銀馬将軍は来なかった
題名 英題 原題 ハングル |
銀馬将軍は来なかった Silver Stallion 銀馬は来ない 은마는 오지 않는다 |
製作年 |
1991 |
時間 |
123 |
製作 |
韓振興業 |
監督 |
チャン・ギルス |
出演 |
イ・ヘスク キム・ボヨン パン・ウニ チョン・ムソン ソン・チャンミン |
日本版 Video DVD |
字幕版Video |
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チャン・ギルス監督の代表作。『ホワイト・バッジ』の原作者でもある安正孝(アン・ジョンヒョ)の同名小説を映画化。原作はアメリカで翻訳出版され「反米か反戦か」という論議を呼んだ話題作。朝鮮戦争時代にアメリカ兵に強姦された女性を主人公にし、「戦争がもたらすもの」を子供の目を通して描く。
マンシギ少年が住む小さな村にも朝鮮戦争の戦火が迫り、村の長老(チョン・ムソン)が無事を祈願する祭礼を行う。チンギスハン率いる蒙古軍を撃退したと言い伝えられている銀馬にまたがって空からやってきた将軍が、戦争が起れば再びこの地に現れるという伝説があるのだ。しかし、祈願も空しくアメリカ兵が村にやってきたその夜、マンシギの母オルレ(イ・ヘスク)は二人の兵士に強姦される。近所の村人達は、そんな彼女に同情するよりも、死ぬことによって貞節を守らなかったとマンシギ一家を村八分にする。そして、オルレは生活のために米軍キャンプの娼婦として生きる道を選ぶ。
シナリオは監督のチャン・ギルスとチョ・ジェホン。音楽はキム・スチョル。ヒロインのイ・ヘスクは日本のTVドラマ『ニューヨーク恋物語』、『金の戦争』にも出演している。
第11回(1991)映画評論家協会賞演技賞(イ・ヘスク)、第12回(1991)青龍賞女優助演賞(キム・ボヨン)・脚本賞、第27回(1991)百想芸術大賞作品賞・監督賞・演技賞(イ・ヘスク)・技術賞(美術部門)、第15回(1991)モントリオール映画祭最優秀女優主演賞(イ・ヘスク)・脚本賞受賞、第44回カンヌ国際映画祭出品作品。
第3回全州国際映画祭2002「韓国映画回顧展」部門上映作品。
初版:1998/12/7
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投稿者:SUM さん 投稿日:1998年8月7日(金)09時40分00秒
【評価:★★★】
投稿者:相如さん 投稿日:2002/10/17 04:31:31
韓国や中国の映画は伝統的価値観(批評家達は単純に「儒教」でひとくくりにしてしまうことが多いがもっと広い)を問題視するものがきわめて多い。あまりに伝統社会に対する憎悪がこもっているんじゃないか?というほど暗く描くので辟易することもある。この映画もその一つ、というより伝統的農村がアメリカの近代に邂逅した、その悲劇を主に前者に批判的で後者にやや同情的なスタンスで描いたものと言える。しかし後者が良いなんていうのは現代人のバイアスでしかないだろう。
それにしても外国人相手とはいえ、伝統的な韓国の農村社会ってそんなにセックスに潔癖なのか?と思ったのは私だけかな。レイプされたくらいで村八分が起こるようなら、村民が一蓮托生すべき農村としてはかなりの欠陥と言わざるを得ない。ここらへんも伝統社会に対する現代人の勝手なバイアスがあると思う。日本を含めてどこでも伝統社会はそんな潔癖なものじゃない。
『銀馬将軍は来なかった』は色んな比喩があるんだろうけど、主題としては単純に伝統社会の英雄信仰はもはや役に立たないことへの比喩だろう。そうした伝統主義からの脱却が最後に少年が母親を許すということで締めくくっているのだろうかな。うーん、でもそれだけたったらテーマとしてはあまりに陳腐だ。
テーマや設定に疑問はあるが、それでも映画としてはオーソドックスなつくりでかなりの出来。お母さんが本当にかわいそうでしょうがなかったし、村を捨てて雪山をみんなで歩くラストの映像などは非常に素晴らしい。最後はなんとくなく丸く収まってしまうというのも韓国映画らしいが(『祝祭』も確かそんな感じだった)、結構好きな終わり方である。
【評価:★★★★】
投稿者:サークルKさん 投稿日:2004/5/11 13:04:40
ソウルにいた1991年に現地で観ました。
その後、7年も経って、清渓洞でビデオを必死に探し、やっと見つけたぐらい好きな作品です。主演のイ・ヘスクはフジテレビの『ニューヨーク恋物語』に出ていましたね。先日、その続編をやっていて、久しぶりに彼女の姿をブラウン管で観ることができました。あんまり変わっていなかったなぁ。韓国人に彼女の話をすると、もうほとんどの人は関心がなくて、「あのおばさん女優でしょ」というぐらいの反応しかないのが、寂しいですね。この映画での彼女の演技はとても良かった。
小栗康平が撮った『泥の河』に、幼い子供が母親の性行為を見てしまうシーンが出てきます。『銀馬将軍は来なかった』でも、マンシギがやはり母親の行為を見てしまうんですね。そのあたりの描写がとてもいい。朝鮮戦争のタブーとされた部分、封建的な社会を正面からテーマにしたという意味でも、もっと評価されていいと思う。
【評価:★★★★★】
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