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アジアフォーカス・福岡国際映画祭2010リポート
『Eighteen −旋風−』

Reported by 井上康子
2010/10/10受領
2010/10/25掲載


 「今の日本の若い子は失敗経験を恐れる」というのをよく耳にする。そういえば、少し前まで元気のいい男の子というのは、先のことは考えずやりたいことに手を出すとされていたものだ。この作品は1977年生まれの若いチャン・ゴンジェ監督の長編デビュー作だが、監督自身の体験をベースにしているそうで、高校2年生の主人公テフンには監督のかつての姿が強く反映されているようだが、テフンは本当に無鉄砲で無邪気な男の子だ。


『Eighteen −旋風−』

 この作品はテフンと、彼のガールフレンドである同学年のミジョンとの青春まっ盛りの恋愛のてん末を素材にしてはいるが、ミジョンの姿はそのほとんどがテフンの視点から恋愛の対象としてのみしか描かれていない。それは彼らの恋愛が、高校生の「恋に恋する」と呼ばれるような恋愛であるためもあろうが、大きな理由は、監督が恋愛そのものを描こうとしているのではなく、恋愛を契機に男の子から大人の男になるために、社会に踏み出さざるを得なくなったテフンの姿を描こうとしたためだと思われる。

 事の発端は、テフンがミジョンを誘って東海へ旅行したことである。親に無断で一週間の旅行をし、この辺りがテフンの無鉄砲さをうまく表わしていると思うのだが、帰りの交通費の準備もなく、バスターミナルにいた見知らぬ人たちに声をかけまくり、人のいいおばさんにお金を借りることに成功する。帰宅すれば当然のことだが両親に問い詰められ、激昂したミジョンの父親にはナイフまで持ち出され、大学入学まで二人は会わないという覚書を出すことになる。

 現実的に受験勉強に専念するようになったミジョンは、両親との約束もありテフンを避けるようになるが、テフンは全く懲りない。深夜に彼女の部屋の窓をたたき、彼女の行く塾で待ち伏せをする。携帯を止められ、親への反発から、しばしばネットカフェで過ごし、バイトを始めたテフンは、それから、さまざまな挫折を経験していく。ネットカフェで持ち合わせが足りないと嘘をついて値切ろうとしたテフンは、ヤクザの店長から身体検査を受け、嘘がばれて殴られる。中華屋の出前持ちのバイトでは、バイクで配達中に、たまたま見かけた車のミジョンを追いかけたため、不注意から人をはねて怪我を負わせてしまう。ヤクザの店長は彼をなぐりながら「世の中を甘く見るな!」と罵倒し、中華屋の社長は「未成年が起こした事故で保険はおりないが治療費は私が責任をもつ。私も君を雇った責任があり、責任は五分五分で、君にはバイトを辞めてもらうがいいね」と静かに諭す。好対照の二人ではあるが、各々の存在はたいへんリアルだ。なぐられたテフンが血を吐きながら自己嫌悪に陥る姿や、中華屋で最後となる食事をふるまわれたテフンが、自分がいかに無力な存在かを思い知り、涙をこらえてジャージャー麺をかきこむ姿は、社会の中で自分の無鉄砲さからトラブルを引き起こしたテフンが、彼らから教えられた責任の取り方を学んでいる姿だと言えるだろう。


ティーチインの模様

 ラストでは、テフンが中華屋のバイト代で買ったペンダントを身につけたミジョンが登場するが、それは物語の構成を保つために描かれた、といってもいい位に思える。挫折続きのテフンを描いて、お金なしでは生活できず、親の庇護を離れて自分でお金を稼ぐことのたいへんさ、社会で責任をもつとはどういうことか、それに耐えられることが、男の子から大人の男になることだ、ということをきっちり示しているのだ。


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