韓国における日本映画解禁第2弾
西村嘉夫(ソチョン)
1999/9/14受領
1999年9月10日、映画・歌謡曲など日本の大衆文化に関する開放方針の第2弾が発表されました。映画についてのみ簡単に解説しておきます。
映画に関しては、1998年10月の開放第1弾は下記要領でした。
- 韓国・日本共同製作映画(韓国側が20%以上出資)は上映可。
- 韓国映画人が監督・主演した映画は上映可。
- 日本俳優が出演する韓国映画は上映可。
- 4大国際映画祭(カンヌ,ヴェネチア,ベルリン,米アカデミー)受賞作(監督賞・作品賞)は上映可。
- ビデオは国内上映された日本映画のみ輸入&販売可。
現在(1999年9月)までに韓国で公開された日本映画の興行成績は次の通りです。
- 『HANA-BI』6万人
- 『影武者』 8万人
- 『うなぎ』 6万9千人 ※ いずれもソウル封切り館のみの暫定数値。
今回の第2弾はこれに加えまして、
- すべての年齢層が鑑賞可能な内容の作品。
- 一般的に公認されている約70の国際映画祭(*)での受賞作。
(*)「一般的に公認されている国際映画祭」とは、韓国の映画振興委員会(旧、映画振興公社)が韓国映画が受賞した際、表彰対象としている13の国際映画祭に、国際映画製作者連盟(PIAPF)が認定している国際映画祭を加えたもの。
- ビデオは国内上映された日本映画はすべて販売可。
となりました。「すべての年齢層が鑑賞可能な内容の作品」というのは若干の解説が必要です。韓国では、一般公開に先立って映像物等級委員会が作品を審査し、「何歳以上鑑賞可」というような映画鑑賞のレイティングを付与するシステムになっています。そして、その中に「すべての年齢層が鑑賞可」つまり幼稚園児でも小学生でも見て良いというカテゴリーがあり、ここで言う「すべての年齢層が鑑賞可能な内容の作品」というのは、映像物等級委員会が「すべての年齢層が鑑賞可」という審査を下した作品ということになります。
ところで、どの程度の作品だったら、「すべての年齢層が鑑賞可」にレイティングされるかというと、これがまたとてつもなく厳しい。厳密な基準というのは私もよく分からないのですが、セックスまたはそれもどきのシーンは言うまでもなく、キス・シーンもアウトになることがほとんど。1999年のあいち国際女性映画祭で上映された『美術館の隣の動物園』を例にしますと、あの少女漫画のように可愛らしい映画ですらラスト・シーンに爽やかなキスをするだけで「15歳以上鑑賞可」等級になってしまいます。キスのキの字も出てこない『八月のクリスマス』もなぜか「15歳以上鑑賞可」等級。
1999年、映画のレイティングを付与する公演芸術振興協議会が映像物等級委員会に変わり、以前は4等級だったのが、「すべての年齢層が鑑賞可」、「12歳以上鑑賞可」、「18歳以上鑑賞可」の3等級に簡略化されてから(「15歳以上鑑賞可」がなくなった)、全般的にレイティングが甘くなったような印象もありますが、セックスやキス・シーンの他に暴力シーンも当然チェックの対象になる訳で、多くの日本映画は「すべての年齢層が鑑賞可」にレイティングされるのはかなり難しいだろうと思います。もちろん、今後、審査基準が変われば話しは別ですが。そんな訳で最初の項目
というのは、それに該当する(であろう)作品が少ない以上、あまり意味のある項目とは言えません。もちろん、子供用アニメなどは「すべての年齢層が鑑賞可」にレイティングされるでしょうが、第2弾開放では、アニメは「国内アニメ産業への影響を考慮して」解禁されませんでした。一見するとずいぶんな解禁になっているようで、その実ポイント・ポイントではしっかりガードしているというのが私の印象です。いざとなれば、レイティング審査の段階で裁量が効かせられるようになっているのもミソです。完全解禁にはまだまだ時間がかかるのでしょうか?
そんな訳で今回の開放第2弾の目玉は
- 一般的に公認されている約70の国際映画祭での受賞作。
となります。上記項目に該当するのは、黒澤明監督の『七人の侍』など113本と見積もられていますが、韓国では商業性を考慮するとせいぜい15〜20本程度という分析もあるようです。ちなみに、現在(1999年9月)韓国の映画会社が購入している日本映画30本あまりの内、上記項目に該当する作品は10本程度。1999年の秋には早速下記の作品などが韓国で公開されるでしょう。
- 『Love Letter』1995年トロント国際映画祭観客賞
- 『四月物語』第3回(1998)釜山国際映画祭PSB映画賞
- 『生きない』第3回(1998)釜山国際映画祭国際映画評論家協会賞(FIPRESCI賞)
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