《インタビュアーは見た!》 クァク・ジェヨン監督との不思議な縁(えにし)
Reported by 月原万貴子(月子)
2004/1/30受領
2004年1月24日(土)、日比谷のシャンテ・シネで行われたクァク・ジェヨン監督による『ラブストーリー』の初日舞台挨拶を取材しに行った。挨拶の詳細については、既にあちこちの映画サイトに掲載されているので、ここでは省略させてもらい、その代わりに私と監督との不思議な縁について語りたいと思う。
監督と初めてお会いしたのは、ヤング・ファンタスティック・グランプリ部門に『猟奇的な彼女』がエントリーされていた2002年のゆうばり国際ファンタスティック映画祭のウェルカム(オープニング)・パーティー席上だった。通訳のボランティアをしていた留学生の友人が「この人が『猟奇的な彼女』の監督だよ」と紹介してくれたのだ。既に韓国版ビデオを見ていた私の第一印象は、失礼ながら「え? この強面(こわもて)のおっさんが、あんな可愛らしいラブ・コメを撮った人なの?」だった。しかし、少しばかり(通訳してもらいながら)会話しただけで、その暖かさとユーモアに魅了された。
監督によると「映画祭に招待されるなんて初めてなので、わくわくして」おり、「妻とふたりで出掛けるなんて新婚旅行以来なので、彼女が楽しそうなのがうれしい」のだとかで、ニコニコしっぱなしだったのだ。そして『猟奇的な彼女』はグランプリと観客人気投票の1位を獲得。文字通り2002年のゆうばり映画祭の顔となったのだった。
『猟奇的な彼女』
翌2003年。今度は審査員としてゆうばり映画祭に参加した監督は、奥様だけではなく2人のお嬢さんも同行しており、折につけ言葉の端々で昨年の映画祭がどんなに楽しかったか、また来られてうれしいかを語っていた。そしてそのお礼として上映されたのが、映画祭では『クラシック』という原題のまま紹介された『ラブストーリー』だったのだ。通常、日本公開予定作は配給会社が字幕を作成し、映画祭等に参加するものだが、当時、『クラシック』は韓国でも公開されたばかりで、当然、日本での配給も決まっていなかったため、クァク監督は自分たちで字幕を手配した上で参加してくれていた。結果は昨年に引き続いての観客人気投票1位獲得。ゲストの間でも評判を呼んでおり、某ばりばりロックンロールなボーカリストも「いいよぉ、泣いちゃったよぉ」と言っていたほどだった。ちなみに、私も熱い感動を胸にインタビューさせていただいたため、必要以上にテンションの高い取材になってしまったことを今更ながらに少々反省している(→「『クラシック』 クァク・ジェヨン監督 猟奇的なインタビュー」)。
『ラブストーリー』
そして今年。北海道在住の私が東京で取材することはめったにない。それなのに、たまたま別件で上京の予定があり、その用件は夕刻からだけれど時節柄用心のために午前便で東京入りしていたため空き時間ができ、しかもその時間が今回の舞台挨拶とぴったり合ってしまった私。これはもう「監督とは不思議な縁がある」と思ってしまってもしかたがないでしょう?
今回は残念ながら直接お話しすることは出来なかったが、舞台上の監督は相変わらずひょうひょうとした佇まいで、“興行監督”となった今も変わらない様子がなんだかうれしかった。映画の見所について「私の方から皆様にお話するよりも、皆さんがこの映画をご覧になってどんな感想をお持ちになったかをお伺いしたい気持ち」と発言していた監督のリクエストにお応えして、私の体験したエピソードをひとつ紹介しよう。
先日、札幌で行われた一般試写会でのこと。私の隣席には高校生くらいの男子が2人座っていた。どんな映画か知らずに連れてこられたらしき方の少年は、上映前「つまらなかったら、途中でも帰るからな!」などと言っていたのだが、映画の中盤くらいから鼻をすする音が聞こえ出し、クライマックス・シーンのあたりからは「うっ、うっ」と嗚咽が聞こえていた。そして上映終了後、鼻をかみながら「やべぇ、まじ感動しちまった」と一言。
監督、あなたの思いは確実に彼らに伝わっていましたよ。
※ 写真は舞台挨拶で撮影した物です。
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