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アジアフォーカス 福岡国際映画祭2009リポート
『酒を呑むなら』

Reported by 井上康子
2009/10/8受領
2010/3/28掲載


 失恋した主人公が旅に出てのエピソードをコミカルに描いたロードムービー。彼女に振られたヒョクチン(ソン・サムドン)は気晴らしに高校時代の友人たちと飲みに行く。酔っぱらった友人の一人が「明日はみんなで江原道の旌善(チョンソン)に行こう」と言いだす。予定のあったヒョクチンだが友人に旌善の良さを聞かされ、だんだんその気になってしまう。翌日、約束のバスターミナルにヒョクチンが行くが、しらふにもどった友人たちは誰も来ていない。怒りの電話をしたヒョクチンだったが、調子のよい友人に、知り合いのペンションがすごくいいから先に行けと勧められると、またも彼はその気になってしまう。


『酒を呑むなら』

 そうして始まったヒョクチンの一人旅は、彼の予測や願望が裏切られ続けるものであった。彼の期待と実際に起きたことのギャップがここでの笑いの手法である。バスに乗れば、若い女性が隣の席に座らないかと期待するが、実際に隣の席に座ってきたのは、芸術を吹聴するちょっと変わったお姉さんで、際限なくヒョクチンに話しかけ、彼は閉口してしまう。誤解から泊まるはめになったペンションで隣室にいた男女は、ヒョクチンに酒を呑ませに呑ませたあげく、男は寝てしまい、女はヒョクチンを誘惑してくる。ヒョクチンが女を押し倒したかと思うと、次のシーンでは身ぐるみはがされたヒョクチンが道路に転がっていて事の顛末が伺える。やっとのことで、ヒッチハイクで車に乗せてもらい、一息ついたヒョクチンだったが、運転手のおじさんはどこかエキセントリックで、さらにやばいことに、やたらとヒョクチンの身体を触ってくる。やっと迎えに来てくれた友人が予定のペンションに連れて行ってくれ、女性客が来るとのことで期待していると、ヒョクチンの前に現れたのはバスで隣席にいたお姉さんだった…。

 監督が脚本も書いているが、ストーリー展開が巧みで、ヒョクチンが酒を呑みながらの旅行で、人がよく優柔不断なゆえに、少し奇妙な人々(例えば、お姉さんは突然、二葉亭四迷の俳句を披露したり、ヒョクチンが立ちションしていると彼のいちもつをしげしげと眺めていたりするのだ)に出会い、翻弄される様が、江原道の自然を背景に、ゆるいエピソードを積み重ねて描かれている。特に目的のない旅を描いたこの作品はどんな終わり方をするのかが気になっていたが、エンディングも優柔不断なヒョクチンならではのものであり、観客は最後まで笑い続けていた。

 1976年生まれのノ・ヨンソク監督はこの作品が長編デビュー作。製作費は何と1,000万ウォンの超低予算映画で、監督が脚本・撮影・音楽・録音・編集・美術もこなしている。友人たちに出演を頼み(出演料の総額が100万ウォンとのこと)、13日間で撮ったそうだ。監督が何役もこなさざるを得なかったため、技術が伴わなかった部分もあったようで、フォーカスが微妙に合ってないとこもあるのだが、それはそれで酔っぱらったヒョクチンの見え方のようにも思えてくる。海外の映画祭でも上映され、米国の配給会社にも購入されたことで韓国の映画界でも大きな注目を集めている。


ティーチインの模様

 ティーチインに現れた監督はサービス精神たっぷりで、この作品にちなんで最初に質問してくれた人にと韓国からわざわざ焼酎を持参されていた。乗り物で移動中に脚本を書く予定だったのに隣席のおばさんにずっと話しかけられて閉口したことや、サウナで横にいたおじさんに触られた実体験が作品に反映されていると話した上で、「だけど、脚本を書く予定でも、横に座ったのがきれいな女の人で、その人が話しかけてきたのならこうは感じないのでは?」と考え込んだことも、この作品のアイデアにつながったとのエピソードも披露。

 監督はロマンチストなんだなあと感心したが、「乗り物に乗るときは、隣席にきれいな女性が来ないかとロマンスを期待して、いつも缶コーヒーを二つ買っていましたが、あげる機会は結局ありませんでした」と話し、場内を爆笑させた。さらに、作品中、江原道の駅に主人公がいるときに、そこで撮影された『春の日は過ぎゆく』が話題にされていることに関連して、「私はイ・ヨンエさんと恋愛するというのがすごく羨ましくて、あの作品を最後まで見たことがないんです」という秘話まで告白され、ティーチインも和やかに盛り上がった。


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