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アジアフォーカス・福岡国際映画祭2011リポート
『歓待』 杉野希妃インタビュー

Reported by 井上康子
2011/10/11掲載


はじめに

 アジアフォーカス・福岡国際映画祭2011(http://www.focus-on-asia.com/)で開催されたフォーラム「アジア映画で活躍する日本人」のパネリストであり、上映作『歓待』のゲストとして来福された杉野希妃さんは、シネマコリア2006で上映された『まぶしい一日』に主演されていた女優さんです。『まぶしい一日』のエピソード1『宝島』で、祖父が残した遺品を探すミエと一緒に済州島を旅したエイコを、デビュー作らしく元気いっぱいに演じていた…と言えば思い出される方も多いと思います。


フォーラム「アジア映画で活躍する日本人」の模様
(写真提供:アジアフォーカス・福岡国際映画祭事務局)

 杉野さんは、今では国際的に有名なインディーズ・プロデューサー兼女優として大きく成長され、10月22日から始まる東京国際映画祭(http://tiff-jp.net/)では「アジアの風」部門で特集「女優=プロデューサー杉野希妃 アジア・インディーズのミューズ」が組まれるなど、まさに“時の人”になられた感があります。東京国際映画祭では、女優デビュー作の『まぶしい一日』から、ワールドプレミアとなる最新作『大阪のうさぎたち』まで、関連作品も含めて6作品が上映されます。

 今回のインタビューでは、『まぶしい一日』からどのような経緯でプロデューサーになり、『歓待』を作るに至ったのか、イム・テヒョン監督の『大阪のうさぎたち』に主演・プロデュースされたいきさつ、そして、今後どのような作品を作っていきたいかについて伺いました。


杉野希妃インタビュー

■プロデューサーになった経緯

── 『まぶしい一日』は、若い監督たちが日韓関係をみずみずしい感覚で描いた作品で、大好きな映画です。杉野さんはエイコ役をかわいく元気に演じていて、いいなあと思って見ていましたが、その方が、あれよあれよという間に女優兼国際的なプロデューサーになられて、ものすごい飛躍だと思っています。どういう経緯でプロデューサーになられたか聞かせてください。

『まぶしい一日』に出演したのは、私の先祖は韓国人なのですが、その言語を話せないのがもどかしくてソウルの延世大学に語学留学していた時でした。私は日本人でもあり韓国人でもあり、二つの文化を持っているのはありがたいと思っていましたが、韓国に留学していた時に日本にいる時よりも自分のアイデンティティについて悩んだ時期がありました。そのとき日本と韓国のどちらにベースを置くのかすごく悩んだんです。そして、とことん悩んだ末にふっきれました。「私は日本人で韓国人でアジア人で世界人であるんだ」と。「その時、私が必要とされていて、私がいたいと思う場所にいればいいんだ」という結論にたどり着いたんです。


『まぶしい一日』での杉野さん

その後、日本の大学を休学していたので卒業のために帰国しました。日本に帰ってからは、役者として自立できるように自信をつけたいという思いがありました。製作にも興味はあるので、20年とか30年後くらいにやってみたいとは思っていましたが、すぐにとは考えていませんでした。そんな時に『クリアネス』という作品に出演させていただいて、この作品をプロデュースされた小野光輔さんと出会いました。小野さんが「マレーシアにヤスミン・アフマドというすごく素敵な監督がいて、彼女と日本・マレーシアの合作映画を撮ろうと思っている」とおっしゃったんです。私は、ちょうどその1年前に東京国際映画祭でヤスミン監督の『ムクシン』を見てすばらしい作品だと思いましたし、Q&Aで彼女の発言を聞いて、人間的にこんなに大きな人が世の中にいるんだと感動していたのです。それで、小野さんから彼女が監督する合作の話を聞いた瞬間に「製作をやらせてください」と言ってしまいました。日本で、彼女の作品が作られるというのはすばらしいことで、思わず言ってしまったのですが、振り返ってみると極めて正しい選択だったと思います。彼女はクランクインの2ヶ月前に他界してしまいましたが、彼女のおかげでアジアやヨーロッパの映画人とつながるきっかけが出来て、世界観が広がりました。『歓待』も彼女が作らせてくれたのかもしれないと感じています。

■深田監督との出会い

── 今回上映された『歓待』は普通の生活をしている人が不条理な状態に追い込まれていく中でも自然な会話を続けています。また、会話の中に人間関係の緊張感が表れていて、言葉の使い方が巧みだと感じました。不法滞在の外国人を大勢登場させていて、画面が無国籍状態になるのも面白かったし、作り手が社会的な視点を持っていることも感じられて、いい作品だと思いました。深田監督とこの作品を作られた経緯を教えてください。


『歓待』ティーチインでの深田監督と杉野さん
(写真提供:アジアフォーカス・福岡国際映画祭事務局)

彼の『東京人間喜劇』(http://human-comedy-in-tokyo.com/)という作品を見て、どういう監督か知りたくなったんです。人間関係を描いていて、ヒリヒリする感じがあり、また、ヌーヴェルヴァーグの影響も感じました。すぐに連絡して、お会いする約束をしたのですが、実際に会ったのはヤスミン監督が亡くなった3日後でした。彼は「こういう状況でたいへんですね」と気を遣ってくれたのですが、それから1ヶ月後には短編のシナリオを送ってくれたんです。それがすごく良かったので「一緒に長編にしましょう!」とお話しして、10ヶ月くらいシナリオの改稿を重ねていきました。それが『歓待』です。私も「このキャラクターはこうした方がいい」とか「義理の妹がいたら人間関係がギクシャクする」とかアイデアを出しています。

■東京国際映画祭ワールドプレミア『大阪のうさぎたち』

── 杉野さんは『まぶしい一日』で共演したヤン・イクチュン監督を、『マジック&ロス』で俳優として起用するなど、韓国映画人との交流も活発ですね。イム・テヒョン監督の『大阪のうさぎたち』に主演された経緯を教えてください。また、作品の内容についても少しご紹介ください。


『大阪のうさぎたち』(写真提供:和エンタテインメント)

イム・テヒョン監督とは、今年の大阪アジアン映画祭(http://www.oaff.jp/)で出会いました。彼も私も上映作のゲストとして招待されていたのです。映画祭期間中にゲストを対象にした大阪ツアーがあって、監督も私も参加したのですが、朝、ツアーの集合場所に行ったら、監督がカメラを持っていたんです。「なんでカメラ持っているの?」と聞いたら「今、映画撮っている」と言うので、「面白そう!」と言うと、「今から出て、じゃあ撮るよ!」と撮影が始まったんです(笑)。よく分からないままカメラを回されて、その日一日で撮ってしまいました。70分のSFです。3月11日の震災の翌日に撮ったのですが、内容的に少しかぶるところがあり、複雑な思いでした。撮影した3月12日は私の誕生日で、映画祭の皆さんがお祝いしてくれているシーンもドキュメンタリー・タッチで入っています。ですので、ドキュメンタリー・タッチのSF映画です。撮影後にプロデューサーも兼任することになり、日本の映画祭や海外の映画祭への出品アプローチなどを担当していて、色々意見を言わせてもらっています。

■今後の作品について

── 深田監督との次回作で、日本の民話をベースにした作品を撮る予定があると伺いました。この作品のことや、今後どのような作品を作りたいか、お聞かせください。


サインをする杉野さん
(写真提供:アジアフォーカス・福岡国際映画祭事務局)

岩手県やフランスの民話として残っていたり、グリム童話にも似たような話があり、それを元にしています。脚本はもう出来ていて、来年初めには撮影を開始したいと思っています。コメディも痛々しい作品も好きなので、今後は色々な作品に挑戦していきたいですね。合作の場合、言語の問題があるのですが、あまり難しく考えなくてもいいと思っています。言語がネックになって、一部の国としか合作できない、というのでは残念ですから。言葉で表すのは難しいのですが、「アジアが一つになる」「世の中がつながる」ような作品を作りたいと思っています。


取材後記

 インタビューには収録できませんでしたが、杉野さんの発言からは「言葉が違うときに、なんで理解できないの?とストレスをためるのではなく、違うことは仕方ないから、言語や文化や習慣を乗り越えるものを皆で見つけようという姿勢が必要」、「ひとつの作品を作るという意味では役者もプロデューサーも目的は一緒」、「役者とプロデューサーを両立することについては、プロデューサーをすることが役者をする上で勉強になっているし、人間として鍛えられている」、「役者も映画がどのように製作されるのか知るべき」など、「良い作品を作りたい、見てほしい」というエネルギーと真摯な態度を感じました。また、韓国に行ったことで『まぶしい一日』に出演し、そこからキム・ギドク監督の『絶対の愛』に出演し、『絶対の愛』をスクリーンで見ようと劇場に行った時に、偶然もらったチケットで『ムクシン』を見たことでヤスミン監督との出会いがあり、現在の自分があることについて、「出会いが出会いを呼ぶ」と言われたことも、たいへん印象深く残っています。『歓待』は、なんと世界の90もの映画祭から招待されているそうです。今後、アジアを軽く飛び越えて、世界へと飛躍されていくことを楽しみにしています。


杉野希妃フィルモグラフィー

『まぶしい一日』 ●主演(2006年2月韓国公開/2006年8月日本映画祭上映) http://cinemakorea.org/mabusii/
 日韓の若手映画人が製作したインディーズ作品『まぶしい一日』で女優デビュー。エピソード1『宝島』に主演し、ヤン・イクチュンと出会う。本作が上映された2005年の釜山国際映画祭でキム・ギドクと出会い、同監督の『絶対の愛』に出演。

『絶対の愛』 助演(2006年8月韓国公開/2007年3月日本公開)
 日本に帰国後、本作を見ようと2006年の東京国際映画祭に行き(*)、偶然ヤスミン・アフマド監督の『ムクシン』を鑑賞。
 (*) 実際には『絶対の愛』は東京国際映画祭では上映されておらず、杉野さんは勘違いで『絶対の愛』を見ようと東京国際映画祭に行かれたようです。

『クリアネス』 主演(2008年2月日本公開)
 篠原哲雄監督作。本作がプレミア上映された函館イルミナシオン映画祭(2007年)で、同行した小野光輔氏よりヤスミン・アフマド監督との合作プロジェクト『ワスレナグサ』の話を聞き、プロデューサーを志願。ヤスミンとは2008年に釜山国際映画祭の企画マーケット「Pusan Promotion Plan(本年より Asian Project Market と改称)」に参加。『ワスレナグサ』で釜山アワード(最優秀企画賞)を受賞する。この時、『マジック&ロス』のリム・カーワイ監督とも知り合う。

『ワスレナグサ』 出演&プロデュース(未完)
 ヤスミン・アフマド監督作。日本・マレーシア合作映画として製作予定だったが、クランクイン2ヶ月前の2009年7月25日にヤスミン急逝。その3日後に『歓待』の深田晃司監督と出会う。

『歓待』 ●主演&プロデュース(2011年4月日本公開) http://kantai-hospitalite.com/
 2010年東京国際映画祭「日本映画・ある視点」部門作品賞、2011年プチョン国際ファンタスティック映画祭NETPAC賞(最優秀アジア映画賞)を受賞した他、世界90ヶ所の映画祭からオファーが殺到する。インターナショナルプレミアとなったロッテルダム国際映画祭の上映を見に来た内田伸輝監督(『ふゆの獣』)とは現在『穏やかな日常』を企画開発中。

『少年少女』 出演&プロデュース(大阪アジアン映画祭2011上映作)
 『歓待』のメイキング・ドキュメンタリー。『歓待』のDVDに収録。

『マジック&ロス』 ●主演&プロデュース(2011年11月日本公開)
 監督はマレーシア出身のリム・カーワイ、主演は杉野ほか『息もできない』のヤン・イクチュンとキム・コッビという多国籍ムービー。ヤン・イクチュンとは『まぶしい一日』で共演、キム・コッビとは2009年の釜山国際映画祭で出会っている。ジャパン・プレミアは大阪アジアン映画祭2011。同映画祭でイム・テヒョン監督と出会い、その場で『大阪のうさぎたち』に出演。プロデュースも引き受ける。

『避けられる事』 ●主演&プロデュース(2011年11月日本公開) http://www.facebook.com/exhalation.film
 シンガポール生まれのマレーシア人エドモンド・ヨウ監督と共同製作した短編映画。主演は杉野と篠原ともえ。なお、エドモンド・ヨウとは、2008年の東京国際映画祭で知り合ったウー・ミンジン監督(『タイガー・ファクトリー』)の紹介で、2009年の釜山国際映画祭で出会っている。

『大阪のうさぎたち』 ●主演&プロデュース
 『奇跡の夏』『遭遇』のイム・テヒョン監督が、大阪アジアン映画祭2011で来日中に撮ったSF映画。共演は同じく『遭遇』で来日していたミン・ジュンホ。

※ ●印は、東京国際映画祭の特集「女優=プロデューサー杉野希妃 アジア・インディーズのミューズ」上映作。

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