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2 1 セックス


画像提供:釜山国際映画祭

題名
英題
ハングル
2 1 セックス
Yellow Flower
둘 하나 섹스
製作年 2002
時間 85(釜山国際映画祭版)
74(韓国公開版)
製作・配給
製作協力
インディー・ストーリー
文化学校ソウル
監督 イ・ジサン
出演 キム・ジュンギ
ソ・ジョン
チャン・ミル
チョ・ヒョンイル
パク・ヨンギル
日本版
Video
DVD
なし

 二回の等級保留判定(=映画館での上映が不可能となる)を経て、憲法裁判所から「等級保留の判定は違憲」との判決を引っ張り出した低予算インディペンデント実験映画。

 監督が尊敬し、精神的支柱になったという詩人キム・スヨン(金洙暎,1921年〜1968年)の詩の世界を「死、セックス、解脱」で表現する。元々の題名は『キム・スヨン−セックス』。ドラマを廃し、イメージと音楽だけで、セックスを通して死に至る男女を描く。二部構成になっており、一部では三十歳のカップルがセックスに耽溺、そして二部では十九歳のカップルが罪の意識なく強盗を犯し、やがて死を迎えるという世紀末的恋愛物語を展開する。

第一部:<三十、現代の殉教>
 三十歳の男(キム・ジュンギ)が、女(ソ・ジョン)と出会い、セックスをする。食べることをはじめ、他のことは何もせず、ただひたすらセックスに耽溺する。やがて彼等は死を迎える。初めて出会った故宮で銃弾を浴びて・・・

第二部:<十九、風刺家さもなくば解脱>
 十九歳の男子と女子。二人は二十歳までは生きようと思っている。そして、ボンドを吸い、ダンスをし、セックスをする。ある家に侵入した彼等は金と宝石を盗み、刑事に追われる身となる。やがて彼等も死ぬ。まるで賢人が解脱したかのような姿で・・・

 社会的に認められない方向へ道を外していく人々の物語。チャン・ソヌ『LIES/嘘』に通じる部分もあるが、その問題意識は映画の中で消化し切れていない。

 1998年の第3回釜山国際映画祭でワールド・プレミア上映された後、一般劇場公開を目指すものの、1999年9月27日に映像物等級委員会から二ヶ月の等級保留判定を受ける。その後、同年12月30日の二回目の審査でも保留判定となり公開が不可能になったため(上映時の等級=レイティングが付与されないと一般の劇場では公開できない)、配給を担当するインディー・ストーリーのクァク・ヨンス代表は「等級分類制度は表現の自由を犯すもの」として、2000年2月24日、ソウル行政法院に「上映等級分類保留決定取消請求の訴訟」を提出し、行政訴訟をおこした。その後、2001年8月30日に憲法裁判所は「映像物等級委員会による映画等級分類の保留は、実質的に行政機関による検閲に該当し憲法に違反する」との判決を下し、原告勝訴となった。これは1996年の「公演倫理委員会の事前審議が違憲」という憲法裁判所の立場を再確認したものといえる。

 その後、製作・配給サイドから、映画等級制度の議論を見守る必要もあるが、クオリティを高めてまずは公開しようという意見が台頭し、一般上映館での封切りのため再編集と再録音を行い、2002年9月19日にソウル・アートシネマで単館公開された。なお、劇場公開版では再編集の過程で、性器のクローズアップ・シーンなど10分程度がカットされたという。

 韓国では、公開のためのレイティング審査を行った日付が製作年の基準となるため、統計上は「2002年作品」になるが、実際に完成したのは1998年。

 インディペンデント監督イ・ジサンと、文化学校ソウルが意気投合して作った作品。イ・ジサンは1956年金海生まれ。韓神大学神学科大学院を卒業後、安山で労働運動家として活動し、1993年に37歳という年齢でインディペンデント映画界に飛び込んだ異色の人物。1993年に短編『ローザのために』でデビューし、1995年に実験映画研究所で学ぶ。1996年には短編『脱−純情地帯』を発表し、同作は第1回(1996)釜山国際映画祭のワイド・アングル部門で上映された。初の長編となる本作の後、『頓悟(トノ)』(1999)、『彼女の話』(2000)などの長編映画を製作しているが、劇場公開されるのは、この『2 1 セックス』が初めて。脚本も監督のイ・ジサン。16mmで撮影された本作の撮影は、短編の『涙』(1998)や『アクア・レクイエム』(1999)で有名なイム・チャンジェ監督が担当。音楽はパク・ヨンジュンとハム・チュノ。

 三十歳の男性主人公を演じるキム・ジュンギは、キム・ウンス監督の『時間は長く続く』(1997)の主演でデビューした男優。本作の撮影後には、『北京飯店』『ジャングル・ジュース』に出演している。また第一部で女性主人公を演じたソ・ジョンは、後に『魚と寝る女』で一躍有名となった。

 第3回(1998)釜山国際映画祭「新しい波」部門、1999年独立映画祝祭ハンマダン・インディ・フォーラム'99、第35回(1999)イタリア・ペサロ国際映画祭ニューシネマ部門、第23回(2000)ゲーテボルグ国際映画祭、2000年にデンマークのコペンハーゲンで開催された "Film from the South" 韓国映画セクション部門招待作品。

初版:2002/10/3


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