イ先生: | 今回は、この映画の真髄とも言える夫婦の対話の中で、個人的に一番のお気に入りシーンをピックアップしました。ヨンギは詐欺師に妻が死にかけていることを告げられ、一目散にジョンヨンの待つ自宅へと向かいます。
この二人、ジョンヨンとヨンギ夫婦は、口を開けば喧嘩ばかりで、なかなかお互いの気持ちを率直にぶつけ合うことが出来ません。
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ユウキ: | ・・・グスン。観ている方には二人の気持ちが痛いほどわかるからなぁ。
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アイカ: | 本当に、涙腺を突っついて止まないシーンですね。
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イ先生: | でも、勉強はしっかりしますよ。(笑)
(1)「ジョンヨンナ!」の「ナ」の部分。これは、「ジョンヨン+ア」の形がリエゾンしてこのような発音になります。
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ユウキ: | リエゾン?
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アイカ: | 直前の子音と繋がって一緒に発音することよ。フランス語にも同じような形があったわ。
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イ先生: | そのとおりです。アイカさん、良くご存知ですね。同年齢の友達や子供の名前を呼ぶときなどに、よくこのように「〜ア」を付けます。目上の人には決して使わないで下さいね。
さて、皆さんはもうお気づきでしょうが、この夫婦の名前、妻はパク・ジョンヨン、夫はチョン・ヨンギ。韓国では結婚しても一方の姓が変わることはないんですね。
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ユウキ: | へー、そうなんだ。子供はどうなるんですか?
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イ先生: | 夫の姓になります。
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アイカ: | 夫婦別姓なんて、男女平等の社会なんですね。
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イ先生: | そうとらえる事が出来る一方、儒教的な父権主義のために妻は夫の姓を名乗れない、という見方もあります。 現に韓国では妻は夫のお墓に入れないのが一般的なんですよ。この辺りの事は、多くの韓国関連の本の中で述べられていますので、興味がおありでしたらご自身で調べてみてください。
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アイカ: | そうですね。図書館へ行って探してみます。
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ユウキ: | 僕も。
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イ先生: | (2)の「オディッソ」。これは「オディ(どこに)+イッソ(いるの)?」という意味です。
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アイカ: | 「オディ イッソ?」が、くっついて短くなってしまっているんですね。
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イ先生: | ええ。日常会話の中でよく見受けられます。
つづくヨンギの(3)「ウェ」は「なぜ」の意味です。それ以上言わなくても、彼が何を云わんとしているのかが分かってしまいますよね。
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ユウキ: | あれ? 先生、話しながら涙目になってきてますよ。
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イ先生: | ごめんなさい。もう何度観てもこの辺から涙がこぼれ始めるのです、私は。
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アイカ: | 私も。今回は勉強どころではないわ。
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イ先生: | でも・・、続けませんとね。このヨンギの「ウェ」に対しジョンヨンは、いかにも彼女らしい返事をします。(4)「モヤ!マルヘ(何なの!何なのか言ってよ)」。「マル」は「話」、「ヘ」は「ハダ」の命令形で「〜して」という意味です。
(5)「チョダボジド」の原型は「チョダボダ(見上げる)」で、意味を強調する助詞「〜ド」とくっ付いて「チョダボジド アンナ!(見上げることもしないのか)」という意味になっています。おかしなことを言う夫をあっけに取られて見ているジョンヨンと、やはり本音が言えないヨンギです。
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アイカ: | 私、このあたりに来るともう涙が止まりません。
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イ先生: | あと少しだけ。(6)「バカンニリ」は「バカッ(外)」+「イル(仕事)」+「イ(〜が)」で、直訳すると「外の仕事が」です。それに対して、家の中の仕事は「ジッバン」+「イル」で「ジッバンニル(家事)」と言います。
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ユウキ: | あっ、これもリエゾン・・・なのかなぁ?
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イ先生: | そうです。韓国語では度々起こりますが、多くの韓国語に接していくうちに意識せず自然に出来るようになりますから、心配しなくても大丈夫ですよ、ユウキくん。(笑)
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ユウキ: | 良かったぁ。少し安心。
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イ先生: | 今回はここまでにしましょう。 捨て台詞を吐いて出て行くヨンギをあきれ顔で見送るジョンヨンの姿に、もう号泣しそうになります。
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