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イエローヘア2


題名
英題
 
原題
ハングル
イエローヘア2
Yellow Hair 2
Running Blue
黄色い髪2
노랑머리2
製作年 2001
時間 102
製作
提供
フィクションバンク
シメックス・コミュニケーションズ
監督 キム・ユミン
出演 ハリス
シニ
モ・ホンジン
ユン・チャン
ソンアン様(特別出演)
日本版
Video
DVD
なし

 1999年に過激なセックスシーンが話題となった『イエローヘア』の第二弾。監督と脚本は前作と同じくキム・ユミン。今回は、性転換したタレント、ハリスを主演に起用して話題に。いわれなき差別に悩む性転換者、芸能人にはなりたいけれど今はコンビニでバイトするしかない女、そしてデジタル・ビデオでドキュメンタリーを撮っている男子学生の逃避行を描く。

 ある晩、コンビニで店主から住民登録証を見せるように言われたJ(ハリス)は、カッとなってその店主を瓶で殴ってしまう。そして、はずみで真後ろに倒れた店主は後頭部をぶつけて即死。レジでバイトをしていたY(シニ)と、偶然そこに居合わせたR(モ・ホンジン)は凍り付いてしまう。
 時は遡り、三人が偶然出会うまでの生い立ちが語られる。
 Yの夢は人気芸能人になってお金をたっぷり儲ける事。そんな彼女には三流のマネージャーがついているが、そいつの目的はずばりYの体。Yは、彼女とのセックス・ビデオをたてに肉体関係を迫ってくるマネージャーとの腐れ縁をなかなか切ることができず、コンビニでバイトをする毎日だ。
 Jは性転換をして女になった。オートバイを乗り回し、昼は宅配会社の社員として、夜はクラブで歌手として働いている。彼女は二軍の野球選手M(ユン・チャン)と愛し合うが世間はそれを認めてくれない。そしてある日、両親が家に押しかけ彼女は激しく侮辱される。行き場のない憤りを感じるJ・・・
 Rはビデオでドキュメンタリーの卒業作品を撮っている映画学科の学生。世の中で起こる出来事をしゃにむにビデオにおさめている。そしてある日、コンビニで起きた店主の事故死を、偶然ビデオに撮ってしまう。
 それまで何の縁もなかったのに、偶然事件現場に居合わせた三人。そして、殺人犯になってしまうことを恐れた三人の逃避行が始まる。

 性転換した後、化粧品のCMで注目を浴びたタレントのハリス(1975年生まれ)の映画デビュー作。彼女は男性から性転換したため「トランス・ジェンダー芸能人一号」と呼ばれている。

 韓国初の性転換タレントとしてテレビ番組で引っ張りだこ、一躍時の人となったハリスが主演、ヌードも披露し、劇中で歌も歌うということで、低予算映画にしては公開前から大変な話題となったが、興行的には振るわなかった。ちなみにハリスがこの映画にキャスティングされたのは、彼女が芸能界デビューする前のこと。監督は、ハリスに会って彼女の存在にインスパイアされ、既にキャスティングが進行中だった本作のシナリオを全面改訂したうえで製作したという。

 この映画の公開と前後して、ハリスは自伝的フォト・エッセー集『イブになったアダム』を出版。自らの人生や、性転換にまつわる苦労話、芸能界進出に至った経緯などを告白している。

 ハリスは『イエローヘア2』公開後に歌手デビューしているが、劇中でも歌を披露。彼女の歌声は『イエローヘア2』のサントラにも収録されている。

 韓国では全国民が身分証明書である「住民登録証」の携帯を義務付けられているが、この住民登録証に記載された住民登録番号には男性を「1」、女性を「2」と、性別を数字で区別している項目がある。そして、この数字は変更不可。従って、性転換して身も心も女性になったJも持っている住民登録証を見れば、元男性ということが簡単にばれてしまい、何かと差別的な発言を浴びせ掛けられることとなる。この映画では、Jが何度も何度も住民登録証の提示を求められ、その度に嫌な顔をし、かつ冒頭のシーンでは(親に侮辱された直後ということもあり)ついカッとなってコンビニの店主の頭を瓶で殴ってしまうのには、こういった背景がある。ちなみに、『イエローヘア2』の公開直後に行われたある世論調査によると、韓国でも性転換者の住民登録証番号の変更を支持する人は過半数を越えているとか。

 "Yahoo! KOREA" の「ハリスのホームページ一覧表」(韓国語)はこちら

初版:2001/7
最新版:2001/9/20


【ソチョンの鑑賞ノート】

2001年9月19日執筆

 2001年7月に韓国の映画館で鑑賞。

 チラシを見ると、「韓国映画が一度も表現できなかった破格」、「Free! I am free by myself」といった文字が並んでいて、またまたセックスをテーマにしたB級エロ映画かと思いながら映画館に入ったのですが、そうではなかったです。

 性転換者というセクシャル・マイノリティーを描いているほかにも、コンビニ店長が女子アルバイターの着替えを盗撮、マネージャーがタレントとのセックス・シーンをビデオに収めて、それを恐喝ネタにするなど、ここ一年ほどの間に韓国で実際に発生した社会問題を抱合しているのですが、それらがデジタル・ビデオによる撮影が生み出すザラ付き感のある映像でスクリーンに投影されることによって、妙にドキュメンタリーチックで、リアルな感覚を生み出すことに成功しています。

 また、オートバイ、デジタル・ビデオ、コンビニといった今の若い世代の生き様を象徴するかのような小道具がちりばめられているのも効果的。前作『イエローヘア』は今ひとつストーリーや設定に納得しかねる部分があったのですが、この『イエローヘア2』は極々一部ではあろうものの、劇中の主人公達のような若者は実際に存在するであろう事をかなり説得的に描いています。そして、彼等をドロップアウトさせてしまう元凶である社会的慣習、権威主義的な父親、権力を振りかざす警察、マネージャー、店長・・・ 彼等の存在は外国人の私にも「そうだ、そうだ、こういう奴いるいる!」と納得させるに十分なリアリティーを持っています。

 ソーシャル・マイノリティーやセクシャル・マイノリティーを描くという意味では『LIES/嘘』に一脈通じる作品といえます。

 日本の日活ロマンポルノは、一定量のセックス・シーンを盛り込みさえすればあとは作家の自由に撮影ができたとよく言われますが、『イエローヘア2』は「エロ映画」のレッテルを貼られてもしかたない程度にセックス・シーンを盛り込み(韓国映画のセックスシーンは単調な正常位がほとんどですが、この映画は日本のアダルト・ビデオを参考にしているのか、体位もバラエティに富んでいてなかなかでした)、話題の性転換者ハリスを起用することによって、一定の商業性を確保した上で、あとは監督が描きたかったものを低予算で可能な限り描いているように見えます。有力な投資・配給会社がバックに付かないと製作費の回収もままならない昨今の韓国映画界においては、非力な製作会社や監督が次回作を作れる程度に作品をヒットさせるためには、こういう「日活ロマンポルノ」方式で映画を作るのも、一つの選択肢なのかもしません。

 しかしながら、この作品、公開前の話題性は十二分だったのですが(その多くはハリス人気に負っている)、興行的には残念な結果に終わってしまいました。世の中、なかなか計算どおりにいかないものですね。まさしくこの映画の内容のように。



投稿者:大西康雄さん 投稿日:2002/3/5 00:54:27

 この映画を見てまず連想したのは、『俺たちに明日はない』(アーサー・ペン監督,1967年)、『イージーライダー』(デニス・ホッパー監督,1969年)、そして『テルマ&ルイーズ』(リドリー・スコット監督,1991年)、といったアメリカン・ニューシネマやその影響を受けた作品だ。『イエローヘア2』ではハリスがオートバイで逃走するが、これも『イージーライダー』を想起させる。アメリカン・ニューシネマの韓国版を狙っているのでは? 保守的な家父長的父権社会への反抗というテーマも共通している。

 因みに家父長的父権をテーマとした韓国系映画としては、『ヒューマニスト』(2001)や、在米僑胞監督が在米僑胞を描いた初の本格劇映画として知られる『Yellow』(Chris Chan Lee監督,1998年,アメリカ映画,日本未公開)などが挙げられるが、このテーマは儒教社会たる朝鮮民族に息づく普遍的テーマといえるだろう。

 ところで1960年代末のアメリカン・ニューシネマでは若者の大人達への反抗として、そして1991年の『テルマ&ルイーズ』では女性(フェミニズム)からの反抗として「家父長的父権社会への反抗」が描かれたのに対し、2001年にはこのテーマはどう描かれるべきか?という難問に対してキム・ユミン監督はトランスジェンダーという回答を持ってきた。これはうまい。まさに2000年代にあってはジェンダーやセクシュアリティの固定観念の軛(くびき)からの解放がこのテーマのシンボルとして語られるべきである。その意味で、キム・ユミン監督は先行諸作品の単なるエピゴーネンに陥ることなく21世紀のオリジナルな物語の再創造に成功している。ただこのメッセージが韓国社会で共感を持って広く受け止められるには、まだちょっと早いような気もする。

 本作品でもう一つ評価したいのは、トランスジェンダーに対してとても積極的な価値を与えていることだ。トランスジェンダーや同性愛者を描いた作品は、最近では『アタック・ナンバーハーフ』(タイ映画,ヨンヨット・トンコントーン監督,2000年)が日本でもヒットしているが、少なくとも今まで私が見た中で、『イエローヘア2』ほどトランスジェンダーに積極的な価値を与えた作品はない。既存の作品でも、トランスジェンダーが笑いの対象であったり、差別される対象であったり、不完全だと悩む存在であったり、でも大多数のヘテロセクシュアルな人と同じ人間として変わらないし、差別されたり嘲笑されるべきでなく一人の人間として尊重されるべきだ、こういったメッセージはあった。

 『イエローヘア2』にも、ハリス演ずる"J"の差別やアイデンティティへの揺れ動く思いが描かれ、上記のようなメッセージも含まれている。しかし何よりもトランスジェンダーたる"J"が、トランスジェンダーであるが故に女性としての魅力と男性として(?)の魅力を兼ね備えた、とても「モシ インヌン(カッコいい)」存在として描かれている点が評価できる。

 具体的には、女性としての容姿の美しさや優しさ、女性として認められない悩みを持ちながらも、一方ではオートバイを自在に乗りこなし、女性である"Y"に対し保護を与えるそんな逞しさ(男性的要因?)も併せ持った、女性以上に魅力的な存在として描かれている。それはいわゆる女性である"Y"との対比で明瞭に示されている。

 もちろん、これは実際に性転換して女性になったハリスの存在故に可能になったのだろうが、しかし、キム・ユミン監督はその魅力を社会的側面も含めてよく把握し、その魅力を120%引き出すことに成功している。不完全なものとして描かれがちな存在に対して、むしろ普通以上に積極的な価値を与えた監督の社会的視点の良さを高く評価したい。キム・ユミン監督の前作『イエローヘア』は「なんじゃこりゃ」と思ったが、こちらももう一度見直して再評価する必要がありそうだ。

 ただ映画としては、アメリカの先行作品に比べるとスピード感、ドライブ感が今ひとつなのと、ビデオ青年"R"の位置付けが中途半端に終わっている点が惜しい。この点が改善されれば評価としては五つ星なんだけど・・・ ともあれキワモノ趣味でなく見て欲しい作品。ハリスの魅力を堪能するだけでもその価値はある。

 なお本作は韓国版DVDで鑑賞した。DVDデータは以下の通り。

2001年9月、SREコーポレーションよりリリース。カタログ番号:なし。収録フォーマット:片面2層、スクイーズ16:9、ビスタ(1:1.85)サイズ。音声:韓国語、ドルビー5.1チャンネル。字幕:英語。収録時間:本編109分。リージョンコード:ALL。メーカー希望価格:19,800ウォン。

● トランスジェンダー
 性転換手術までは行わないが、解剖学上の性とは逆の性での社会生活を行っている、または行いたい人。広義には、これにトランスセクシャル(性転換者)やトランスベスタイト(異性装者)も含む。ここでは広義で「トランスジェンダー」という言葉を使用している。

【評価:★★★★】


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