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離れの客とお母さん


題名
英題
ハングル
離れの客とお母さん
The Guest and My Mother
사랑방 손님과 어머니
製作年 1961
時間 103
製作 申フィルム
監督 シン・サンオク
出演 チェ・ウニ
キム・ジンギュ
チョン・ヨンソン
ハン・ウンジン
シン・ヨンギュン
ホ・ジャンガン
ト・グンボン
キム・ヒガプ
日本版
Video
DVD
なし

 1960年代を代表する感動の名作であり、大ヒット作。朱耀燮(チュ・ヨソプ)の同名小説を映画化。

 夫と死別したチョンスク(チェ・ウニ)は娘のオッキ(チョン・ヨンソン)とつつましく暮らしていた。ある日、チョンスク宅の離れに亡き夫の友人である画家ソノ(キム・ジンギュ)が間借りすることになる。互いに惹かれあうチョンスクとソノだが、世間の目を気にして自分の気持ちを素直に表すことが出来ない。そんな二人の気持ちを知ってか知らでかオッキは二人の間を取り持とうとする。

 名子役チョン・ヨンソン演じるオッキのナレーションが可愛らしい。彼女は、『ノダジ』『帰らざる海兵』、そして長じては『小さなボール』(1981)などに出演している。チェ・ウニは、シン・サンオク監督の妻であり、当時の大スターであり、また女性監督でもある。日本で言えば田中絹代か? 主演男優は当時のミスター韓国映画とも言うべき存在であったキム・ジンギュ。彼は、1980年代のアン・ソンギ、そして現在のハン・ソッキュに相当する男優。この映画のサイド・ストーリーとも言えるもう一つの恋を演じる卵売りとお手伝いさんは、前者をキム・ヒガプが、後者をト・グンボンが演じている。キム・ヒガプは当時の超人気喜劇役者。『祝祭』で死んだお婆ちゃんを演じていたハン・ウンジンが、この映画ではチョンスクの姑を演じている。

 第1回(1962)大鐘賞監督賞(シン・サンオク)・脚本賞・特別奨励賞(チョン・ヨンソン)、第5回釜日映画賞作品賞・監督賞(シン・サンオク)・女優主演賞(チェ・ウニ)、第9回アジア映画祭最優秀作品賞受賞、第23回ヴェネチア国際映画祭、第6回(2001)釜山国際映画祭特別企画プログラム「シン・サンオク監督回顧展」招待作品。

初版:1998
最新版:2001/10/13



投稿者:SUMさん 投稿日:1999年2月23日(火)22時51分13秒

 暖かいあけっぴろげの良き人間関係と規律と抑制が絡み合って、繊細な主人公の気持ちの揺れが語られている。

 白黒時代の日本映画の名作が好きな人なら、60年代の韓国映画を見ないのは損であると断言できる。

【評価:★★★★】


【ソチョンの鑑賞ノート】

 1997年6月に開催された第6回NAGOYAアジア文化交流祭で鑑賞。

 終映後に国際交流基金アジアセンターの石坂健治氏のトークあり。内容は、1.『離れの客とお母さん』の解説、2.監督のシン・サンオク論、3.当時の韓国における政治状況と韓国映画の盛衰、4.アジアにおけるこの映画の位置づけ、など。

 石坂さんの言によると、「この映画は一言で言うと、『失楽園』しなかった人たちの話です」。どっと沸く会場。『失楽園』は映画も小説も未見ですけど話題作ですから意味は分かります。淡い恋心をお互いに抱く未亡人と画家。が、伝統的な儒教的倫理感にとらわれて、ついには結ばれることなく汽車に乗って去っていく画家。見送る未亡人。あぁ、哀しい。なんて哀しい物語なの。昔ながらの儒教観念の犠牲になった哀れな女性がまたひとり・・・

 並みの韓国映画だと、こうなるところだが、この映画は違う。不思議だが

美しい。なんて美しいのー

と思ってしまう。その原因は? 美しいチェ・ウニの演技? いやいや、確かに彼女が美しいのは認めるが、この映画に関する限り彼女はあまり演技がうまいほうじゃない。清楚さを全面にだした存在感だけでもってる感じ。じゃ、石坂氏をして「私はこれほど西洋音楽がマッチしているアジア映画を見たことがありません。」といわしめたショパンの調べか? うーん。マッチしてるはしてるけど、直接思いを伝えることができず、画家を想ってピアノをがっつんがっつん弾く未亡人(ちなみに、原作ではピアノではなくオルガンを弾く)。それを耳にして悶々とする画家。私などは、現代風に「きみきみ〜、そんなことしてても何も事態は進行しないよ〜ん」などと冷ややかに思ってしまう。子供のオッキの純粋さか? ふふん。うちの姪っ子ちゃんの方が数倍可愛いもんね(←おじばか^^;)。

「たまごー。たまごはいらんかねー。」

 やっぱり、これでしょう。主人公の二人とは違って、自由に自分の意志のままに恋愛し結ばれていく、たまご売りのおっちゃんと、お手伝いさん。この二人、原作の小説にはない設定だそうだが、こいつぁー、グッドですよ。シン・サンオク監督、あんたー、えらいっ! このたまご売り&お手伝いさんのコミカルな挿話がなかったら、絶対途中で寝てた自信がある。正反対の対照的な人物を登場させることにより、話がぐぐっと引き締まってる。お手伝いさんあっての未亡人。たまご売りのおっちゃんあっての画家。たまご売り(キム・ヒガプ)とお手伝いさん(ト・グンボン)を演じてる役者も愛敬のある顔と雰囲気でベリーグッド。

 初めてのデートにそなえて、目いっぱいのおしゃれをして、友達から壊れかけの時計を借りるたまご売り。僕も昔そんなようなことしたっけ(笑)。

 中ほどに印象的なシーンあり。友人の女性が営業する美容院を訪れるチェ・ウニ演じる未亡人。

チェ・ウニ「景気はどう?(←正確に記憶してませんけどこんなような台詞)」
友人「あなたみたいに、昔の髪型の人が多いからさっぱりよ。あなたも髪型変えなさいよ。」

 韓国語で髪型は「モリ・スタイル」というが「モリ」は「髪」じゃなくて「頭」だ。まるで「頭を変えなさいよ」→「考え方変えなさいよ」といっているよう。実は、お手伝いさんは、たまご売りとのデートの前にこの美容室で昔式の髪型をパーマにしていたのだ。うまい。この後、

友人「あなた、間借りしてる画家と怪しいんじゃないのー。」
チェ・ウニ「ちょっと、やだぁ〜。そんな訳ないじゃないのー。そういうあなたは、どうなのよ?」
友人「実はね、今度結婚してこの店たたむことにしたの。」
チェ・ウニ「あら、あなたも隅に置けないわね。」

などと会話は進むが、結局髪を切ることなく店を出るチェ・ウニ。ここで、もう後のストーリー展開は読めた。このシーンでチェ・ウニが髪を切ったらどうなったか? 『ローマの休日』のアン王女じゃないけど、その後の展開ずいぶん変わったんだろうなぁ。でも、アン王女も結局もとに戻ってしまったわけで、『離れの客とお母さん』のエンディングも変わることはないのかもしれない。

 でも、一度ショート・ヘアのチェ・ウニも見てみたいぞ、などと思いながら会場を後にするのであった。

1999年6月23日執筆
2000年11月26日加筆訂正


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