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黒水仙


画像提供:CINEMA SERVICE


題名
英題
 
ハングル
黒水仙
The Last Witness
Black Narcissus
흑수선
製作年 2001
時間 120(釜山国際映画祭版)
106(韓国公開版)
103(日本公開版)
105(日本版Video&DVD)
製作
投資・配給
共同投資
テウォン・エンターテイメント
シネマ・サービス
mvpc
監督 ペ・チャンホ
出演 イ・ジョンジェ
イ・ミヨン
アン・ソンギ
チョン・ジュノ
イ・ギヨン
イ・デヨン
キム・スロ(特別出演)
カン・ソンジン(特別出演)
日本版
Video
DVD
字幕版Video
吹替版Video
DVD

 朝鮮戦争当時、巨済島捕虜収容所で形成された人間関係を背景として、現代において発生する殺人事件を描いたミステリー・アクション刑事ドラマ、と思わせつつ実はラブ・ストーリー。朝鮮戦争後、半世紀が過ぎても今なお残る傷痕を歴史的な悲劇と悲恋を織り交ぜながら描く。題名の「黒水仙」は朝鮮戦争当時、パルチザン偽装活動家として活躍した人物の暗号名。

 ある日、漢江に死体が一体が浮かび上がる。現場から発見されたのは、名刺の小さなカケラと金属メガネのフレーム。やがて、死体はヤン・ダルス(イ・ギヨン)という老人のものであることが分かり、事件を担当することになったオ刑事(イ・ジョンジェ)は、彼の部屋から二枚の写真を発見する。そして写真が写された場所=巨済島オクチョン小学校を訪れたオ刑事は、そこで南労党(南朝鮮労働党)幹部の娘で、巨済島捕虜収容所に収容されているパルチザンや人民軍の脱出を助ける活動をしていたソン・ジヘ(イ・ミヨン)の日記を発見。やがて、朝鮮戦争当時ヤン・ダルスは脱出捕虜の検挙をしており、ある日突然、捕虜となったソン・ジヘと共に消えたこと、ソン・ジヘを愛していたファン・ソク(アン・ソンギ)は、自らの信念を曲げず長期囚として牢獄で50年あまりの刑に服した後、最近出獄したこと、人民軍隊長ハン・ドンジュ(チョン・ジュノ)がソン・ジヘと一緒に脱出した後、銃殺されたことなどが分かる。そして、朝鮮戦争当時ヤン・ダルスと共に捕虜の検挙をしていたキム・ジュンヨプが殺される第二の殺人事件が発生。ヤン・ダルスの殺人事件現場で発見された金属メガネのフレームは日本人事業家前田のものであることが分かり、オ刑事は日本に飛ぶ。

 巨済島は、釜山から西南方向、キムパプで有名な忠武からは東方に位置する島。本土とは橋で繋がっているため、船でなくとも渡ることができる。この島には朝鮮戦争当時、捕虜収容所が建設され、北のパルチザンや人民軍捕虜を収容していた。なお、巨済島捕虜収容所は『JSA』でもソフィーの父親が収容されていた場所として映像が出てくる。

 イ・ジョンジェ、イ・ミヨン、アン・ソンギ、チョン・ジュノと豪華キャスティングが話題に。主役はイ・ジョンジェだが、良い所は最後に御大のアン・ソンギが全部持っていってしまう。本作でつたない日本語を披露しているチョン・ジュノは、テレビ・ドラマ出身タレントだが、本作以降映画に出ずっぱりとなり、一躍韓国映画界の顔的存在となる。イ・ミヨンは20代から60代までのソン・ジヘを演じている。彼女は、この映画で1億5千万ウォン+ランニング・ギャランティーという最高待遇でキャスティングされた。

 製作費40億ウォンの大作で、5億ウォンを投入して舞台となった巨済市に捕虜収容所のセットを製作。一部、宮崎県でもロケが行われている。ただし、宮崎県ロケ・パートでは、芸者が出たり、地震が発生したりと、韓国人が日本に対して持っているイメージがモロに出ており、まるで観光映画のようとの評も。

 原作は、推理作家キム・ソンジョン(金聖鐘)の小説『最後の証人』(1974)。なお、この『最後の証人』は、1980年にイ・ドゥヨン監督により小説と同名で既に映画化されている。

 監督・脚本はペ・チャンホ。製作はチョン・テウォン(鄭泰元)。製作投資はカン・ウソク。撮影はキム・ユンス。照明はイ・スング。編集はキム・ヒョン。音楽はチェ・ギョンシク。美術はオ・サンマン。武術監督はチョン・ドゥホン。

 映画音楽としてシン・スンフン、チョン・イングォン、イ・スヨン、J等の歌が収録されている。

 韓国では公開後に、アン・ソンギが、半世紀にわたる愛の果てを目の当たりにしたラスト・シーンで絶叫する台詞「手を触れるな」が若者の間で流行語になった。

 第6回(2001)釜山国際映画祭オープニング上映作品。第4回(2002)Udine Far East Film Festival、第4回(2002)インド・シネパン映画祭コンペ部門、第25回(2002)アジアン−アメリカン国際映画祭、第26回(2002)モントリオール国際映画祭ワールドシネマ部門、第6回みちのく国際ミステリー映画祭2002 in 盛岡招待作品。

 日本では Korea SuperExpo 2002 にて初上映。

 第21回(2001)映画評論家協会賞音楽賞(チェ・ギョンシク)、第9回(2001)春史羅雲奎映画芸術祭照明賞(イ・スング)、第39回(2002)大鐘賞撮影賞(キム・ユンス)・照明賞(イ・スング)・美術賞(オ・サンマン)受賞作品。

初版:2001
最新版:2002/9/11


■ ペ・チャンホ監督インタビュー

 みちのく国際ミステリー映画祭2002 in 盛岡で来日されたペ・チャンホ監督の独占インタビューはこちら



投稿者:大西康雄さん 投稿日:2002/6/23 16:37:30

 『シュリ』同様、多面的な要素を兼ね備えたミステリー・アクション・ドラマ。

 ミステリー・ドラマであると同時に、刑事ドラマとしての側面もあり、南朝鮮労働党の蜂起という歴史的悲劇を伝える歴史ドラマでもあり、悲劇的な純愛ラブ・ストーリーでもあるという、大変欲張った重層的な狙いを持っている。

 しかし、それらの狙いが全て上手くいっているかというと疑問。悲恋物語としては成功しているが、それ以外の伏線は詰めが甘いというのが私の個人的な見解。

 映画の冒頭で『シュリ』(国際版)のように歴史的背景の説明が入り、歴史的悲劇を描く映画であることが強調される。しかし、同じ歴史的題材を扱ったイム・グォンテク監督の『太白山脈』と比較すると、思想的な背景・動機の説明が不十分で、その結果労働党参加者の悲劇が、大義に殉じた悲劇というよりも、ソク(アン・ソンギ)の個人的な騎士道精神の悲劇に矮小化されてしまっている。そもそもソク自体充分に思想的理解があって労働党に参加したのではないとされ、それ以外の残党の行動も単なる悪党の話になっている。

 オ刑事(イ・ジョンジェ)に関しても、当初「問題を起こさないように、もう銃を使うな」と上司から申し渡される場面があり、無軌道刑事の活躍ストーリーという伏線かな?と期待していると、そうでもない。ミステリーという点では(ネタバレしないよう大雑把に記すが)オ刑事の追及を受け日本に逃れていたある関係者が自殺したのも、自決するほどの動機があるとも思えない。全般的に登場人物の心理・動機や伏線の詰めが甘い様に思う。

 ただし、騎士道精神に殉ずるアン・ソンギの役回りは正にはまり役で、普遍的な悲恋の物語としては日本の観客を感動させる力はある。その意味で、同ジャンルの良く計算されて作られているが国内市場向けの色彩の強いカン・ウソク監督の『公共の敵』とは正に対照的。

 また日本の宮崎ロケシーンがでてくるが、ここに出てくる日本の描き方が、最近の香港映画の日本ロケシーンと全く同感覚。外国観光地紹介的扱い方であれば似通ってしまうのかもしれないが、やはり最近の香港映画を通して日本を理解しているのでは? ペ・チャンホ監督は前作『情』で、主に「日帝時代」を扱っているにもかかわらず全く日本の植民地支配の影が出てこなかったので、元々良くも悪くも「日本」への明確なイメージを持っていないのだろう。本作で敢えて日本を出した理由を監督に聞いてみたい。

(Korea SuperExpo 2002で鑑賞)

 ちなみに2002年5月に韓国でMetro DVDより英語字幕つきDVD(リージョンコード=3[公称])が刊行されているが、現物未確認。

【評価:★★★】



投稿者:カツヲうどんさん 投稿日:2003/6/21 21:41:13

 2003年の6月、私はこの作品を、東京で初めて観た。韓国で上映された当時は、あまり興行成績が芳しくなかったために観る機会を逸してしまったし、釜山国際映画祭その他で観た日本人からも、何一つよい評判が聞こえてこなかったので、VTRやDVDが出ても観る気が起こらなかったのである。

 確かに、映画自体の出来映え、ミステリーとしての完成度、どちらも決して優れたものとはいえないし、大作であることを考慮すると、なおさら凡作以下かもしれない。だから批評対象としてはどうしても辛くならざるを得ない事は事実だし、意欲作であっても今の韓国ではあまり歓迎されないような映画である事も明白だ。

 だが、そんな予想を裏切って、この『黒水仙』は、私の心の琴線に触れたのである。それはきっと、ここで描かれた半世紀に渡る悲劇が、かつての日本映画で綴られた現代史への嘆きと共通する因子を幾つも含んでいたからだろうし、私の人生における韓国映画との付き合いが、ペ・チャンホやアン・ソンギとの出会いから始まったからなのだろう。韓国映画の原体験が1980年代の作品群にある自分にとっては、色々な思い出が重なってしまう複雑な映画なのである。

 この作品を観てまず思ったのは、監督のペ・チャンホが、やっぱり映像派であったという事である。特に全編に渡る凝ったカットの数々、特に移動撮影の多用は、この監督がエンターテイメント志向の強い監督であった事を改めて気づかせてくれる部分だ。

 ペ・チャンホの出現は、1980年代という時代であったため、日本ではイ・ジャンホと同列に語られて、必然的に「社会派」「作家監督」というレッテルを貼られてしまい、その後、半ば忘れ去られてしまったが、この事は実は悲劇だったのではないだろうか。彼の持つバタ臭いセンスは、やはり当時の韓国では出現が早すぎたのであり、改めて昔のフィルターを外したペ・チャンホの再評価が大いに望まれるところだ。

 次に、アン・ソンギの素晴らしい存在感が久々の感涙ものだった、という事である。実直で誠実なゆえ、半世紀に渡り汚名を被って生きてこなくてはならなかったソクの姿は、出番こそ少ないが、訴えるべきテーマをすべて内包しているといっても過言ではない。アン・ソンギでなければ、ここまで演じえなかっただろう。

 第三に感じたのは、なぜソクたちが、こういう残酷な運命に翻弄されなければならなかったのか、という理由だ。朝鮮戦争の前後に行われた国内左派と右派の闘いは、日本ではまだまだ語られる事が少ない歴史の断面だが、その要因は日本の近・現代史と大きく重なるものであり、決して無関係な異国のエピソードではないと思うのである。そう考えると、その末端に連なる日本人の自分もまた、全くの他者とは思えなくなってくるのだ。

 「平等」やら「自由」やらを無責任に主張できるのは、実は豊かな社会だけに許される贅沢である、という事実を、この映画を観ている間ずっと考え続けてしまった。

 イ・ジョンジェがちっとも活躍しないため、彼のファンには不満も多いだろうが、彼は戦後生まれの人間であり、物語においては第三者でしかないのだ。だから、彼の演じる刑事は最初から最後まで映画の中心と成りえない事は当然なのである。

 『黒水仙』は傑作でも秀作でもないが、チョン・ジヨン監督の『南部軍 愛と幻想のパルチザン』と並んで、韓国に関心のある全ての日本人に観てほしい作品だし、そういう方々に大いに議論をしていただきたい作品である。

【評価:★★★】



投稿者:たびこさん 投稿日:2003/11/3 10:31:05

 過去の悲劇を歴史的ドラマとしてたどっていくのではなく、殺人事件の謎を現代の刑事が追うことによって明らかにされていく・・・ その手法があまり成功しているとは思えないのが残念です。

 オ刑事の人となりが良く分からないまま話が展開していき、刑事ドラマとしては魅力が感じられないし、この時代に朝鮮半島で起きた出来事について私が勉強不足だからかもしれませんが、思想的な背景が分かりづらく、彼らの置かれている状況が今ひとつ伝わってこない気がしました。常に頭の中で補足しなければならないような・・・

 それでもこれ以上ないくらいお互いのことを思いながらも引き裂かれる二人には、本当に胸がしめつけられました。兄妹ではない親しい男性を「オッパ」と呼んだりすることは知っていましたが、ジヘがソクをそう呼ぶ度に、お互いが自分にとって特別な存在であることを、伝え合っているかのように感じられました。

【評価:★★★】



投稿者:むらさん 投稿日:2003/12/7 23:31:17

 展開がいまひとつしっくりこなかった感じがしました。

 オ刑事と過去の悲劇が結びつくはずなのに、なんだか映画を二本見た感じがします。過去の悲劇には感情移入してしまいましたが、現代のほうは・・・

 それにいくら刑事といっても、休暇扱いで日本に来て銃をぶっぱなしておいて、そんなに簡単に帰れるものなのでしょうか? 私がよく知らないだけかもしれませんが。

【評価:★★】


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