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アジアフォーカス・福岡映画祭2003 リポート
『泣かないで』

Reported by 井上康子
2003/10/17受領



『泣かないで』 2001年/原題:だいじょうぶ、泣かないで
 監督・脚本:ミン・ビョンフン『蜂の飛行』共同監督)
 主演:ムハマド・ラヒーモフ/ムハマド
     ディアック・ラフマードフ/祖父
     ディリバル・イクロモーバ/母


<ストーリー>

 舞台はロシアのとある村。都会でギャンブルによる借金を作ってしまったムハマドは故郷の田舎に戻ってくる。彼は借金返済のため実家の家と土地を売らせようともくろんでいるが、祖父は相手にしない。祖父や母は彼にこの地で家族と共に生活することを求めるが、彼はもはや都会でしか生活できなくなっている。まもなく実家にも警察の手が伸びたのを悟ると、彼は黙って立ち去っていく。


<鑑賞記>

 画面を観ているだけのこちらにも砂埃が舞ってくるような錯覚さえ起きてくる、タジキスタンの乾いた風土に、ミン監督の感傷を排除した演出が重なり、この映画独特の雰囲気が生まれています。

 圧巻はムハマドの祖父が、ムハマドの父の遺志を受け継いで、山の上に祖父が一つずつ砕いていった岩を積み上げていって、作り続けているムハマドのための家(この撮影のために作られたのでしょうか。いずれにしろたいへんな作業だったと思います)。この家の材料になっている岩は、「昔、仔ラクダから引き離された母ラクダが、仔ラクダのために自分がどこへ連れて行かれたかわかるように乳を垂らしながら移動して行ったが、その乳が滲み込んだ岩なのだ」と祖父はムハマドに語りかけ、祖父のムハマドに対する愛情を示そうとします。

 しかし、この岩で作られた家のような重みを持ってこの土地に固く根を張った暮らしをしている祖父と、ギャンブルのためにバイオリンを失い、空っぽになったケースを抱えて追っ手から逃れているムハマドの間には、大きな隔たりがあることが明白で、そのことが観る者の胸を打ちます。


<ミン・ビョンフン監督について>

 なぜ韓国人の監督がわざわざタジキスタンで映画を撮ったんだろう?と素朴な疑問を抱いていたのですが、映画を観るとタジキスタンで撮る必然性があったのだと感じられました。また、公式カタログ等によると、監督(1969年生まれの若い監督)はロシア国立映画学校(VGIK)に留学し、映画製作を学び、いくつかの短編を経て、卒業製作作品として、タジキスタン出身の同級生ジャムシェド・ウスモノフと『蜂の飛行』を共同監督していますが、この映画もタジキスタンで撮影されており、タジキスタンとの関わりがすでにあったことも伺えました。


ミン・ビョンフン監督

 私はティーチ・インに参加することができなかったため、ゲストとして来日されていたミン監督の肉声をお伝えすることができませんので、代わりに、映画祭公式カタログ126ページに掲載されているミン監督の「DIRECTORS' MESSAGE」をここに転載させていただきます。

「私にとって重要なドラマ的要素は、傷と癒し、救援と絶望、疎通と断絶、魂と生命、そして家族である。映画を作ることは、いつもしんどい。そしていつも寂しい。じつは、これらの理由で私は映画を作っているのだ。」



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