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シネマコリア2004
『品行ゼロ』Q&Aセッション



文・構成:西村嘉夫 写真:宮田浩史
資料提供:SARU
2005/1/1受領

日時:2004年8月7日(土)・8日(日)
場所:キネカ大森
通訳:全雪鈴
司会:西村嘉夫

 シネマコリア2004『品行ゼロ』が上映され、監督のチョ・グンシク氏が来日。上映前後に、観客とのQ&Aセッションが行われました。

 ここではQ&Aの内容の抄録をお届けします。なお、監督の発言内容には一部補足をしてあります。

チョ・グンシク
 1968年生まれ。ソウル芸術専門大学映画科卒。韓国映画アカデミーに入学し、演出を専攻する。1993年から1998年にかけて、短編映画『発電所』、『Wannabe』の演出、『17』の撮影などを担当した後、チャン・ソヌ監督の『LIES/嘘』(1999)の演出部に入り、商業映画界入りする。2002年末に公開された『品行ゼロ』で監督デビュー。シナリオも担当した本作は、同時期公開されていた『二重スパイ 』(2003)、『ラブストーリー』(2003)を超えるスマッシュ・ヒットとなった。



Q: 上映前に一言
A: 今回、このような席を設けていただきまして、非常に今緊張しておりますし、ちょっと不安でもあります。皆さんにどのように観ていただけるか気になるところですが、楽しんでご覧いただければと思います。

Q: 作品中いろいろなところに日本の文化が出てくるんですが、監督は昔から日本の文化に関心がおありだったのでしょうか?
A: 特別日本の文化に関心があったという訳ではありませんが、日本はとても近い国だと思いました。私も小さいときに、例えばこれはアメリカ文化、これは日本文化といったように区別するのではなくて、韓国に入ってきた色々な文化を自然に受け入れていましたし、小さいときの思い出を元気に楽しく再現するという意味で、今回の映画を撮りました。

Q: 監督を見て映画の中の主人公チュンピルがそのまま出てきたような印象を持ちました。やはりご自分の姿を投影している部分があるのでしょうか?
A: チュンピルだけではなくて、映画に出てくる全てのキャラクターの中に、少しずつ私の姿が反映されていると思います。

Q: 主演のリュ・スンボムがとても良かった。彼をキャスティングした理由は?
A: 当初主人公に考えていたのはパク・ヘイルさんです。今はとても有名になりましたが、当時はあまり有名ではない俳優さんでした。もともとリュ・スンボムさんは助演として起用しようと考えていたんですが、シナリオの作業がだんだん遅れて1年くらいリュ・スンボムさんと関わる時間が出来たんですね。それで次第に彼の魅力に気づき始めて、チュンピルというキャラクター、ちょっとガキ大将っぽくて、明るいキャラクターが彼にあっているように感じましたので、彼の魅力を活かす意味でキャスティングしました。リュ・スンボムさんの印象というのは、海からあがってきたばかりの活きの良い魚のような、そんな俳優さんです。ちなみに、主演のリュ・スンボムさんとコン・ヒョジンさんは撮影中に付き合い始めたんですが、撮影が終わると別れてしまいました(笑)。撮影中、二人を見守っているのは楽しかったです。

Q: 1980年代が舞台になっていますが、若い俳優たちにその年代の演技をしてもらうために何か演技指導をされましたか?
A: 正確に言いますと時代背景は1983年になります。その頃韓国の学校では、制服から私服で自由に登校していいようになりました。1980年代の時代の概念や意義といったものは若い俳優たちには特別意識させませんでした。自分たちが学校に通っていた頃の姿を自由に演じて欲しいというふうに指導しました。1980年代の時代背景はその分、1968年生まれで当時のことをよく知っている私がかなり意識をして演出をしましたし、若い演技者たちには変なプレッシャーを与えないように気をつけました。現場は私と俳優が遊ぶような感じで、本当に楽しかったです。

Q: 1980年代を再現するにあたって苦労した点は?
A: 韓国という社会はブームですとか流行といったものが次から次へと生まれては廃れていく、常に変化が起こっている社会です。ですので、1980年代を彷彿とさせるようなものがもう残っていなかったので、そういった部分では資料を集めたり苦労しました。

Q: この映画はソウルで観ました。ソウルでは周りの観客がものすごくウケテいるのに自分は言葉が分からなくてちょっと残念だったんですが、今日字幕付きで観て、とても楽しく拝見しました。最後の体育館での対決なんですが、サンマンと対決しているのに彼ではなく子分がナイフで後ろからチュンピルを刺す。しかし、チュンピルは倒れない。そういう設定にしたことが、ピンと来なかったのですが、なぜ、そういう設定にしたのか理由を教えて下さい。
A: 私は特別おかしな設定ではないと思っています。チュンピルがサンマンの上にまたがって猛烈にぶつんですが、その時サンマンの子分がナイフをまわしていて、お前がやれお前がやれと言っている内に、チュンピルの背中にぶすっと刺してしまいます。状況としてはそのまま倒れてしまう可能性もあるわけですが、チュンピルは戦いの中で最前を尽くしていて、見ている周りの生徒たちに自分の耐えている姿を見せたのだと思っています。

Q: 観客と一緒にご覧になって、日本のお客さんの反応はいかがでしたか?
A: 韓国で上映しているときとは、笑いどころが微妙に異なる部分があったんですが、非常に楽しんでご覧いただけたようで満足しています。

Q: 『マトリックス』、『シェーン』、『友へ/チング』など、他の作品のパロディがいくつかありましたが。
A: この映画には大きな軸があります。例えば、現実とファンタジー、ヒーローとそうでない者、自由と抑圧、大人社会と子供の社会といったような相反するものを大衆文化として映し出すというところをこの映画で表現しています。そういう作業をしていく過程で、パロディといった技法が動員されることになりました。

Q: 優等生のミニはキム・スンジンという歌手が好きで、ローラースケート場で彼女の『スーザン』という曲をかける。一方、スケ番のナヨンはパク・ヘソンという歌手が好きという設定になっています。そして、最後にナヨンがチュンピルに「私が好きなの? ミニが好きなの?」と詰め寄るシーンでは、チュンピルが『スーザン』という曲名で答える、という印象的なシーンがありました。このキム・スンジンという歌手とパク・ヘソンという歌手はどのような歌手なんでしょうか?
A: 韓国では1980年代の初頭というのは、ティーン文化が花開き始めた頃でした。それで10代が好きそうな歌謡曲がヒットし始めたわけですが、キム・スンジンとパク・ヘソンという歌手の関係は例えていえばマドンナとシンディー・ローパー、プリンスとマイケル・ジャクソンといったようなライバル関係にある歌手でした。ですので、韓国の観客は、キム・スンジンとパク・ヘソンという名前が台詞の中で出てきただけで、ミニとナヨンは将来対立関係になるのだとすぐに悟ることが出来ます。もちろん、現在の若い観客の中にはそういったことが分からない人もいますので、私と同じ世代の観客と、現在の若い世代の観客とでは、韓国でも受け取り方が微妙に違っていたようです。

Q: 非常に良くできた映像でしたが、脚本段階でどのような映像になるのか想像できてらっしゃるのでしょうか?
A: シナリオは映像の元になる設計図のような物だと思っています。シナリオを元に撮影して編集して、それによって映画に生命が吹き込まれていくのだと思いますが、例えば言葉で説明できない、論理的には説明できないような、シナリオでは描かれないような部分というのもあります。ですので、設計図ではあるのですが、それが全てを決定づけるものではないんですね。例えば、俳優と会って一緒に話しをして、色んな意見が出てシナリオがどんどん変わっていくということもあります。撮影がすべて終了するまでにシナリオを書き直した回数は20回以上になります。


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