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Review 『女は男の未来だ』『逆転の名手』
『私の男のロマンス』『木浦(モッポ)は港だ』

Text by カツヲうどん
2005/10/16


『女は男の未来だ』 ★★★

 ホン・サンス監督は、今の韓国の中で、もっとも恵まれた映画監督の一人だろう。なぜなら、好き勝手に見える映画を撮り続けているからだ。この『女は男の未来だ』も、これまでの作品同様、評論家(特に外国や学術的志向の強い筋)と、一部の熱烈なファンに向けて、そしてなによりも、監督自身に向けて撮り上げたかのような映画になっている。映画のクレジット最後に入る「ホン・サンス5本目の作品」というテロップは、そんな人を喰ったホン・サンス作品の証のようだ。

 三作目『秘花 〜スジョンの愛〜』では、少し娯楽寄りの作風になったように見えた。五作目の『女は男の未来だ』は、前作『気まぐれな唇』の延長上のような作風で、よくも悪くもマンネリ個性的な映画になっている。この映画の物語を述べる事は意味がないだろう。これまでの作品がそうであったように、物語は、登場人物が行動する時間の流れでしかない。淡々としたユーモアを背景に、人のしょーがない性(サガ)を延々と観察し続ける様子はいつもどおり、登場人物たちも、皆、情けない。

 ただし、スタッフも出演する俳優たちも、ホン・サンス監督スタイルへの研究と理解が進んでいるためか、全体的に手慣れてしまって、斬新さは全然ない。一見、素人映画のようで、実はそうではない、という巧みさと独特さが、国際的に高く評価されている点の一つなのだろうが、前作『気まぐれな唇』と、この『女は男の未来だ』を続けて観ると、ホン・サンス作品初見の客でも、手慣れた「わざとらしさ」を見抜いてしまい、賛否両論別れそうだ。

 この映画で最大の話題は、出演者の豪華さだろう。ホン・サンス作品としては、例外的にメジャーな俳優たちが揃っており、全員なんの違和感もなく、ホン・サンス ワールドの住人と化している。でっぷりと肥えたユ・ジテ(イ・ムノ役)も、無精髭を生やしたキム・テウ(キム・ホンジュン役)も、せこく、すけべな男たちをごく自然に演じた。彼らからすれば、ホン・サンス作品への出演は、決断が必要だったろうし、ヒロイン、ソナ役のソン・ヒョナにしても、女優としての復帰をかけた出演だったのだろうと思う。だが、案外、ホン・サンス側からしても、リスキーな判断だったのではないだろうか。

 ホン・サンスの映画を観ていて、いつも思うのは、フェミニスト的だ、ということだろう。世の中、男が主導を握っているようでも、本当は女の掌を巡っている過ぎない、そんな原理が、この『女は男の未来だ』には、強く出ている。多くの男性陣にとっては、納得しながらも、歯がゆい作品かもしれない。


『逆転の名手』 ★★

 私は、チョン・ジュノ主演の映画を、ほとんど劇場で観ている。別にファンではないのだけど(そもそも彼のファンは日本にどのくらいいるのだろうか?)、それだけ、最近の出演作が多い、ということなのだろう。彼は元々テレビ・ドラマのワルな二枚目だったけど、『マイ・ボス マイ・ヒーロー』のヒットで、映画俳優としてブレイクし、『大変な結婚』でコメディ映画の二枚目として地位を確立してしまった感がある。しかし、スター俳優としての地位は、ちょっと微妙な感じで、残念ながら主演作の質にはあまり恵まれているとはいえない。演技も上手いわけではなく、どちらかというと、形に沿った演技(悪役や時代劇)に力を発揮するタイプの俳優だろう。

 しかし、この『逆転の名手』でのチョン・ジュノは、今までの映画出演作の中で、最良の演技を見せたのではないだろうか? そして、この映画の良いところは、双子の数奇な運命を、悪ふざけすることなく、真面目に描こうとしたパク・フンシク監督の姿勢だ。よくある人情喜劇タッチではあるが、なかなか懐の深い作品となっている。

 ゴロツキの兄、ミョンスは町の有名な不良だ。彼の人生は刑務所を出たり入ったり。逆に弟のヒョンスは大変な秀才で、町の期待を背負って上京、大学卒業後は弁護士として活躍している。弟ヒョンスの昔の恋人、元社長令嬢のスニ(ユン・ソイ)の復讐計画に兄ミョンスが巻き込まれたところから、二人の人生は数奇な交差を繰り広げてゆく。

 物語は双子の宿命を分け隔て続ける。時折、ミョンスがヒョンスに化けることもあるが、二人が入れ変わって人生逆転、などという展開にはならず、弟ヒョンスがエリートとして順調に出世街道を進めば進むほど、悪の道に取り込まれて行き、兄ミョンスは不道徳な運命を背負っているからこそ、正義の闘いに巻き込まれてゆく展開は、中々ひねりが効いている。スニの復讐も、他の監督作品だったらもっと凄惨なものになっただろうけど、そういう解決は図られないし、市井の人々に重きを置いたところも、ヒューマニズムを強調している。特に、ヒョンスと、町の娼婦の淡い愛は、古典的だが、感動を呼ぶエピソードになっており、強く心に残るだろう。

 最後はハッピーエンドを迎えるが、双子の人生は決して順風満帆という訳には行かない。だが、それゆえ、この映画の真面目さが伝わってくるラストでもあった。


『私の男のロマンス』 ★★★

 平均以上の作品が揃っている2004年度韓国映画の中で、この『私の男のロマンス』は、どちらかというと、あまり良い出来ではない。しかし、定石に則ったラブ・コメディである、と割り切ってみれば、ひどい作品ではないし、気軽な娯楽作品としては、よく練られている。

 映画は、害虫駆除会社の研究員キム・ソフンと、地下鉄職員キム・ヒョンジュ、大スター、ウン・ダヨンの三角関係をおもしろおかしく描いて行くが、全てが定石通り、良く言えば、この手のドラマをよく研究して、さばさばと作ったような内容で、あまり愛情は感じられない。また、全般的に登場人物に「こんなことは、いくらなんでもやらないだろう」という、場当たり的な行動が目立つ。そんな中、ソフンの、害虫オタクという設定が多少なりとも作品を救っている。ただし、害虫に関して悪趣味な描写も幾つかあるので、その手が嫌な人はダメかもしれない。

 ソフン演じたキム・サンギョンが、こういったジャンルに出演することは、ちょっと予想出来なかったが、それなりに格好良くこなしている。ただ、この俳優の不思議なところは、演技が記憶に残っても、俳優としての個性や印象が希薄である、という事だろう。『殺人の追憶』での熱演を憶えている方も多いだろうが、「俳優キム・サンギョン」というイメージで捉えている人は、少ないのではないか。

 ヒョンジュ演じたキム・ジョンウンは、今回もまた不発だ。俳優として難しい時期に来ているのかもしれない。劇中のヒョンジュは、土砂降りの中、男を信じて何時間も待ち続けるが、彼女がこうゆう役をやると本当に可哀相で見てられない。キャストで一番叩かれそうなのが、ダヨン演じたオ・スンヒョンだろう。病的で不健康な様は、ホラー映画のようで気持ち悪い。こういう役こそ、遊びでオム・ジョンファや、キム・ヘスのような女優が出てくれば、ぐっと面白いのだが、そう簡単にもいかないから、製作者側としても、本当は一番頭の痛かった部分かもしれない。

 この『私の男のロマンス』は、昔、日本でそれこそ山のように作られたタイプのドラマだが、それなりに垢ぬけてはいるので、興味のある人(たとえばキム・サンギョンのファンの方とか)は、観ても損はないだろうと思う。


『木浦(モッポ)は港だ』 ★★★

 韓国映画は、そのスタイルがかなり変わりつつある。コメディも例外ではなく、見た目の洗練さと、軽いリズムを作品に持ち込む映画が増えている。端的にいうとCMやマンガの感性を大きく取り入れているのだ。『同い年の家庭教師』などは、その代表的作品だろう。ただ、やっているネタは泥臭いままだから、必ずしも新感覚が、全ての作品で上手く機能している訳ではない。この『木浦(モッポ)は港だ』も、従来の泥臭い感性で作ったほうが、個人的にはしっくり来たように思うコメディだ。

 チョ・ジェヒョン演じる刑事スチョルは、見た目はいかついが、腕っぷしが滅法弱く、知性があるが、いつも捜査はまぐれ当たり、といったキャラクターで、一見面白そうだが、彼に、こういう役は似合わない。コメディも出来るのは、芸域の広さの証明でもある訳だが、やはり情念に満ちた暗い役こそ、本領を発揮する。ヤクザの若親分ソンギを、チャ・インピョが演じていて、これも意外な配役ではあるのだけど、彼の俳優として不器用な部分が上手に生かされているかというとそうではない。刑務所でストリップを強要されるシーンのみ、確かに笑えるが、今回も従来のイメージから脱する事は出来なかった。ヒロイン、ジャギョン役、ソン・ソンミはあまり馴染みのない女優だが、この映画を観て彼女が気になった方は、是非、『セックスインポッシブル〜男はみんな狼だ!〜』を観ていただきたい。役柄によっては、実はかなりいい脇役として活躍できる資質を持っていると思う。

 韓国では、『友へ/チング』以来、地域性を前面に出した作品が幾つも作られているが、決して興行的成功に結びつく訳ではない。そろそろ、汎韓国的社会性を前面に出した映画を作るべき時期が、再び来ているのではないだろうか。方言と人情、気性の荒さばかり羅列しても、決して全体の面白さ、魅力に結びつかないと思うのだが。


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