HOME団体概要support シネマコリア!メルマガ登録サイトマッププライバシー・ポリシーお問合せ



サイト内検索 >> powered by Google

■日本で観る
-上映&放映情報
-日本公開作リスト
-DVDリリース予定
-日本発売DVDリスト
■韓国で観る
-上映情報
-週末興行成績
-韓国で映画鑑賞
■その他
-リンク集
-レビュー&リポート
■データベース
-映画の紹介
-監督などの紹介
-俳優の紹介
-興行成績
-大鐘賞
-青龍賞
-その他の映画賞


大阪アジアン映画祭2011リポート
『The Servant 春香秘伝(仮題)』ティーチイン

Reported by 加藤知恵
2011/6/13


 『スキャンダル』(2003)の脚本家として注目を浴び、監督デビュー作『恋の罠』(2006)で大成功を収めたキム・デウ監督の2作目。韓国では道徳の教科書ともいえる古典小説『春香伝』を、一下男「パンジャ」の立場で再解釈し、エロティックな演出を随所に織り込んだ、かなりの冒険作だ。しかし主演のキム・ジュヒョクとチョ・ヨジョンの気品ある美しさと、リュ・スンボムのコミカルな存在感、パンジャに恋愛技術を教える師匠の登場など、ユーモアを加えた脚本が活きており、全体としてはとても清清しい印象。「人は誰でも自分の人生では主役」という監督の主張にふさわしく、脇役を含めた全ての登場人物が個性的・魅力的に描かれている。

 今回、審査委員として映画祭に参加していたキム・デウ監督だが、当初登壇の予定はなく、ティーチインは観客にとってサプライズの催しとなった。


『The Servant 春香秘伝(仮題)』

『The Servant 春香秘伝(仮題)』ティーチイン

2011年3月13日
シネ・ヌーヴォ
ゲスト:キム・デウ(監督)、パク・テヒ(プロデューサー)

── [司会]上映が終ったばかりですが、一言ずつお願いします。

[監督]本日はお日柄も良く、色々と災害がある中で映画を見に来て下さって、ありがとうございます。

[パク]週末の朝にもかかわらず、お越しいただきましてありがとうございます。(日本語で)おおきに。

── [質問1]映画の中に出てきたヤンバン(両班)は、どういった社会的地位の人たちなのでしょうか。そして下男とは決定的な格差があるのでしょうか。例えば下男が両班に成り上がったりすることはできるのでしょうか。

[監督]背景が分かるともっと良く映画が理解できると思うのですが、日本の歴史には侍のような身分制度がありますので、比較的説明がしやすいです。侍も両班も自分の身分を絶対視している部分が似ています。例えば両班の家の前を平民がタバコを吸いながら通り過ぎて、両班に捕まって叩き殺されてしまったとしても仕方がありません。

── [質問2]日本の戦国時代と同じように、平民がいきなり武士になって、成り上がっていくようなことはあったのでしょうか。

[監督]中にはお金で身分を買うような人もいたようですが、とても厳しい身分制度の時代でしたので(ほぼ不可能でした)。

── [質問3]大変面白かったです。監督の前の作品『恋の罠』も見て、とても面白かったのですが、こういう時代劇についてもテクニック的に上手いなといつも感心しております。今回、一般的に知られている『春香伝』からこういうアイディアというのは、どのように考えられたのでしょうか。

[監督]私が一番関心を持っているのは「人は誰でも自分の人生では主人公だ」ということなんです。この人は引立て役でこの人は主役という区別にも不満がありますし、皆全て大事な人間で、それぞれ怒りや欲望を抱えていて、ということを描きたかったんです。

── [質問4]前作の話が出ましたが、『恋の罠』は主人公がエロ小説を書く人ということで、今回は『春香伝』という非常に有名な作品の成立に関わる話…。文学的なものに感心をお持ちのように思うのですが、いかがでしょうか。

[監督]『春香伝』や韓国のものだけでなく、日本の古典にも関心があるのですが、最近、浅田次郎が書いた新撰組の小説を読みました。一般的に英雄として書かれている新撰組のメンバーが、自分自身や義理のためではなく、家族のためにお金を稼ぐという内容です。新撰組を主役にした他のどんな小説よりも、メンバーの人間味が強力に伝わり、魅力的に感じられたのですが、古典というのは時代の流れに合わせて変化したり脚色されたりすることに意味があるのではないかと考えています。


キム・デウ監督(左)、パク・テヒ プロデューサー

── [質問5]原作は韓国の国民映画と言われるくらい何回も作り変えられてきて、私たち外国人でもこの話は良く知っている方が多いと思います。私も韓国で南原(ナムウォン)という、作品の舞台になる町を訪問したことがあります。この作品を作り変える上で、まずは女優さんが観客の目を引くということが大事だと思いますし、実際に今回もものすごく美しい方で、見ている側もついつい引き込まれてしまったのですが、監督から見てどのようなところに惹かれてキャスティングされたのでしょうか。

[監督]キャスティングは主にプロデューサーが担当したので、プロデューサーに交代したいと思います。

[パク]春香(チュニャン)という人物自体が、今でも「ミス春香」というコンテストがあるように、古典的でありながら、重要な人物なんですね。春香伝を基に色々と脚色していますが、春香自身が持っている魅力や気質・品性は作品が違っても変わらないと思っています。多くの女優が演じたがる役なのですが、主演のチョ・ヨジョンさんはこの役に対する理解や姿勢が一番優れていて、脚本中の春香のイメージに一番近かったのでキャスティングしました。結果的にとても満足していますし感謝しています。

── [質問6]キム・ジュヒョクさんは、韓国ではあまりたくさんの作品に出演していない俳優さんですよね。どうして彼を主役に選ばれたのですか。

[パク]日本ではあまり紹介されていないかもしれませんが、それほど出演作の少ない俳優ではありません。一人の男として、身分以外の全てのものを持っているのがパンジャで、その反対がモンニョンだと思うのですが、二人の対比を通して男性的な魅力を表現できる俳優として選びました。男性的な魅力と細やかな表現を両方備えているのがキム・ジュヒョクさんだと思っています。今回主演の二人が出演している作品が、この映画をきっかけに、今後もっと日本で紹介されるようになれば嬉しいです。

── [質問7](韓国語で)監督、楽しく拝見しました。面白いエピソードとして、オ・ダルスさん演じるおじいさんに恋愛技術を教えたというチャン・パンボン先生が出てきますが、歴史上に実在した人物なのでしょうか。

[監督]私は以前趣味でポーカーをやっていたのですが、変わった手を使うと皆に「どこで覚えたんだ」と聞かれるので、その度にふざけて「チャン・パンボン先生に習った」と答えていました。シナリオを書きながら急にその名前が浮かんできて、そのまま使いました。歴史上にも、どこにもいない架空の人物です(笑)。最後に個人的に付け加えたいのですが、今回滞在中にこのような不幸な災害が起きました。テレビなどを通して、日本人がとても威厳があり、堂々とした素晴らしい態度で災害に立ち向かっている姿を見て感動しました。隣国の国民の一人として応援していますし、心からエールを送りたいと思います。


大阪アジアン映画祭 公式サイト http://www.oaff.jp/


Copyright © 1998- Cinema Korea, All rights reserved.