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Review 『あぶない奴ら〜TWO GUYS〜』
『恋する婚活プランナー』『嫉妬は我が力』

Text by カツヲうどん
2005/10/30


『あぶない奴ら〜TWO GUYS〜』 ★★★★

 この作品は、韓国映画には珍しく、スクリューボール・コメディとして成功している映画である。始まりは退屈かもしれないが、鞄争奪戦が始まった途端、この映画は本領を発揮してゆく。話は至極単純で、とにかく「追っかけ」にこだわって撮られた、ちょっと変わったコメディだ。

 主人公二人、多重債務者フン(チャ・テヒョン)とプロの借金取りジュンテ(パク・チュンフン)には、次から次へと危機が訪れるが、意表を突く展開で、彼らはピンチを切り抜けて行く。それは、黒澤明の『隠し砦の三悪人』をちょっと連想させた。特にサウナから始まる、長い長い大追跡は、パク・ホンス監督が飽きない工夫を凝らしており、全くダレず、今後とも記憶に残りそうな名場面だろう。

 敵のボスが中国人である、という事が象徴しているように、本作品は、クレジット・カードによる多重債務や、ハイテクをめぐる各国の暗躍といった、最近の世相を随所に匂わせているのも面白い。フンの家に取り立てにやってくるのが「LGカード」ならぬ「RZカード」の社員だったり、裏社会に詳しいジュンテが、日本のヤクザと中国マフィアの違いを説明する箇所があったりと、中々興味深い部分もある。

 今回、一番話題になっているのは、パク・チュンフンとチャ・テヒョンの新旧三枚目のコメディ競演だろう。チャ・テヒョンという俳優は、時には先輩相手に激しいアドリブ合戦をやって評判になったりする闘争心旺盛な人物らしいが、本作でも、そういう我の強い部分がよく出ている。ただ、それが必ずしも成功していないのがキャリアの差なのだろう。自分の役割をわきまえ、絶えず自己コントロールを図っているパク・チュンフンの方が俳優として、今回は貫禄勝ちといったところだろうか。

 この『あぶない奴ら〜TWO GUYS〜』には、往年の名作『トゥー・カップス』へのオマージュが含まれていることは、タイトルやキャスティングを観ても明らかだが、残念ながら『トゥー・カップス』と肩を並べるまでは行っていない。しかし、2004年度のアクション&コメディの分野では、もっともお勧めの一本だ。


『恋する婚活プランナー』 ★★

 2001年に大ヒットした映画の主演俳優(『花嫁はギャングスター』『マイ・ボス マイ・ヒーロー』)と企画(『猟奇的な彼女』)を混ぜ合わせたような、一見、無節操な映画だが、実体は至って地味で、無難な仕上がりの作品となった。新人モ・ジウン監督の演出は、きちんと複数の登場人物をさばいており、カット割もオーソドックスで、無理をしていない。アニメーションを用いた表現も何ヵ所かあるが、泥臭いことを除けば、奇をてらっておらず、手堅い使い方だろう。そういう点では、同じ二十代の新人監督作『ひとまず走れ!』と大違いなのだが、そういう真面目で確実なところが、映画を冷たく打算的な作品に仕上げてしまってもいる。

 2001年夏の大ヒット作『猟奇的な彼女』には、後輩世代に対する賛歌と温かい視線あった。だが、この『恋する婚活プランナー』の場合、監督の視線には「しらけ」と「醒め」が大きく含まれており、同世代への一種の蔑視感すら漂わせているように感じられるのだ。ただし、私が韓国で観た時の、若い女性客の反応は良かったけれども。

 自分の意思にかかわらず、自虐的な悪運につきまとわれるヒロイン、ヒョジン役を、シン・ウンギョンが演じているが、その演技は、まるで演劇学校の下手な実技演習を観ているようで救いがない。大ヒットした『花嫁はギャングスター』の無表情なヒロイン役が、いかに奇跡的なハマリ役であったかを、つくづく痛感せざる得なかった。男性の主役であるはずのヒョンスを演じるチョン・ジュノは、好意的に今回の役に取り組んでいるように見えたが、監督の指示が理解しがたかったのか、本音では始終困惑しながら演技をしているようで、気の毒でもあった。

 若者向けの内容だからといって、同じような世代の監督に撮らせればいいという問題ではないことを、よーく教えてくれる作品であるという点については、大なり小なり意見がまとまりそうな気がする映画である。


『嫉妬は我が力』 ★★★

 このタイトルはとても良い題名だと思う。作品のテーマを明確に伝えているし、作品の印象をとても良くしている。だが、それ故、もっと凡庸なタイトル、例えば『嫉妬』などという題名だったら、作品を観た感想は、かなり変わっただろうとも思う。

 この作品は、二つの特徴的な側面を持ちあわせている。一つは「パク・チャノク監督の純然たる作家作品である」という側面だ。しかし、決して「我」は強くなく、一般の観客にも受け入れやすい仕上がりになっている。これは、パク・チャノク監督が、他の作家監督に従事した際、不満に感じた部分を、彼女なりに、積極的に改善を図った結果ではないかと思う。だから、登場するキャラクターたち、特に女性たちは皆どこか可愛らしい。

 二つ目は、この作品が「ホン・サンス作品直系の映画である」という点だ。「自分がよければそれでよし、他人の事など理解出来ない」といった、ホン・サンス作品の流れを、この『嫉妬は我が力』は強く含んでいるように思える。それ故、パク・チャノクの本当のオリジナルであるのか、またはオリジナルとなりうるのかを評価するには、しばらく時間をかける必要があるだろう。

 主人公の大学院生ウォンサンを演じたパク・ヘイルは、役と個性が上手く合致しており、何を考えているかよく分からないところが現代の青年らしくていい。彼が慕う年上の女性ソンヨンを演じたペ・ジョンオクも、フワフワした独特の可愛らしさが、なかなか魅力的だ。

 また、ウォンサンを慕う毛糸屋の娘ヘオクを演じたソ・ヨンヒは、今回一番記憶に残る俳優である。純朴で一途なようでも、一種、精神を病んでいるヘオクの役柄は、彼女のシュールな家族像とあいまって、非常に印象に残った。

 映像は雑だが、あえてデジタル・カメラや16mmを使わなかったのは、よくある、その手の作品になってしまうのを避ける為だったのだろう。

 決して面白く愉快な映画ではないし、際立って個性的な作品でもないが、パク・チャノク監督のこれからを、密かに注目したくなるような第一作目であった。


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