『ハレルヤ』,『エキストラ』など最近はコメディ映画を撮り続けていたシン・スンス監督が久しぶりに製作した社会派ドラマ。不条理な支配構造の前には警察官個人の力など全くの無力であることを描く。1997年の映画振興公社シナリオ公募で当選したキム・グァンシクの『ウ巡査』を脚色した作品で、映画振興公社の版権担保融資で3億円の製作費を受けた低予算映画。
使命感の強いキム巡査(チョ・ジェヒョン)は、銃器事故が原因で、平和で静かな人里離れた村シンソンミョンに左遷される。赴任してすぐ、キム巡査は村のならず者コ・ヒョンソク(イム・ハリョン)を拘置するが、なぜか他の警察官は彼の存在を恐れる。ある日、イ・ソヒ(チョン・ジナ)という女性教師が警察署を訪れ、自殺として処理された看護婦チョ・ヨンソン(キム・ジュミ)の死因について再調査を依頼する。そして、彼女の本当の死因を探る過程で、キム巡査は村の秘密を目の当たりにする。コ・ヒョンソクが支配しているこの村は、子供たちは大麻を、大人達はヒロポンをし、ならず者が女性をレイプするような荒れた村だが、誰も犯罪を告発せず、全員無罪。キム巡査は何とかしようともがくが、彼が事件に介入すればするほど犠牲者が増え、この村では自分は何もできないことを知り絶望してしまう。そして、ついにキム巡査とソヒは脅迫され命まで狙われる事になる。
この作品の元々のシナリオ『ウ巡査』は、ごく普通の警察が拳銃を乱射して村の人々を惨殺した事件(1982年)を題材にし、その原因をよそ者に排他的な村民の態度と、それに傷ついた人物の狂気と想定した作品。シン・スンス監督はこれに村の支配者を登場させ、事件を権力と支配秩序に関する寓話にしたてあげた。素直で素朴な村民達だが、よそ者を排斥する閉鎖性と地域的な利己主義を併せ持つ。そして彼らをしてそうさせているのは、権力者に逆らわないという事勿れ主義。これは、韓国社会の暗い一面を寓話的に描いた作品か、それとも人間社会が持つ暗黒部分を描いた作品か?
コメディアンのイム・ハリョンが、暴力性と純粋さを持つならず者コ・ヒョンソクを演じる。新人女優チョン・ジナ(25)はキム巡査に協力する女性教師イ・ソヒ役を演じる。安養芸術高校在学時にミス・ロッテで活動した彼女は、檀国大演劇映画科出身でテックォンド1段、剣道1段。
初版:1999/8/20
|