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『子猫をお願い』をプッタカムニダ

『子猫をお願い』私設応援団長 岸野令子
2004/3/31受領


Profile 岸野令子

 映画パブリシスト。キノ・キネマ代表。龍谷大学非常勤講師。『赤毛のアン』、『髪結いの亭主』、『ハンネス、列車の旅』などの宣伝、『暗戀桃花源』などの配給を担当。ライターとしても活動するほか、女性のための映画講座や上映会の講師を多数務める。
 韓国映画に関しては、1994年の「大阪韓国映画祭」を皮切りに、2002・2003年の「日韓映画バトル」など数多くの映画祭を大阪で企画・コーディネート。1997年には『永遠なる帝国』を配給する。また1997年の第2回より釜山国際映画祭に連続参加。チョン・ジェウン監督の『子猫をお願い』は2001年の釜山国際映画祭で見て一目惚れ。


『子猫をお願い』

 20歳の女性5人の成長物語。猫を預かる事になった女子高校同窓生の女の子5人の日常を通じ、20代初めの女性の夢と挫折を、みずみずしい感性で描いた作品。2001年秋に、韓国公開され、当初は興行的に苦戦するも、この映画を見て感動したファンやアーティスト、評論家等が再公開運動を展開し、ソウルとこの映画の舞台となった仁川で再上映が実現した。



 待望の『子猫をお願い』が、ようやく今年6月東京での公開が決まった。3年前の釜山国際映画祭ではじめて見た時から、何としてもこの作品の日本公開を実現してほしいと思っていた私は、勝手に私設応援団長を名乗っている。

 この作品を買ったのはポニーキャニオンだったが、ポニーさんは映画館での配給を直接することはあまりなく、配給委託先を探しているという。そうこうしているうち時間だけが過ぎていく。何とかならんのだろうか。そしてやっと、『子猫』はポニーキャニオンからオフィス・エイトに配給委託されることになった。また地方配給はメディア・スーツに協力してもらうとのこと。それで旧知のメディア・スーツさんから、オフィス・エイトの村田さんを紹介してもらった。映画のように『子猫』の預かり先が移っていったが、それでも、村田さんが頑張って東京公開劇場を探すといってくれた。

 私は、メディア・スーツさん経由オフィス・エイトさんに頼んで、この作品の公開・宣伝に協力させて、といった。そして、この映画をちゃんと売るために、宣伝の武器であるプレスシートをきちんと作ってねとお願いした。「ではプレスに入れる内容、資料をキノ・キネマさんで作ってもらおうかしら」と村田さんから言われた時は、もう天にも昇る気持ち。ほとんど私の映画になった気分だ。


左からイム・スルレ監督、筆者、チョン・ジェウン監督
『もし、あなたなら〜6つの視線』が上映された釜山国際映画祭にて

 それ以前に〈第2回日韓映画バトル〉のコーディネートの依頼を請けていた私は「ゲストの招聘は『子猫をお願い』チョン・ジェウン監督にしてください」と、まだ正式公開作品のない彼女を呼ぶという大胆な提案を主催の日本写真映像専門学校にお願いし、了承してもらった。2003年の夏に開かれたその催しは無事に終わり(→「「日韓映画バトル」で初来日のチョン・ジェウン監督随行記」)、チョン監督に、ぜったい『子猫』の日本公開を成功させるからね、と約束した。チョン監督も喜んでくれたが、この時点では、まだ公開劇場すら決まっていなかった。

 『子猫をお願い』という作品は、他の韓国映画とは違う持ち味が魅力である。その持ち味が生きるミニ・シアターで上映してほしい。できれば渋谷のユーロスペースあたりで……という気持ちだった。そしたら何と「ユーロスペースさんがやってくれることになりました」と朗報がきた。これで第一段階の難関はクリアしたわけである(『子猫をお願い』は『ほえる犬は噛まない』ペ・ドゥナ主演でもある、「犬」の次は「猫」だ!)。


『子猫をお願い』より(画像提供:オフィス・エイト)

 劇場と配給・宣伝の会議で、方向性が決められ、宣伝物が作られていく。子猫を使って可愛いヴィジュアルにするのは大賛成。でも作品のすばらしさをきちっと押さえてくれる内容の文章がほしい。『子猫』という映画を理解し反応してくれるのは、いわゆるベタな韓国映画ファンの人ではなく、どちらかといえばヨーロッパ映画が好きな人の方ではないかと考えていた。私は村田さんにお願いする。「全州映画祭に参加された蓮實重彦さんが『子猫』を誉めているという記事が韓国の雑誌に載っていたそうです。ぜひ、蓮實先生に一筆お願いして欲しい」 「もし書いてくださったら最高ですよね。あたってみます」 そして村田さんからメールが来た。「蓮實先生が書いてくださることになりました」 万歳! 権威づけのためではなく、映画のために先生の言葉が欲しかったのだ。

 プレスの資料作りには、韓国語関係はいつもお世話になっているアジア映画社の兪澄子さんと、〈第2回日韓映画バトル〉で通訳をお願いした世良砂湖さん、英語関係は竹中淳子さんのお世話になった。そして cinemakorea.org も参考にさせていただいた。海外の映画評の翻訳を読んでまた狂喜した。例えば "The San Francisco Examiner" の Jeffrey.M.Anderson 氏。〈今週ベイ・エリアの劇場で2本の韓国映画が封切られる。1本目『おばあちゃんの家』は、耐え難い(intolerable) 映画だが、幸運なことに2本目の『子猫をお願い』は、大人になる過程を描いた素晴らしい映画である〉なんて書いているのだから。判る人には判るンや!(『おばあちゃんの家』が好きな方、ごめんなさい。映画のたちが違うということです)

 こうして東京では6月、ユーロスペースで、大阪は7月、動物園前シネフェスタ4(こ ちらも『ほえる犬は噛まない』公開館)と決まった。そして、全国で順次ロードショーされていく。


『子猫をお願い』(画像提供:オフィス・エイト)

 なんでまた『子猫』なのか。それは、私にとって初めて出会った韓国産フェミニズム映画だからだ。フェミニズムというと、狭く解釈されそうだが、あえてそういいたいのである。私のいう〈フェミニズム映画〉とは、なによりもまず、描かれている女性像が等身大であるという点である。ほかの韓国映画に見るヒロインは誇張されすぎている。なんでもっと自然体のヒロインたちが出てこないんだろうと思っていたから、『子猫』は本当に新鮮な驚きだった。

 女性監督作品だから自然に女性を描けるのかというと、決してそうではない。チョン監督は、登場する女の子たちに決して甘くはない。自分が納得できる女性像を描きたいと思っていたそうである。だからちょっとヒリヒリ痛いところもついてくる。社会に出て現実とぶつかった時、挫折を味わう時、友情がきれいな形で救ってくれるわけではない。そのデリケートなブレ方。つまるところ、それがこの映画のセンスのよさなのだが、これは言葉で言い表しがたい。ともかく見てほしい。これまでの韓国映画とどこが違うのか。もちろん、合わない人がいるのは百も承知だが、ぜひ、その差異も受け入れてくれる観客になってもらいたい。韓国映画の多様性を広げるためにも、『子猫』が日本で可愛がられますように!


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