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『How Does the Blind Dream』
ユ・ジテ記者会見

Reported by 鄭美恵(Dalnara)
2006/7/30



 盲人はどんな夢をみるか・・・ 考えたこともなかったテーマに監督は光を当てる。想像力をはたらかせてみよう・・・ タイトルに誘われてふとそんな気持ちになる作品だった。

 視覚障害者の主人公が、その歩き回る音から想像するゴキブリは、現実とは色が異なったり(ゴキブリは白い)大きさも違って描写される(80cm長のゴキブリ)。現実が色がなく大きな音がある世界のように描かれている。一方、主人公が見る夢は、太陽に顔を向けて目を閉じた時のような明るさと温かさがあって、それがサーモグラフィーのような映像で表現されている。視覚障害者のファンタジーとして、谷崎潤一郎の『春琴抄』のようなちょっとしたエロティシズムが描写される一方、視覚障害者の疎外感や、見える者たちとの意思疎通の断絶、見える者・見えない者のそれぞれの世界観など、社会的な側面も孕んだ作品。

 『オールド・ボーイ』『美しき野獣』などに出演した俳優ユ・ジテがこのほど映画監督として来日した。2006年6月10日、東京で開催されたショートショートフィルムフェスティバルアジア2006の<スペシャル・プログラム>で、ユ・ジテ監督作品『How Does the Blind Dream(原題:盲人はどんな夢を見るのか)』が上映されたのだ。上映後は作品の演出などについてユ・ジテが語り、映画についての豊かな知識が披露された。このセミナーに先立って開かれた記者会見の模様をお伝えする。



記者会見での質疑応答

   日時:2006年6月9日(金)
   会場:全日空ホテル
   通訳:根本理恵

Q: 今回の作品で視覚障害者を主人公に選んだのはなぜでしょうか。そしてオ・グァンノク氏を選んだのはなぜでしょうか?
A: 私がこの映画を作ろうと思ったきっかけは非常に単純でした。ある日私の後輩と電話で話していた時に、その後輩が盲目の鍼灸師の話をしてくれました。この話を聞いて、もし視覚障害者の方が何かを想像するとしたらどんな想像をするだろうか。夢を見るとしたらどんな夢をみるのだろうか。ファンタジーを頭の中に思い描くとしたらどんなものだろうか・・・ということから始まってこの映画を撮ろうと思ったのです。オ・グァンノクさんは元々テンポがゆっくりな方で、ほんわかした雰囲気があり、話し方も口調もユニークな方なので、この役にいいなと思い、ぜひやってほしいと出演をお願いしました。

Q: 監督としてご自身の作品の中で使ってみたい俳優さんがいたらおしえて下さい。また、特に若い俳優の中で注目されている方がいればおしえて下さい。
A: 私が「この人を起用したい」と言うとすごく生意気な感じになってしまいますので・・・、誰かを起用したいというよりも、一度なにか一緒に作業をしてみて、その人が魅力的だなということを感じられれば使いたいと思います。

Q: 視覚障害者の方が主人公なので「見えないものを見ようとする」ことを表現されていたと思います。それを特に音響や音に感じとれたのですが、その辺をどのように意識して監督されたのでしょうか。
A: この映画には視覚障害者の方が登場しますが、私たちは目の見えない人は何も見えていないと、どうしても錯覚をしてしまいますし、どうせ見えないのだろうと偏見を持ってしまうかと思いますが、この映画では視覚障害者の方にも視覚があるということを描きたかったのです。彼らが頭の中で思い描いている、彼らなりの視覚を持っている、ということを言いたかったのです。それは私が実際に視覚障害者の方にインタビューをしたり、いろいろな本を読んでもそのように感じました。視覚障害者の方たちに何か特徴があるとしたら、五感のうち視覚がないので、他の感覚が発達しているということがあります。この映画でもそういった部分を見せるために、おっしゃったように音響など音の部分にかなり気を使いました。

Q: 撮影の時に難しかったこと、次回作品を撮るとしたらどういう作品を撮りたいかをおしえてください。
A: 映画作りの難しさをあげたらきりがないくらいほんとに難しい点ばかりです。今回も監督というのは誰にでも出来ることではないなと思いながら映画を撮っていました。映画作りを通して感じたのは、フィルムとデジタルの違いです。それぞれに長所と短所があるのですが、デジタルで言えることは、どうしても克服できない解像度というのがあり、鮮明に映せるかどうかが難しかったです。サウンドについても五感のうち視覚がないということで、聴覚、音の部分をかなり見せたかったのですが、6ミリのデジタルというのは2チャンネル、つまりステレオの音しか出せず、フィルムだったら5.1チャンネルも可能なのですが、2チャンネルしか使えなかったのが残念でした。でもデジタルの長所を生かすことも出来ました。CGをたくさん使え、モーションキャプチャーなどが使えるという利点を今回生かしました。次に撮るとしたらフィルムで撮りたいです。解像度の高い、視覚的にクオリティの高いものを撮りたいです。内容については人間と人間の関係性の中で、人はどんな本性を見せるのか、ということを描いてみたいと思います。タイトルは直訳すると『親しい振りをするな』『馴れ馴れしくするな』(笑)というのを考えています。

Q: 視覚障害者の方を主人公にした映画ですので、視覚障害者の方にインタビューなどされた思いますが、そういう方は映画をどのように思っているのでしょうか。また、視覚障害者の方を主人公にした映画について、その方たちは共感を感じられたのでしょうか。
A: 最初は、視覚障障害者の方たちが気に入るような映画を作りたいと思ってスタートしました。しかしやっていくうちに、彼らが持っている性的なファンタジーの部分を描こうと考えましたので、視覚障害者の方が観た時に、もしかしたら不愉快な思いを抱くかもしれないと途中で考えるようになりました。でもその方たちは映像は視覚的に見えないのだから、思い切り自分の撮りたいものを撮ろう、と自分自身を慰めて映画を撮っていました。この映画を視覚障害者の方たちの偏見を描いたとしたら不愉快に思うかもしれませんが、この映画はあくまでもファンタジーですので、ファンタジーとしてみなさんに観ていただければ、視覚障害者の方たちもこんな描き方もあるんだな思ってくれるのではないかと思います。


『How Does the Blind Dream』

Q: 俳優として監督ユ・ジテをどう思われますか?
A: こんな質問は初めてです(笑)。一度も考えたことのないことだったのですが・・・映画を作っている時に思うことがあるのですが、映画は100年くらいの歴史を持っています。その中で立派な監督はたくさんいますので、私が映画を作る時はただ真心をこめて映画を作っていきたいと思っています。

Q: 今まで出演した作品が監督をするにあたって役に立つことはあったでしょうか。その中で一番影響を受けた出演作は何でしょうか。
A: もちろん影響は受けていると思います。私が出演した作品の監督さんというのは、素晴らしい監督だと思って選んでその作品に出ていますので、一緒に映画を作っていく中でその監督さんたちからいろいろなことを学んで、いろいろなことを感じてきました。だから自分の作品になんらかの影響はあるのではないかと思います。ただ、自分で映画を作る以上、自分なりのカラーを見つけるということも大切ですのでそれを真似しようということではなく、あくまでも刺激を受けている、という気持ちです。

Q: 字幕があちこちに飛んで現れるのですがその意図についてお聞かせください。CGを使った、踊っているシーンに出演しているのはご本人でしょうか。
A: 外国映画を観ると字幕は下に出てきますが、もっと字幕を映画の中で利用してもいいのではないかと思い、今回の映画の中で字幕を映画における一つの道具として使えないかと試みてみました。前に読むための字幕ではなく字幕を小道具として利用した作品がありました。トニー・スコットの『MAN ON FIRE(邦題:マイ・ボディガード)』という映画ですが、字幕のおもしろい利用法が取り入れられているのでぜひ観てみてください。字幕も映画のコンセプトと合うならば利用する価値があると思ってあのようにいろいろ試してみました。モーション・キャプチャーの技術を使ってCGを作り映画の中に取り入れたのが踊っているシーンです。あのシーンは多くの人が踊っているように見えますが、実は男女一人ずつにシーンごとに踊っていただいたのをコピーして、どんどん人数を増やして、ああいった映像を作っていきました。実は、以前モダンダンスをやっていて、それが非常におもしろかったので、モダンダンス的な動きになっていますが、踊っているのは私ではありません。

Q: 映画の中に在米韓国人の方が出てくるのですが、その方を使った理由をお聞かせください。また、最後にラップが出てきますが、この映画にファンタジーという側面があるので、それとラップが合うということも理由のひとつでしょうか。
A: 映画を作った後に弁解するのはよくないことだと思うのですが、実は最初はもっと長いものを撮りたいと思ってこの映画を撮り始めたのです。ロマンスをもっと増やして、女性が男性とのロマンスを話すことによって、鍼灸師の男性が頭の中でひとり、いろいろなことを想像することをもっとたくさん入れたり、ファンタジーをもっと強くしたかったのです。近くに住んでいる女の子に卑猥な冗談を言ったり、サンバをファンタジーの中に取り入れたり、もっとふくらませたかったのですが、思っていたよりも短く中編くらいの長さになってしまいましたので、十分には入れられませんでした。登場する女性にはちょっと外国志向のところがあって、男性の好みもおなじ国の人よりは外国の男性を好むような、そういうキャラクターとして登場させたかったので、在米の人をキャスティングしました。ラップについては最初からラップを入れるつもりでしたので、ラップがうまい人ということを念頭において友人を通して彼を見つけました。ずっとアメリカに住んでいた方で韓国に来て日が浅かったので、韓国語の発音を聞いてみたら、あまりにもつたないと思ったのですが、でも映画を最後まで観た時になぜ彼の発音が韓国語として聞いたときにつたないかというのもわかると思い、そのまま彼を起用しました。



 翌日、ラフォーレミュージアム原宿で開催された『How Does the Blind Dream』の上映とセミナーでは、作品の演出にからめて芸術全般への深い知識が披露された。パトリック・ジュースキント(韓国では人気のある小説家とのこと)の 『香水』、映画『マグノリア』、『ボンバーズ』などが話の中で挙げられた。

 ショートフィルムにかけて、「life is short(人生は短い)」と問われたらなんと答えるか?には「タヘンイダ(幸いだ、よかった)」と答えていた。「タヘンイダ」は日本語の「たいへんだ」と音が似ているから、と人生は短くて「よかった」し、短くて「たいへん」だ、とふたつの意味をもたせてユーモアたっぷりだった。


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