サウラビ
題名 英題 ハングル |
サウラビ Saulabi 싸울아비 |
製作年 |
2002 |
時間 |
103 99(日本版Video&DVD) |
製作 配給 |
モーニングカム・フィルム ブエナビスタ・ インターナショナル・コリア |
監督 |
ムン・ジョングム |
出演 |
チェ・ジェソン 榎木孝明 イ・サンフン 梅宮方紗子 ナムグン・ウォン ヤン・テッチョ 勝野洋 |
日本版 Video DVD |
Video DVD |
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日本に渡ってきた百済武士の末裔と日本の侍の対決を描く史劇。純製作費40億ウォン。撮影の80%は熊本・大分などで行われた。題名の「サウラビ」は三国時代(高句麗、新羅、百済)の武士を総称する純粋な韓国語で、「サウル」は「戦い」を「アビ」は「男」を意味する。ちなみに、この映画が韓国で公開されたおり「『サウラビ』という単語が日本の『侍』の語源になった」という説や、「日本の侍精神の源流はサウラビ精神」という推測が韓国のマスコミを通じて紹介されたが、日本では「侍」という言葉は「動詞『さぶらふ』=貴人のそばに仕える」が語源とされている。
西暦598年、百済威徳王が死亡し、王の護衛武士サウラビ達は位牌の前で割腹自殺をする。それから450年後の11世紀初頭、サウラビの末裔である17人の武士達が、国の再興を目指し日本へ渡ってくる。そして、それから更に30年後、南郷村に定着した彼等の末裔と細川領主との間でドラマが繰り広げられる。コ・ウド(イ・サンフン)とキム・ジノ(チェ・ジェソン)は、師であるファン・チュンヒョン(ナムグン・ウォン)の下、剣法の修練に励み、神剣の完成に心血を注いでいた。しかし念願である神剣はなかなか完成せず、ファン・チュンヒョンはコ・ウドに、百済から渡ってきた刀鍛冶の達人、金丸(ヤン・テッチョ)に会いに行くことを命ずる。金丸の下で神剣の製作に取り掛かるコ・ウドだが、そんな彼の前に細川領主安藤(榎木孝明)の許婚(いいなずけ)、おさめ(梅宮方紗子)が現れる。やがて二人は恋に落ち、ついには、おさめの結婚式の前日に逃げ出してしまう。そして、噂を聞いたファン・チュンヒョンとキム・ジノがコ・ウドの応援にかけつけ、おさめとコ・ウドを追ってきた武士達との間に激しい戦いが繰り広げられる。
1997年にSBSの公開採用7期でデビューし、テレビ・ドラマ『泥棒の娘』、『ラブ・ストーリー』などに出演したイ・サンフンがコ・ウドを、『外人球団』のチェ・ジェソン(崔宰誠)がキム・ジノを演じる。チェ・ジェソンは、この映画の韓国公開と同時期に放送スタートした、韓国初の北朝鮮ロケのテレビ・ドラマ『帝国の朝』(2002,KBS)にも出演している。ベテランのナムグン・ウォン(南宮遠)、ヤン・テッチョ(梁沢助)も出演。
モーニングカムの前身である東海映画製作所が1993年にクランクインし、1994年に30%の撮影を終えたところで製作中断。完成度が低いとの理由で撮影したフィルムをすべて破棄し、シナリオを修正した上で、2001年に二度目のクランクイン。一度目のクランクインの時はプロデューサーだったムン・ジョングム(文鍾錦)が監督も担当し、完成にこぎつけた。ムン・ジョングムはアクション俳優出身で、『無』(1990)、『全国区』(1991)、『暗黒街の無所属』(1993)、『忠武路のドンキホーテ』(1996)などを製作した人物。
製作も監督のムン・ジョングムが兼ねる。テレビ・ドラマ時代劇『龍の涙』、『太祖王健』の作家イ・ファンギョン(李煥慶)がシナリオを担当。撮影はシン・オッキョン。音楽はイ・チョリョク。美術はチャ・スヌァ。編集はイ・ギョンジャ。『SF サムライ・フィクション』の殺陣師、高倉英二がこの映画のアクションを担当。
日本では、映画のロケ地ともなった大分県竹田市にて、初上映。
初版:2002/2/24
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投稿者:カツヲうどんさん 投稿日:2002/11/6 13:17:15
韓国製DVDにて鑑賞。
この『サウラビ』、噂では2002年の最短上映打ち切り記録を作ったという。また、これを観た韓国人の友人は「韓国の恥だから観ないでくれ」と言う始末。確かに、突っ込みを入れようと思えば無限に入れられそうな、しょうもない作品かもしれない。話は不明瞭、四六時中「さくら、さくら」のメロディが流れ続け、今の映画とは思えないくらい演出スタイルも古い。だが、考えてみれば、二、三十年前の韓国映画は、こんな作品が沢山あったし、「日本人女性が韓国人男性(この場合、正確には百済系日本人だが)に一方的に惚れ込み、身を捧げる」というパターンも、韓国では別に珍しい事ではない。だから、この『サウラビ』、二十年前の韓国ならば、客ももっと入っただろうし、韓国の政治を含めた社会情勢が以前とさして変わらず、1999年の映画革命(この年はまさに韓国映画のターニングポイントであった)もなかったなら、今でも、このような映画が主流だったかもしれないという、"If"の世界から迷い込んできた来たような作品なのである。
という訳で、果てしないトンデモ映画かと思いきや、観終わった最初の感想は「なーんだ、普通の時代劇じゃないか」というのが本音であった。まず、劇中の日本人の扱い方は、かなりマトモである。特に、榎木孝明演じる、細川藩の藩主安藤は「敵役」なのだろうけど、言うことが論理的かつ明瞭、しかもかなり公平で、彼のセリフを聞いていると妙に納得・感心する事の方が多い。一番突っ込みを入れたくなるのは、やはり悪役のサイトウを演じた勝野洋だろう。『太陽にほえろ!』のデビュー当時(つまりテキサス刑事役)から、歳を取っている以外、全然変わっていない様子に思わず苦笑。ヒロイン、おさめ演じる梅宮方紗子は、何を考えて行動しているか、さっぱり分からない役柄を、不器用に演じている。彼らを迎え撃つ韓国側の主役の一人、百済人の末裔コ・ウドは、謙虚でストイック、誠実で求道的、しかも紳士と、大変好感が持てるキャラクターである。ただし「役が」という意味であり、演じるイ・サンフンは演技らしい演技は何もしていない。他の韓国の俳優たちも、日本には馴染みが無い面々のためか、重要な役柄であっても、誰が誰だか良く分からない。これは俳優の問題というよりも、物語構成の問題から来ているようだ。
殺陣は、日本人が加わっている事もあってか、十分水準に達している。が、百済と日本の刀術の違いが特に差別化されていないため、面白味は薄い。こういう部分は、こだわって強調しないと、日本を舞台にした意味がなくなってしまう。また、日本の俳優に比べ、韓国側の俳優の刀さばきが下手すぎる事は、時代劇としては大きな問題だ。彼らの刀の使い方は、あまりにも遅く、日本の侍に三回くらい切られても仕方がないだろう。
撮影は、なかなか美しい映像を作り出すことに成功しているが、照明がベタ気味(全体に渡って、均一に光が当たっている状態)なため、テレビ的だ。そして、つくづく思ったのは、韓国の映画美術は「汚し」の概念が希薄ということである。ただし、最近の『酔画仙』や『爆烈野球団!』では見違えるように良くなっているので、やはり演出のセンス次第という事なのだろうか。
『サウラビ』が大失敗したのは、まず現在の韓国の観客にとって、あまりにも関心の無い題材を扱っていた、ということだろう。日本で今、大岡越前や水戸黄門をテレビ・シリーズそのままに撮っても、若者は誰も来ないのと同じである。韓国には根強い日本の時代劇ファンはいるものの、数からいえば、あくまでも少数派だ。例外的に受けたのが、中野裕之監督の『SF サムライ・フィクション』だが、あくまでもMTVなスタイルが受けたのであって、日本の時代劇人気が反映したとは言えないだろう。
『サウラビ』、劇場で観ていたならば、ガクッと来ていた作品だろうが、テレビ画面では十分鑑賞に耐えうるから、VTRやDVDに限り、観ても損はない作品である。なお、セリフはほとんど日本語、吹き替え部分もきちんと作ってあるため、言葉の心配はほとんどない。これもまた、韓国で売れなかった原因の一つなのかもしれないが。
【評価:★★★】
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