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『二重スパイ』 ハン・ソッキュ記者会見リポート



Text & Photo by 宮田浩史
2003/6/5受領

   日時:2003年5月29日(木) 14:00〜14:40
   会場:パークハイアット東京ボールルーム
   通訳:根本理恵

 『カル』以来、三年ぶりの映画出演となるハン・ソッキュ主演の話題作『二重スパイ』が、2003年6月7日より全国東映系にて拡大ロードショーされる。『シュリ』『JSA』に続いて、南北分断が引き起こす悲劇を新たな観点から描いた本作。脱北者を装い韓国に潜入した二重スパイという難しい役柄を彼はどのように演じたのだろうか。

 以下、来日記者会見の模様をお届けする。




ハン:皆様どうもありがとうございます。映画の仕事をしていると時々やりがいを感じる事があるのですが、今回は韓国国内のみならず、日本の皆様にもこのように多くの関心を寄せていただいて非常に嬉しく思っています。私の主演作としては九本目となりますこの『二重スパイ』が日本で大規模に公開していただけるという事で、非常に光栄に思っています。心から感謝を申し上げます。

司会:最近、お子さんがお生まれになったそうですが。

ハン:私にとっては三人目の子供です。まず二人、女の子がいまして、先頃、5月15日に男の子が生まれました。男の子が欲しかったから三人目までというわけではなく、結婚した頃から「三人くらい子供が欲しいね」と妻と話していたんです。名前ももう付けなければならない時期なんですが、まだ考えておりません。二人目までは生まれる前から考えていたんですが。今は韓国語で「トルトイ」という「良い子ちゃん」というような意味を持った言葉で呼んでいます。

質疑応答

Q:銃を持つシーンが印象的ですが、そういったシーンではどのような事に気をつけていますか?

ハン:以前の出演作の『シュリ』『カル』、そして今回の『二重スパイ』でも銃を持つシーンがあったんですが、もちろんそのための射撃訓練も別途に受けています。しかしそれ以上に銃を持つシーンで大事なのは、緊張感を失わないということです。緊張感が高まった状態で撮ると良いシーンになりますので、すぐに緊張感を高められるよう心の準備をし、そしてまた呼吸も整えて撮影に臨むようにしています。

Q:韓国人であるハン・ソッキュさんが北朝鮮の人間を演じたわけですが、困難を感じられた事は?

ハン:北朝鮮の人物を演じるというのは本当に注意深い作業が必要ですし、デリケートな問題になってくると思います。というのも、私の演技が「観客が北朝鮮の人をどう見るか」を左右してしまうわけで非常に心配していました。でも今回主人公を演じるにあたり、彼を1980年代を生きていた一個人として捉え、「一人の人間を演じるんだ」という気持ちで演技に臨むようにしました。そして中でも大変だったのが、スパイというのは日常生活の中でも演技をしているようなものなので、映画の中でも「演技をしている演技」をしなければならない、二重の演技をしなければならないということでした。演技というものは一定のラインを踏み外さないようにバランスを保って演じる事が大事なんですが、私があまりに役になりきれていないと観客は物足りなさを感じますし、逆に私があまりにも役にのめり込みすぎるとオーバーアクションになってしまう。丁度いいあんばいで、綱渡りをするような気持ちで演じなければならなかったので、今回は他の作品よりも大変でした。

Q:今までハン・ソッキュさんには韓国でも日本でも善良なイメージがあり、それ故ハンさんが画面に出てきた時点で「極悪非道な人物にはならないな」というふうに見てしまうのですが、そのようなイメージを一度大きく裏切ってみたいとは思いませんか?

ハン:確かに私に関するイメージというのは大きなものがついて回っていると思います。私が俳優という職業を続けていくかぎり、私に対するイメージというものは切っても切り離せないものです。でもやはり私もそういった一つのイメージに捕われるのではなく、常に違う姿を、新しい自分を見せたいと思っていました。そのために様々なジャンルの映画、たとえばメロ・ドラマやスリラーなどに挑戦してきました。出来るだけ幅広いジャンルをやることによって違う姿をお見せしたかったんです。しかし、まだまだ「ハン・ソッキュ」という私に対するイメージ、一つのイメージから抜け出せていないという感は否めません。ですからこれからも様々な作品の中で、なるべくいつもと違う姿を皆様にお見せできるよう頑張っていきたいと思っています。

Q:目標とされている「無意識の演技」について具体的に教えてください。

ハン:そうですね。うまく説明するにはどうすれば良いかと今この場で考えながらお話をしているわけなんですが、たとえば今私が自分の答えを探しながら話しているこの場でも、様々なポーズを無意識のうちにとっていると思うんです。そういった無意識のポーズが取り入れられ、無意識の演技が出来たときに「いい演技が出来たなぁ」というふうに自分では考えています。私は演技をするときは常に「必ずこういう風に演技をしよう」という目標をひとつ定めます。そして最後までその目標を見失わないようにしたいというのが私の演技観です。そういった演技観を持って、自然な演技、無意識の演技が出来るようにこれからもやっていきたいと思っています。

Q:映画に出演する際に、ご自身でその作品のテーマを整理なさるそうですが、今回の作品では?

ハン:私はいつも一つの作品に臨むときには、必ずその作品のテーマを要約して文章に書き起こすんです。それを自分の頭の中にまとめておき、「一つの作品一つの演技」で目標を定め、それを最後まで見失わないように努力をしています。今回の作品では、「南北の分断体制の維持の為に犠牲になった人」をテーマとしました。観客の皆様には特に私が演じたイム・ビョンホとヒロインであるユン・スミ、この二人が最大の犠牲者として受けとめられるかと思うんですが、私は登場するすべての人物が犠牲者だと思っています。日本の皆様が今私がお話したテーマをどのように受け入れて下さるのか気になるところなんですが、このことについて少しでも考えていただけるだけで、この映画はとても大きな意味を持つことになると思います。

Q:映画の設定は1980年代ですが、脱北者の増えている2003年の今、韓国にイム・ビョンホのような北朝鮮の二重スパイがいた場合、それでもなお北朝鮮の体制に忠誠を誓いつづけるということが可能だと思いますか?

ハン:世の中にはいろいろな人がいて人の数だけ考え方も違うと思うので一概には言えませんが、恐らく今現在も北からある任務を持って南へ進入してスパイ活動をしている人が実際にいるのではないかと思います。そして逆に南から北へ送られたスパイも恐らく今現在も活動しているのではないでしょうか。その人たちの考えを私が図り知ることは出来ませんが、もし私が、つまりこの「ハン・ソッキュ」という人物が二重スパイだったとしたら、きっとこういう風に考えると思います。「なぜ自分はこんな状況に置かれているのか、そして自分の持っている信念というものは間違いではなかったのか」。そのようなことを恐らく一度は悩んでいるのではないかと思います。

Q:日本では草なぎ剛さんが、俳優としてのハン・ソッキュさんを大変尊敬しているということで有名ですが、日本においてもそういう風にあなたを尊敬している人がいる、ということに関してどのようにお考えでしょうか。

ハン:俳優が別の俳優を好きだというケースはたくさんあるかと思うのですが、日本のチョナン・カンさんが私のことを尊敬してくださっているというのは本当に嬉しいことで、私自身、喜んでいます。逆に私は以前から日本の俳優の中で高倉健先生を尊敬しております。高倉先生のお姿を見ていますと、「する」ことよりも「しない」ことのほうが辛いということ、「しない」ことのほうが、あるときは重要だったり難しいということを教えてくださっているような気がします。それは、具体的にお話しますと、たとえば演技の面で、多くのことをやるよりも、あまり見せないということのほうが難しいという意味です。それは人生においても同じ事が言えるのではないかと思います。高倉先生の俳優としてのご活動を見ておりますと、演技に臨む姿勢ですとか、そういった考え方の面で大きな意味があるように思え、たくさんのことを教えていただいております。そのように考えましても映画とか演技というのは、高倉先生のような方もいらっしゃいますし、非常にやりがいのある仕事だというふうに、日々感じています。そして、草なぎさんのように違う国の人、違う国民の方が私のことを尊敬してくださるというのは本当に嬉しく、光栄に思っています。

Q:三年ぶりの映画出演ですが、この作品を作る中で映画を作る喜びを感じた瞬間というものがありましたら教えていただきたいのですが。

ハン:個人的には演技をしている最中というのは喜びよりも困難のほうが先に立ちます。演技というのは本当に難しいものだと思いながら演技をすることが多いのですが、でも見方を変えればその困難なこと、難しさというものが喜びにつながっていくような気がします。難しい演技を一つ一つやり遂げて、それを重ねていき、最後に振り返って「ああ思い通りの演技ができたなぁ」と思うときに喜びを感じます。そしてまた「最初のころよりも演技がうまくなっているな」と自分自身思う時も喜びを感じられる一瞬です。しかしそれは振り返ってみての話で、私は撮影中は常に演技は難しいと思って臨んでいるわけですので、ある意味では自分を痛めつけ、自分で自分を苦しめながら演技をしていることが多いです。でも私の人生の中で就きたかった職業が俳優でしたので、今実際に俳優になれて、自分の考えを演技で表現し、見てくださっている方たちと共有できるということが私にとって一番大きな喜びです。確かに今回は三年という空白期間があったのですが、高倉先生の場合も七年間ブランクがあってまた演技をされたというお話を聞いておりますのであまり空白の時間というのは関係ないかなと思っています。

最後に・・・

ハン:今日のインタビューは映画そのものが非常にシリアスな内容でしたので私のお答えもこのような感じになり皆様に退屈な思いをさせてしまったかもしれません。その点が気になりますが、しかし私が思った以上に皆様が大きな期待を寄せてくださっているので非常に嬉しく思っております。本当にありがとうございます。


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