Q: |
上映前に一言 |
A: |
はじめまして。監督とシナリオを担当しましたキム・ヨンファです。実は50年前に私の父が日本の明治大学を出まして、私が今日この場に来れたのも、なにかご縁があったのかなと、ちょっと不思議な気分です。本当に感慨深いです。この作品は私のデビュー作です。中にはちょっと大げさに描いた部分もあるのですが、私がこれまで約30年間生きてきた私自身の物語でもあります。私自身の生き様が投影された部分がありますので、そういった部分を楽しんでいただければと思っています。そして、面白い映画だなと思っていただければ嬉しいです。この映画は作る過程がとても楽しかったので、よい結果が出ると良いなと思っていたのですが、韓国では観客の皆さんから非常に愛された映画になりました。日本でも同じようになればいいなと思っています。嬉しさと悲しさという感情は別の物だと考えてらっしゃる方が多いかと思いますが、私はこの2つの感情は一緒にとけ込みあうことが出来ると考えています。私の映画を観て、幸せな気持ちになっていただければいいなと思います。どうぞ、楽しんで下さい。 |
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Q: |
監督から見たイ・ジョンジェという俳優は? |
A: |
個人的にとてもいい俳優さんだと思っています。できれば次回作も彼と一緒にやりたいですね。勘のいい方ですし演技もうまいです。この映画を撮りながら思ったことは、イ・ボムスさんはどちらかというとコンテに忠実な方なんですが、イ・ジョンジェさんはシナリオに忠実な方です。何か難しいシーンとか、理解できないシーンがあると、シナリオを何度も何度も読み返す方でした。今日本では韓流ブームが起こっていて、ペ・ヨンジュンさんやパク・ヨンハさんが人気だと聞いていますが、この映画が韓国で公開されたときはイ・ジョンジェさんのファンが韓国までいらしてました。何度も試写会を開いたのですが、その度に彼のファンがいらしてくれて、花束を持ってきてくれたりしていました。個人的には、この映画が日本でヒットして、イ・ジョンジェさんもブレイクしてくれればと思っています。 |
Q: |
イ・ボムスとイ・ジョンジェをキャスティングした理由 |
A: |
イ・ボムスさんは大学の先輩です。シナリオの段階から彼のことを念頭において書きました。そして書き終わってから最初に彼に見せて、すぐに出演をO.K.していただきました。ですので、まずボングが決まって、それからサンウ役の俳優を探すことになった訳です。サンウ役はグレードの高い俳優をキャスティングするのはちょっと難しいかな?と思ったのですが、イ・ジョンジェさんがシナリオがとても良いということで、O.K.してくださいました。 |
Q: |
監督が観客に一番観てもらいたかったシーンは? |
A: |
私にとってはすべて見てもらいたいシーンなんですが、特に好きなのは、ボングがチョン刑事にルームサロンへ連れて行かれて仏教の話しをされるシーンです。ボングは外見と違って精神的にはまだ幼い子として設定されていて、本当だったら「これは大変なことになってしまった」と悟らないといけないんですが、彼にはまだそれができない。悟らないばかりか、「僕は神様を信じている」と言って、そこで歌まで歌ってしまう。このシーンは、真摯な中にユーモアがあって、またユーモアの中に真摯さがある、そういう、この映画全体のトーンを表していて、伝えたかったことが凝縮されていると思います。私は、北野武監督がとても好きなんですが、真摯さとユーモアが表裏一体になっているこのシーンが一番好きです。 |
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Q: |
映画の作りもシナリオもよく出来ていたと思います。監督の経歴とこれからの予定について教えて下さい。 |
A: |
私は既に両親共に亡くなっているんですが、学生時代に色々苦労をしまして、学校を休学して、それからまた復学してから2000年に作った卒業製作作品の短編映画『塩サバ』が、海外の映画祭などで高く評価され、その後、すぐにこの『オー!ブラザーズ』で長編デビューしました。実は『オー!ブラザーズ』の前に、『オルフェウス』というスリラーを準備していたんですが、それはちょっと後まわしになりました。次回作は、『オー!ブラザーズ』のようにコミカルでアイロニカルな作品になると思います。 |
Q: |
小道具で出てきたガンダムについて |
A: |
今、私は33歳なんですが、子供の時にテレビでよくアニメを見ました。だいたい6時くらいになると1時間くらいアニメの番組が放送されていて、『マジンガーZ』とか、『キャンディ・キャンディ』、『グレンダイザー』などやっていました。それで『ガンダム』も含めてすべて韓国製だと思っていたんですが、中学生の時に、それが日本で作られた物だということを知りました。ガンダムは韓国では「強さ」の象徴です。ボングは強い物に愛着を持っていると思いまして、ガンダムを小道具として使いました。 |
Q: |
ボングのお母さんが再婚する相手が日本人という設定でしたが、これには何か特別な意味があるのでしょうか? |
A: |
前にもお話ししましたが、私の父はもう亡くなっていますが、日本の明治大学卒です。それで、父はお酒を飲んで気分が良くなると日本の国歌を歌ってくれたり、日本語をしゃべったりしてくれました。設定に深い意味はなくて、ボングのお母さんは韓国の中で行方不明という設定にしないといけませんでしたので、それで日本の人と再婚したというふうに決めました。個人的な印象ですが、父の影響もあって日本はとても近い国と感じています。 |
Q: |
撮影中苦労した点や面白いエピソードがあれば |
A: |
映画製作というのは爆弾を背負って火の中に飛び込むような、そんな大変さがあります。瞬間的には大変なこともあったんですが、今回の作品は私も含めて、俳優・スタッフ、皆さん本当に楽しく幸せに撮影することが出来ました。今後もし韓国で発売されているDVDをご覧になる機会がありましたら、本編に入れることが出来なかったシーンなども収録されていますので、そういったものも是非お楽しみ下さい。 |
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Q: |
ボングを早老症という設定にした意図は? |
A: |
ボングが早老症という設定は面白さのために、そうしたのではなくて、歳は子供なんだけれど外見は大人という、一種の精神と体の不一致、そういったものから出てくるアイロニーを表現したかったのです。これは私の考えですが、実はサンウもまたボングと同じだと思います。過去の痛みから実際には悪い人ではないんだけれど、今は色々悪さをしている。そういう不一致があります。なので、抽象的な意味ではサンウもボングも同じなのではないかと思います。この映画のテーマは「回復」です。親子や兄弟の情、友情などがうまくいっていない状態から、それらが回復に向かっていく、その過程を描くために、早老症という設定にしました。なお、ロビン・ウィリアムスが出ていた『ジャック』(1996)という映画にも使われていましたが、早老症という病気は実際にあります。ただ、表現方法は事実とはちょっと違うと思います。リアルに描こうとしたら老けた感じとかをもっと描きこまないといけないと思うんですが、私はリアルさよりもファンタジーとして描きたかったので、今回のような描き方にしました。 |
Q: |
とてもいい映画でした。監督には兄弟はいらっしゃるんでしょうか? |
A: |
日本でもこういう話しをすることになるとは思わなかったんですが、私の兄弟関係は実は映画の設定と全く同じです。私も異母兄弟がいるということを大人になってから知らされました。映画を作り終わった後、その映画を観て兄弟のほうが私を訪ねてきてくれて、今では仲良くしています。 |
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Q: |
最後に一言 |
A: |
映画監督としてデビューして、このように東京まで来て映画が上映できたということに本当に心から感謝していますし、今本当に胸がいっぱいです。皆さんが、この映画を観て楽しかったと思っていただければ嬉しいですし、また今日ご覧いただいた方々がこれからもずっとずっと幸せであることを祈っています。 |
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