金承[金玉](キム・スンオク)の短編小説『霧津紀行』を映画化した作品で、脚本も原作者が担当した。メロドラマではあるが、1960年代を背景に出世のためなら何でもする現代人のモラル低下の問題を提起している。
社会的な成功のために製薬会社会長の娘と結婚したユン・ギジュン(シン・ソンイル)は、ある日故郷の霧津を訪問する。そこで出会った中学校の音楽教師ハ・インスク(ユン・ジョンヒ)と密会を重ねるギジュン。しかし、ソウルの妻からの連絡を受けた彼はインスクとの間には何事も無かったかのように霧津を後にするのだった。
いかにも小説家が脚本を担当した作品らしく、ナレーションで非常に長い台詞が入るシーンが多く、睡魔との戦いになる。回想シーンの意味付けも少々分かりにくい。全般的に小説の映画化には成功しているとはいえないが、素材は悪くないので、現代風にリメークしたらおおばけする。そんな可能性を感じる作品。題名にもなっている「霧」とけだるいサックスの音色が特徴的。
第6回(1967)大鐘賞監督賞・編集賞・新人賞(ユン・ジョンヒ)、第4回韓国演劇映画芸術賞新人賞(ユン・ジョンヒ)、第11回釜日映画賞監督賞・新人賞(ユン・ジョンヒ)、第14回(1967)アジア映画祭作品賞・監督賞受賞作品。
第7回(2002)釜山国際映画祭特別企画プログラム「キム・スヨン回顧展」部門招待作品。
初版:1998/6/7
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