福岡アジア映画祭2005 リポート
『回し蹴り』
Reported by 井上康子
2005/9/7
『回し蹴り』 2004年 英題:Spin Kick
監督:ナム・サングク ※ 本作が監督デビュー作
主演:キム・ドンワン(ヨンゲク)、ヒョンビン(ミンギュ)、イ・ギウ(ソッポン)、キム・テヒョン(ジョンデ)、チョン・ジェヒョン(ソンワン)、ムン・ジユン(ヒョクス)、キム・ヨンホ(チュングン監督)、キム・ガプス(ソク校長)、チョ・アン(スビン)、パク・チヨン(ミエ)
『回し蹴り』
ストーリー
マンセ高校のテコンドー部は50年の伝統を誇り、かつては強豪校だったものの、現在は弱小チームに成り下がっている。大切なテコンドーの全国大会の予選を前にしたある日、テコンドー部員たちは、バスの中で校内の札付きの不良グループであるヨンゲクやミンギュたちに言いがかりをつけられボコボコにされてしまい、全員が病院送りになってしまう。一方、不良グループは留置場に送られてしまう。
テコンドー部がかつての栄光を取り戻すことを望むソク校長は苦肉の策として、不良グループに対して、テコンドー部に入部して、全国大会の予選を通過すれば退学を見合わせてやると迫る。嫌々、テコンドー部に入部した不良グループのメンバーたちだが、彼らはきつい練習に耐えて、予選を通過することができるのだろうか…。
コメント
人気グループ SHINHWA のキム・ドンワン演じる主人公ヨンゲクが語る「何かを変えたい」「一度も物事をやり遂げようとした事はなかった。俺がのめりこんだ唯一のものがテコンドーだ。投げ出したら負け犬だ」というせりふが象徴するように、日本で言うなら1980年代の青春ドラマの香りのする、典型的な青春・スポーツ根性映画です。
ドンワンは容貌も伝統的な美男のタイプで、坊主頭にテコンドー着もさまになり、たかがアイドルとあなどる事のできない演技力を持っています。私が最も印象に残ったのは、不良グループが入部するまで万年補欠部員だったソンワンを演じたチョン・ジェヒョンのコミカルな演技です。『夢精期』のソック役が評価されて、彼が演じることを前提に脚本が書かれたのだと思いますが、闘争心の全くない彼を奮い立たせようとチュングン監督が対戦相手のことを「あいつがおまえのオチンチンを触っていじめた奴だ」とつぶやくと、彼の特徴のある形の眉毛を下げて「いじめたなー。僕のオチンチンを触ったなー」といじけて見せ、そして一転、攻撃的な奴に変身してしまうのです。特にいじけている時の彼の表情や声の出し方はもう絶品です。
ティーチ・イン
ゲスト:ナム・サングク監督
2005年7月9日 NTT夢天神ホールにて
Q: |
作品中、マンセ高校の校歌が流れていましたが、この校歌は作品のために作ったのですか? |
A: |
この作品のために作った校歌です。音楽監督には、メロディーや歌詞を一般的なものにして、誰が聞いても、自分の学校の校歌に似ていると感じられるように、と要求しました。 |
Q: |
試合を前にして、ヨンゲクは髪の毛を刈って坊主頭にしていましたが、ヨンゲクを演じたキム・ドンワンさんは坊主にすることには抵抗がなかったのでしょうか? また、坊主頭にするということは監督のアイデアだったのでしょうか? |
A: |
「坊主にするのは嫌だ」と言って、最後まで抵抗していました(笑)。坊主にすることは私のアイデアで、この映画は典型的な学園ものなので、あえて、主人公の決意を表現するのに「坊主頭にする」という典型的な表現にしました。 |
Q: |
SHINHWA の中で、ドンワンさんを主役にしたのは理由があるのですか? |
A: |
私は、もともとは既存の有名な人はキャスティングしないつもりだったので、SHINHWA のメンバーを起用するつもりもありませんでした。ただ、製作会社から SHINHWA のチョン・ジン君を起用しようという話が出て、彼と会うことになったのですが、彼が来なくて、ドンワン君が来たのです。私は SHINHWA のメンバーの顔も知らなくて、ドンワン君と話して、顔も良いし、俳優らしさも備えていて、「彼なら良い!」と会って30分で彼をキャスティングすることを決めました。 |
Q: |
韓国で、テコンドーは若い人から見たらかっこ悪いスポーツなのでしょうか? |
A: |
はい(笑)。スポーツなら何でも良かったのですが、テコンドーにしたのは、忘れられた伝統的なスポーツと若者が自分を変えようとする意義を結びつけて感動を引き出そうとしたからです。 |
Q: |
韓国の男性は一般的にテコンドーの経験があるのでしょうか? 主演のドンワンさんはテコンドーがすごく上手でしたが彼は経験があったのでしょうか? |
A: |
男性が一般的にテコンドーをするということはありませんが、軍隊に入れば、必ずすることになります。この作品の出演者でテコンドーの経験があったのは、補欠部員を演じた俳優だけでしたが、映画の内容上、テコンドーが出来ない段階から見せたかったので、出来なかったのは好都合でした。キャスティングが決定して撮影までが3ヶ月間、撮影期間が3ヶ月間でしたが、その間に部員を演じたほとんどの俳優が入院したり、骨折したり、ということがありました。主演のドンワン君も肩等を二度も脱臼しました。 |
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