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大阪アジアン映画祭2011リポート
『遭遇』ティーチイン

Reported by 加藤知恵
2011/6/13


 前作『奇跡の夏』が国内外で高く評価されたイム・テヒョン監督の長編第2作。撮影開始時に明確なスケジュールやシナリオは準備せず、監督とプロデューサーの「思いつき」と現場でのインスピレーションに従って、台詞や演出を決定していくという実験的な手法で撮られた。淡々と時間が流れ、極力作為的な演出を排除した俳優の自然な演技と、背景の風景の美しさが心地よい。

 過去に名声を馳せた、今は活動休止中の映画監督と、映画俳優を目指す受験生。彼らが一緒に映画を制作する中で、それぞれが抱えた心の傷が明らかになり、次第に癒されていくというストーリー。質問に対し、ゆっくりと言葉少なに回答する監督を見て、主義・主張よりも感覚で作品を作る人なのだということが良く分かった。


映画祭のメイン会場:ABCホール

『遭遇』ティーチイン

2011年3月13日
ABCホール
ゲスト:イム・テヒョン(監督)、ソン・ウジン(プロデューサー)、ミン・ジュンホ(男優)、ソン・イファン(男優)

── [司会]会場から質問をお受けする前に、監督にこの作品を作られた「思い」のようなものをお話していただければと思います。

[監督]最初に何か意図があって作り始めたわけではなく、プロデューサーと一緒に車で家に帰る途中「映画を作ろう」と話していたんです。「そうだね」という話になって、その一週間後から撮り始めました。作品が出来あがってから、こういうものを意図していたんだなと自分自身も分かりました(笑)。


『遭遇』

── [司会]その点では、映画の中の監督と重なりあうところがあるんですかね。

[監督]作業の進め方はほとんど同じです。土を掘るシーンは、私も何を撮ろうかアイデアが浮かばず、ただ穴を掘っていました。撮った後で、なぜ自分が穴を掘ったのか気付きました(笑)。

── [司会]そうすると主演のお二人も、土を掘っている監督を見ながら大変だったんじゃないですか。どうするんだろうと不安になりませんでしたか。

[ミン・ジュンホ]穴を掘ったのは私でしたよね。

[ソン・イファン]僕も一緒に掘りました。

[ミン]あの日は朝起きると、監督が美味しい食事をご馳走してくれたんですよ。今日に限ってなぜだろうと不思議に思いながら「ありがとうございます」と言って美味しくいただいたんですが、食べた後で突然スコップを手渡されて、ただ「掘れ」と言われました。

[ソン]ミンさんはご馳走してもらいましたが、僕は食べずに掘りました。

── [質問1]最終的には感動できてすごく良かった作品ですが、やはり途中まではどういう話になるのかなと心配しながら見ていました。プロデューサーの方にお聞きしたいのですが、こういう即興的な、最終的にどうなるか分からない状態で作る映画というのは不安があると思うのですが、プロデューサーの立場としてはいかがでしたか。

[ソン・ウジン]イム・テヒョン監督への純粋な信頼だけで突き進みました。監督の前作『奇跡の夏』は韓国内で100万人以上を動員したのですが、そのような監督が今回引き受けて下さって、私はとてもありがたいと思っていたんですね。でも全て撮影が終った頃に、逆にイム監督から「ありがとう」と言われました。初めはお礼を言われる意味が分からなかったんですが…。通常、映画業界では詳細が決まっていない状態で仕事を決めることはありませんが、お互いへの信頼を持って突き進んだことで、結果的にとても順調に撮り終えることができました。


イム・テヒョン監督(左)とソン・ウジン プロデューサー

── [質問2]私は監督の『奇跡の夏』も見させていただきました。今回は前作とはストーリーもトーンもずいぶん変わっていて、『奇跡の夏』と同じような作りだったら嫌だなあと思っていたのを、見事に監督が覆してくれて嬉しかったです。映画の内容で、演劇や映画の大学への入学を目指すために、父親が映画制作を依頼する場面がありますが、実際韓国では日本より映画関係の学科が充実しているという話を聞きますが、入試の際に試験以外の実績が必要なものなのですか。そういった事情を少し説明していただけるとありがたいです。

[監督]絶対に必要なわけではありません。そういう経歴があれば、一般試験の前に推薦入試で入学することが可能です。実際にはこの映画のような経験がある人は少ないと思います。

── [司会]そこは全て創作というわけですね。

[監督]全て創作ではないですが。一番端に座っているソン・イファン君は、現在映画学科の入試に向けて準備しているところなので、この映画が役に立てば良いなと思っています。

── [質問3]亡くなった妹についてなんですが、5歳くらいで亡くなったという設定で、普通ならば亡くなった時の思い出のまま5歳の少女が登場すると思うのですが…。妹が成長した姿で現れるという意図は、青年の願望の幻影というか、妹が成長していたらこんな感じだろうという願望が反映されているのかなと思ったのですが、その辺りの思いつきや意図を教えていただきたいです。

[監督]そうですね、私は自然に思いついたのですが、後で観客の方からそのような質問を受けて、私自身も考えてみました。私の感覚では、少女が登場するよりも、成長した姿で現れる方が思い出を描写するのにふさわしい感じがします。

── [質問4]とても楽しませていただきました。監督もこの映画の中の監督と同じような撮り方をされたと伺いましたが、主演のお二人も人間的な成長が感じられる素晴らしい演技だったと思います。手探りで演じられたお二人は、出来上がった作品を見て、どのような感想をお持ちでしょうか。

[ミン]私も台本がほとんど無い状態で映画を撮るという経験は初めてでした。かといって完全に私のやりたいようにできるわけではなく、監督がある程度決めたガイドラインに沿って演じなければならないんですね。最初は監督からも頻繁に指摘や指導を受けましたが、撮影後に感じたのは「演技というのは演じようとしない努力をする時に一番自然な演技が出来ている」ということを教えてもらった気がします。俳優人生において核となる部分を教えて下さった監督なので、今後もまた一緒に仕事をして良い作品を作って行ければと期待しています。


主演のミン・ジュンホ(左)とソン・イファン

[ソン]ミンさんが言うように「出来る限り自然に。演技をしようとするな」という言葉を監督は僕にも何度もおっしゃいました。僕にとっては全て初めての経験で、演技が何なのかも分からないので「演技をするな」というのは本当に難しいことでした。どうして良いかわからずカメラの前でぼうっとしたり、ミンさんや他の俳優の芝居にリアクションをすることしかできませんでした。そんな中で他の出演者や監督・スタッフの方々のコメントを信じて撮影を進めてきて、何とかここまで来ることができました。

[監督]10日間の撮影期間中、「ソン君は日に日に成長しているね」とスタッフとも話していました。


大阪アジアン映画祭 公式サイト http://www.oaff.jp/


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