Text by SARU / Photo by SARU & automatic


 2002年11月28日、日比谷のシャンテ・シネ近くの居酒屋において、『ラスト・プレゼント』サポーターズ・クラブ主催による、「オ・ギファン監督を囲む会」が行われました。監督のお忙しい来日日程の中、『ラスト・プレゼント』宣伝担当社様のご厚意により実現した企画です。私、SARUは、監督とはアジアフォーカス・福岡映画祭2002以来の再会でありました。

 さて、定刻となり、監督が登場。いつもどおりの気さく〜という感じ。この日は通訳の方がいらっしゃらなかったので、それぞれにパーフェクトとはいかない韓国語・英語・日本語が飛び交っていたのですが、監督は身振り手振りを交えて「もっとこちらに座ったら」とか、はじめから気配りの連続(ちなみに監督は日本語を三ヶ月習っていて少しだけわかるとのこと)。


右端のセーターの男性が監督

 最初はやっぱり、みんなちょっと緊張気味だったものの、すぐに監督のペースに乗っていろんな話になりました。「監督のペース」ってどんなペースかというと・・・ うーん、文字にするのは難しいんだけれど、ティーチインとか監督のしゃべりを聞いたことのある方なら分かると思うのですが、ともかく相手が「うふふっ」て笑ってしまう、微笑んでしまう、そんな感じにさせてしまうんです。

 いろんな話が飛び交って、とても全部は書けません。なので、印象に残った話の断片を独断で書かせていただきます。なお、お酒の席のお話ですし、言葉そのものも多言語チャンポンで聞いてましたので、その内容は必ずしも正確とは言えない点、ご了承の上お読みください。監督の言葉遣いも私の感じたように書きました。

 以下、参:参加者、監:監督、S:SARU

: 昨日はいかがでしたか?(韓国文化院主催の骨髄バンク支援チャリティー特別試写会のこと)
: んー(にっこり微笑む)
  (ここで宣伝担当社の方から、上映終了後、監督にサインを求める行列が100人以上に及んで大変だったというエピソードが紹介される)
: 主演二人についてはどうでした?
: イ・ジョンジェは、撮影中、私にいろいろ意見を言ってきたね。今も仲はいいよ。頭のいい人だよ。イ・ヨンエは一緒にフィルムを見ているときに、隣でゴソゴソ始めるからなんだろうと思ったら、(自分の出ている映画に)感動して涙が出てきて、コンタクトを落としてしまったということだったんだ。でも、監督の自分も映画を見て、涙が出てきてしまったんだけれど(笑)。
: 次回作は?
: コメディの予定だよ。シネマ・サービスで準備中なんだ。
: (あれ? アジアフォーカス・福岡映画祭でお話されていた『ロミオとジュリエット』のアジア版は?)
: どんな話になるんですか。
: シナリオはまだできてないんだ。
: 誰をキャスティングしたいと思っているんですか?
: 希望としては、『大変な結婚』に主演したチョン・ジュノがいいなぁって。CMで人気があるんだ。日本では、人気のある俳優って誰なんだろうね。
  (参加者と監督の間で、あーでもない、こーでもないと、楽しい日本人俳優探しの話しが続く)

: 最近、日本で1960年代や、1980年代・1990年代の韓国映画が上映されているのですが、当時の作品で好きな作品はありますか?
: いや・・・ そのころの作品だと、日本映画を見ているんだ。今、日本語の勉強をしていることもあって。小津監督なんていいですね。
: 『東京物語』とか?
: ウン、トーキョーモノガタリ。
: 最近の監督では?
: 北野武はいいなぁ。苦手な監督もいるけどね。
: 韓国映画で、最近の作品や、監督で注目しているのは?
  (何人かの監督や作品の名前が参加者との間でやりとりされる)
: 友人のキム・サンジン監督(『ラスト・プレゼント』のプロデューサーでもあり、端役出演もしている)が撮った『ジェイル・ブレーカー』はいいでしょう。
: ああ、ソル・ギョングが出ていて、それも期待ですね。
: 『ラスト・プレゼント』では、あの詐欺師二人組がいい味だしてますけど、彼らはどこで見つけてきたんですか?
: 兄貴のほうのクォン・ヘヒョさんは、私の大学の先輩で、出演を依頼しに彼の出ている舞台にいったところ、いっしょにイ・ムヒョンさんが出演していて、おおっていう感じで、彼を一緒に連れてきてしまったんだ(腕をつかんで引きずってくる仕草)。
: アジアフォーカス・福岡映画祭で上映されたときには、二人のシーンで観客みんなが大受けでした。
: 夫婦の涙が出てしまうようなお話のなかに、あの二人の笑いが出てきていて、それですごくバランスが取れているような気がします。
: 元々、受け取った脚本は、コメディアンと死期の迫った妻の悲しい話だったんですよ。そうした悲しいことだけではどうかと思い、あの二人の話を入れるようにしたんだよ。

などなど、話は尽きず、夜は更けていくのでした。

 みんなサインをいただいて、一緒に写真を取らせていただき、いよいよお別れとなったときには、『ラスト・プレゼント』公開劇場である日比谷シャンテ・シネで、ポスターの前に並んで皆で写真を撮ったのでした。お名残り惜しゅう存じました。

 私は、監督とは、アジアフォーカス・福岡映画祭でのインタビューとティーチイン、そして今回の歓迎会と都合三回、お会いする機会がありました。そこで感じたことは、オ・ギファン監督は、とにかく人を楽しませようという精神に満ちた方だということ。インタビューでは、もちろん真面目に映画の話を受け答えしていましたが、合間にカメラ担当の私のためにおどけたポーズを取ってくださるということがありました。ティーチインでは、「?」な質問にも、そらとぼけた受け答えで会場を明るく和やかで笑いに満ちた雰囲気にしていらっしゃいましたね。

 『ラスト・プレゼント』、人によっていろいろな見所があるでしょう。このシーンをまた見たいというところが様々にあるでしょう。涙と笑い、夫婦の情と親子の絆、生と死、いろいろな要素が盛り込まれていますから。その中でも、私はやはり笑いのシーンの数々を楽しみたいです。監督の個性、それが笑いの部分によく現れていると思いますから。

 監督は、サインのときに必ずと言っていいほど

「Be Happy ! ^^」

と添え書きなさるようです。映画でもどこでも、人を微笑ませ、笑わせて幸せを与えようとしている、そんな監督の姿勢が、コメディアン、チョン・ヨンギの姿に現れているのではないでしょうか。どんなときでも、笑いによって人を幸せにしてあげたい。妻からヨンギへの手紙、そのシーンを見るとき、きっと監督の「Be Happy ! ^^」を思い出すことでしょう。

 『ラスト・プレゼント』を見て、泣いて、そして、笑ったら、それは監督からの「ソンムル(=プレゼント)」を受け取ったということ。

 カンドンニム、カムサハムニダ(監督様、ありがとうございます)。


<Reporter Profile>
 SARU
 某どうぶつ園勤務。新旧すべての韓国映画ファン。各地の劇場、映画祭、上映会、DVDショップを忙しく駆け回る。アジアフォーカス・福岡映画祭2002で監督が来日した折には、「韓国映画とハングル」のインタビューで撮影を担当。



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