Text & Photo by 宮田浩史


 2002年11月12日(火)、東京、新橋のヤクルトホールにて初の一般試写が行われました。その時の模様と、上映中の空き時間に本作の宣伝を担当しているスキップの方々にお話を伺ってきましたので併せてご報告いたします。


 当日は、日が落ちて急速に冷え込む中、開場30分前にはすでに長蛇の列。この作品への期待の高さが窺えます。急遽、時間を若干繰り上げての開場となりました。皆さんチラシや先着プレゼントのお茶を受け取ると、座席確保のためにホール内へ一目散に駆けていかれます。あっという間に600席近くあるホールが埋まってしまいました。後は上映を待つだけ。


 ブザーの音とともに照明が落とされると、場内が一気に静まりかえります。いよいよ上映開始。タイトルバックに流れるやさしいピアノの音色とともに皆さん徐々にスクリーンに引き込まれていくよう。


 映画も中盤にさしかかると、会場のあちらこちらからすすり泣く声が聴こえてきました。


 そして、上映終了後・・・・

 涙で真っ赤になった目を隠し足早に去っていく方、暖かい笑みを浮かべてスタッフに「ありがとうございました」と声をかけていかれる方、堰を切ったように作品の感想を話し始める方、中には涙でぐしゃぐしゃになった顔をハンカチで覆う恋人を、やさしく見つめる女性の姿も。皆さんそれぞれの想いを胸に、会場を後にされていくようです。





上映終了後、何人かの方々に感想をお聞きすることができました。

《年配のご夫婦》
「こころ温まるお話でした」
「大変面白かったです。『JSA』や『シュリ』のような作品しか知らなかったから驚いた。昔の日本映画を観ているような懐かしい気がした」

《仲の良い友達同士というお二人》
「すごい感動しました」
「切なくて、夫婦間の思いやりがとてもこころに染みる映画でした」

《大学生と社会人のカップル》
「韓国映画は初めてだったんですか、違和感なく自然に入っていけました」
「すごく泣けました。友達にも勧めたいですね」

インタビューにご協力いただいた皆様、ありがとうございました。


仲の良いお友達同士のお二人

大学生と社会人のカップル


● スキップ インタビュー

 代表取締役の佐藤剛さん、宣伝担当の飯村悦子さん、中島まり恵さんにお話を伺いました。

― 韓国映画を扱うようになったきっかけを教えてください。
佐藤:
 ウチは宣伝会社ですから、まず依頼があって韓国映画を扱うようになったのですが、古くは『われらの歪んだ英雄』(1992)、石田えり主演の日韓共同制作映画『愛の黙示録』(1995)などを宣伝させていただきました。
 最近では、『八月のクリスマス』(1998)はもちろんのこと、『イルマーレ』(2000)、『純愛譜』(2000)、『エンジェル・スノー』(2001)、それから『ユリョン』(1999)。結構、韓国映画をやらせていただいていますね。
 個人的には『八月のクリスマス』がエポック的な作品となりました。それまでの韓国映画というのは、「暗い」、「日本映画に近い」、「役者は知らない」というイメージだったのが、この作品のシム・ウナを観て「こんな綺麗な人がいたのか」と驚き、その上ストーリーも良く出来ている。「日本映画負けたな」と思いましたね。


skip 代表取締役 佐藤剛さん

― 宣伝会社のお仕事とはどういったものなのでしょうか?
佐藤:
 パブリシティとタイアップが主な業務です。『ラスト・プレゼント』に関して言いますと、パブリシティの面では、映画誌はもちろんのこと、一般誌、スポーツ誌、新聞、さらにはテレビなど多くの媒体に取り上げていただくよう、手をかえ品をかえアプローチをしています。
 タイアップでは、都営地下鉄、西武鉄道、京浜急行電鉄の三路線でタイアップポスターを貼っていただいております。他にも日本編物文化協会とのタイアップもあります。これは映画をご覧になっていただければ、なぜ「編物」なのかということは判っていただけると思います。

― 宣伝のお仕事の魅力とは?
飯村:
 人より先に映画を観ることができて(笑)、その作品の良さを人に伝えられる、ということですね。宣伝の仕事は夜遅くまで毎日大変なのですが、初日を迎えてお客様がたくさん来てくださると、「やっていて良かったな」と思います。今日は一般試写の初日なので、お客さんの反応が気になっているところです。

― 『ラスト・プレゼント』を始めとする韓国映画を宣伝する上での難しさとは?
佐藤:
 『八月のクリスマス』の頃は、「韓国映画」というと一部のマニアが観るような特殊なジャンルに思われていたんです。ところが最近は相次いで韓国映画が公開されたことにより、逆に「また韓国映画か」と言われるようになってしまった。新鮮味がないんですね。ただ、韓国映画の作品そのもののクオリティは非常に高いと思っていますので、宣伝のしがいはあります。
 『ラスト・プレゼント』に関して言えば、「イ・ヨンエが出演している」という宣伝上の大きな魅力はあるのですが、年末、お正月の時期ですので、並み居るハリウッド大作に対抗しようというのは正直なかなか難しいですよね。そのなかで、サポーターズの皆様のご協力も得ながら、頑張っている次第です。

― マスコミ試写での反応はいかがですか?
佐藤:
 好き嫌いがはっきり分かれますね。好きな人は「大好き」、嫌いな人は「私には全く合わない」と。しかし、こういった作品の方が、公開時に話題を呼んでヒットに結びつくことが多いんです。

中島:
 結構感動してくださった方も多いのですが、なかなかそれをうまく表現していただけないというか・・・

飯村:
 「素直に泣いてしまった自分が照れくさい」という部分があるようですね。

中島:
 そのくらい、素直な作品なんですよね。普段、難しい作品の批評をなさっている方が、鼻を真っ赤にして試写室を後にされて、声をかけずらかったこともありました。


宣伝担当の飯村悦子さん(左)、中島まり恵さん(右)

― 個人的に、この作品にどのようなご感想をお持ちですか?
佐藤:
 『八月のクリスマス』と同じように「グッ」とくる、とても好きな作品です。ベタだとおっしゃる方もいるでしょうが、昔の日本映画にも『愛と死をみつめて』(1964)といった、そういう作品はあったと思うんですよ。で、それに「素直に泣けた」という人が多かったんですが、今の若い人にも是非観ていただいて号泣してもらいたいです。

飯村:
 最初はちょっと観てて照れちゃったんですが、観るたびに泣ける場所が変わる作品ですね。それからイ・ジョンジェの演技のうまさにもびっくりしました。

中島:
 こういう作品は一回観ただけでは判断できないのかな、と思うんですね。というのも私は最初に見たときは正直ちょっと苦手だったんです。こういう作品で感動できる心の状態ではなかった。良い作品だとは思いましたが、泣けませんでした。
 その後、マスコミ試写を始めてからスクリーンで再び観る機会があったんですが、そのときは本当に自然に作品に入っていけて、心から感動できました。「これほど素直に心に訴えかけてくる作品って、最近あまりなかったなあ」と、そういう発見がありました。それって、作品自体は全く変わっていないので、私の心理状態が変わったということなんですよね。
 ですからリトマス試験紙のような作品だと思います。観て、泣けるか泣けないかでその時の心の状態が判ってしまうのではないか、と。

― 9月の監督来日時の面白いエピソードなどありましたら、教えてください。
飯村:
 日本での反響の大きさに、「こんなに歓迎されるとは思ってもみなかった」と驚いてらっしゃいましたね。取材もたくさん入っていて、朝から晩まで長時間に及んだんですが、通訳さんや私達スタッフに「これを飲んで頑張ろう!」と、ビン入りの朝鮮人参の錠剤をくださったんです。監督のやさしい人柄がよく伝わりましたね。
 取材後の夜は、ご飯を食べに韓国料理屋へ行ったのですが、そこで監督がタッカルビを作り始めたんです。ご飯を入れて、キムチを入れて・・・ 監督自らが作ってくださったタッカルビは、本当にとてもおいしかったです。

― 公開まであと僅かですが、今後の展開は?
佐藤:
 今日が一般向けの初めての試写会なのですが、20日にもう一度やります。そして、27日に韓国大使館 韓国文化院主催の「骨髄バンク支援チャリティー特別試写会」があります。パブリシティの一番の山にすべく、著名人などを招待し、スポーツ紙、一般紙などの新聞、テレビ局にもあわせてアプローチをかけています。公開一週間前に色々な意味での話題を作っていこうと思っています。

― 最後に観客の皆様へ一言メッセージをお願いします。
飯村:
 心から涙を流せる作品だと思いますので、一人で観てもいいし、友達と観て後で感想を話し合っていただいても良いのではないでしょうか。

中島:
 素直に幸せな気分になれる作品です。年末、お正月に、家族や恋人、仲の良い友達と出掛ける機会が増えるかと思いますが、そんな時にぜひ一緒にご覧になっていただいて、感動を分かち合っていただければと思います。

佐藤:
 ぜひこの作品を観て心から泣いていただいて、一人でも多くの方に、一言「ぜひ観てね」と言ってバトンタッチしていって欲しいです。「涙のプレゼント」ですね。まずはぜひ初日に、劇場に足を運んでみてください

― ありがとうございました。


後記

 今回が一般の方々への初のお披露目ということで、少し不安感を抱きつつヤクルトホールへ向かったのですが、開場前の長蛇の列に、まずはほっと一安心。そして上映後には、会場を後にする皆さんの穏やかな表情を見て、「この作品のやさしい温もりは、絶対に日本中の観客の皆さんに伝わるはず」という確信が持てました。まずは東京で先行上映となるわけですが、一人でも多くの方に劇場に足を運んでいただき、『ラスト・プレゼント』の良さに触れていただければと思います。

 スキップの方々には、上映中の空き時間を割いて、インタビューに応じていただきました。「宣伝会社の方」というと、ビジネスライクに映画を捉えているのかなと思っていたのですが、全くそんなことはなく、『ラスト・プレゼント』が大好きな、映画への愛情にあふれた方々でした。その点では私達サポーターズと何ら変わりないわけで、とても親近感を持つことができました。

 今後も力を合わせて、頑張っていきたいと思います。佐藤さん、飯村さん、中島さん、お忙しい中、ありがとうございました。




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