして数々の嫌がらせや妨害を受けながらも掘り進んだアノロフが見たものは・・・

 第3回(1998)釜山国際映画祭で上映されたのがきっかけとなり世界各国の映画祭に招待され、数多くの賞を受賞する。ところが「白黒芸術映画は興行性がない」との理由で韓国内の配給業者から敬遠され、公開は約1年後の1999年の12月、東崇シネマテークでの単館上映となった。商業映画が幅を利かせる現在の韓国映画界の中で、釜山国際映画祭での上映がきっかけとなって一般公開されたインディペンデント映画としては、『ハウドゥン(夏雨燈) 』に続いて2作目。本作のように通常だったら公開されにくいインディペンデント芸術映画が単館とはいえ韓国で一般公開されるようになったのは、釜山国際映画祭の業績の一つと言える。

 第3回(1998)釜山国際映画祭「韓国映画パノラマ」部門に出品され「最も独創的で注目に値する映画」との評を受ける。第39回(1998)テサロニキ国際映画祭銀賞、第16回(1998)トリノ国際映画祭グランプリ・国際評論協会賞・観客賞、1999年ロシアのAnapa国際映画祭最優秀監督賞、1999年ドイツのCottubus国際映画祭芸術貢献賞・観客賞、第36回(1999)大鐘賞短編映画功労賞受賞、第18回(1999)バンクーバー国際映画祭、第23回(1999)モントリオール世界映画祭ワールドシネマ部門、1999年香港国際映画祭、第9回(2000)豪州ブリスベーン映画祭、TOKYO FILMeX 2000特別招待作品招待作品。

初版:2000/1/10
最新版:2000/12/31


【ソチョンの鑑賞ノート】

 TOKYO FILMeX 2000 で、前作にあたる『井戸』とセットで、字幕付きを鑑賞。

 『蜂の飛行』は1998年の釜山国際映画祭で見ていまして、その時はほとんど印象に残らなかったのですが、今回『井戸』とセットで見て、評価が変わりました。両作品ともジャムシェド・ウスモノフが監督で、主人公のしがない中年男が井戸を掘るというストーリーは全く同じなのですが、結末が正反対。2本セットで見ると、ものすごく情報量が増えて、想像力をかきたてられます。

 製作年は、『井戸』が2000年、『蜂の飛行』が1998年となっていますが、実際には『井戸』のほうが先に撮影されていまして、1991年にクランクアップしたものの、ポスプロ作業中に、ソ連が崩壊してタジク撮影所が活動を停止したため未完だったのが、2000年にヨーロッパのファンドの援助で完成、ロカルノ映画祭でプレミア上映されたとか。なぜ、ヨーロッパが『井戸』の完成に資金援助したかというと、それは1998年の『蜂の飛行』が数多くの国際映画祭で認められたからです。

 『井戸』も『蜂の飛行』も本当に地味な作品なのですが、「井戸を掘る」という行動を通して、人生の悲喜こもごもをうまく描写しています。残念ながら、タジキスタンに関する知識が欠落しているので、自信を持っては言えないのですが、両作品のエンディングの違いは、『井戸』製作当時(1991年)のタジキスタンと、『蜂の飛行』製作当時(1998年)のタジキスタンの政治情勢だったり、社会情勢の寓話になっているんじゃないかという気がします。『蜂の飛行』では、隣の金持ちが我が家のすぐ脇にトイレを作り、そこから覗き見をしていることに怒った主人公が、検事に訴えに行きますが、その時検事が吐く言葉が「自分の土地で何をしようがそれは個人の勝手だ!」というもの。この台詞などはソ連の崩壊によって突然市場経済に投げ出されたタジキスタンの困惑を現しているようでもあり、非常に興味深いです。

 『井戸』と『蜂の飛行』は2本セットで見ることに大変な意義がありますが、こういう形での上映は TOKYO FILMeX 2000 が最初で最後かも知れません。その意味でも、この2本は TOKYO FILMeX 2000 の隠れたヒットと言えます。

2000年12月20日執筆
2000年12月31日加筆訂正


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