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映画『GO』、舞台『東亜悲恋』に見る在日韓国・朝鮮人

Text by 月原万貴子(月子)
2001/11/22受領



 釜山映画祭でも好評を得た『GO』が11月23日より韓国内で一般公開された。製作・配給の東映が当初目標としていた日韓同時公開はかなわなかったが、日本での公開日10月20日からわずか1ヶ月の時差での公開を実現させた。

 これはもちろん『GO』が韓国のSTARMAX社から出資を受けていることや、在日韓国人を主人公としていることが大きく関係しているとは思うが、なにより作品として面白いことが評価された結果だろう。

 そう『GO』は面白い。私が今年見た48本の日本映画の中で一番面白いと思う。その証拠に(?)米アカデミー賞の外国語映画部門への出品も決まった。昨年が『雨あがる』、一昨年が『鉄道員<ぽっぽや>』だったことを考えると、一気に若返ったという印象だ。

 第123回直木賞を受賞した金城一紀の原作自体が傑作であるのはもちろんだが、なんといっても今回の映画化での貢献者は、脚本を担当した宮藤官九郎だろう。原作に忠実でありながら、独自の言語感覚で、リアルな世界を作り出した。これまでどちらかと言えば繊細で、内へ内へと掘り下げていくタイプの演出だった行定勲監督が、ここでは一転、飄々としたユーモアと、ちょっとやそっとじゃ動じないバイタリティを感じさせるのも、脚本の影響が大きいと思われる。

 そして、そんなスタッフ達の期待に充分に答えた主演の窪塚洋介が素晴らしい! しなやかでしたたかなあの面構えで、「広い世界を見るのだっ!」とピース・サインをする主人公・杉原に、国籍も民族も差別も蹴散らしていける逞しさが感じられるのだ。窪塚本人にとってもこの作品は大きなターニング・ポイントになったことと思う。

 『GO』は今までの在日韓国・朝鮮人をテーマにした映画にありがちだった必要以上に「真面目に取り組まなくてはいけない」という呪縛から逃れ、あくまでも男子高校生の友情と恋愛の物語だという姿勢を貫くことで、かえって「教科書問題って何?」といった今どきの若者達にも考えるチャンスを与えたのではないだろうか。

 ちょうど『GO』の日本公開と同時期に上演された舞台『東亜悲恋(とうあひれん)』も、日韓の高校生の友情と恋愛を描いたもので、こちらはV6の井ノ原快彦とS.E.Sのシュー、ジャニーズJrの横山裕という日韓トップ・アイドルの共演が話題を呼んだ。

 野球部に所属する、歴史にも政治にも興味のないごく普通の高校生・井原(井ノ原)が、在日三世の友人・岩本(横山)とともに甲子園を目指す中で友情を育て、彼の妹・麻利子(シュー)との恋愛を通して、日韓問題に関心を寄せていくといった内容だ。

 「両親の帰化後に生まれたので国籍は日本だが、生活環境は在日三世そのものだった」という劇団ウォーキングスタッフの和田憲明の戯曲には、差別に関する生々しい台詞が飛び交う。なかでも在日三世・岩本の「差別されてもどうってことないって、いつもは言える。でも進学だの就職だのの節目はキツイ。だから俺は実力がものをいう野球界で上を目指す」という言葉は胸に響いた。

 ジャニーズ目当てでやってくる少女達に「ちょっとでいいから考えてみて」と訴えているような作品なので、正直言って甘さや粗さも目立つ。それでもこういった試みが実を結ぶことを信じたい。

 そう、過去を乗り越えて新しい関係を築くには若い力が必要なのだ。


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