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『私のちいさなピアニスト』&『春のワルツ』のピアニスト
キム・ジョンウォン氏インタビュー

Reported by 鄭美恵(Dalnara)
2007/5/27



 4月に日本ではじめてのCD『ショパン フォー スケルツォ』をリリースし、5月6日にソロリサイタルを行ったキム・ジョンウォン氏(ジュリアス ジョンウォン キム)。ウィーンでの生活がすでに人生の半分以上を越え、ヨーロッパを拠点に演奏活動を続けるキム氏に、音楽について、また劇中音楽の演奏を担当したドラマ『春のワルツ』や演奏シーンに出演した映画『私のちいさなピアニスト』のエピソードについて伺った。

   日時:2007年5月5日
   通訳:高リョミ

── 来日は何回目でしょうか。

 今回で4回目の来日です。日本についてはもともと文化や食べ物にも関心があり、新婚旅行も日本でした。

── 好きな作曲家をおしえてください。

 練習している曲の作曲家は好きになります。そして愛情を感じます。恋人、家族、先生それぞれに対する愛情がそれぞれ違うように、それぞれの作曲家に愛情を感じています。ブラームスは尊敬する作曲家で、ショパンは恋人みたいな存在です。

── 映画『私のちいさなピアニスト』に出演したきっかけをお聞かせください。

 ウィーン国立音楽大学の先輩の紹介で監督にお会いして出演のお話をいただきました。韓国で初めて製作されたクラシック音楽の映画なので、一般の人にクラシックへ関心を持ってもらうよい機会になると考えて引き受けました。

── では今後も機会がありましたら、映画やドラマなどに出演されますか?

 音楽哲学をしっかり持ちながらも、出演依頼に対してはオープン・マインドで対応していきたいと思います。固定観念を持つのではなく、音楽ファンや時代の変化に合わせて柔軟に対応していきたいと思っています。

── 演奏シーンに出演された映画『私のちいさなピアニスト』の原題は『ホロビッツのために』ですが、題名になっているホロビッツについて、あるいは好きなピアニストについてお聞かせください。

 音楽的に自分と似た演奏スタイルの人はあまり好きではないのですが、ホロビッツは自分とは反対の演奏スタイルです。違うところが多いのですが、生き方を尊敬しています。才能がすばらしいと思いますし、年を取っても80歳になるまで演奏を続けているところなど尊敬しています。曲に対する解釈がたとえ自分と違っていたとしても、その解釈を率直に表現していれば感動を与える、と思います。逆にテクニックがあっても自分の解釈を率直に表現していないなら、観客は感動しないでしょう。ホロビッツはいつも率直に演奏している人です。音楽は、聴衆が喜ぶように興奮するように演奏するのではなく、一番よい演奏は音楽について十分に感じ、その感じたことをそのまま正直に率直に演奏することであると考えています。音楽を演奏するには心と頭と手の3つを使って演奏します。心で真摯に感じて、それを頭で整理して、手で表現する。この3つです。心で曲を受け止めて感じて、頭でそれを整理する過程で誇張せずに感じたありのままを表現することが一番よい演奏だと考えています。

── 『私のちいさなピアニスト』のクライマックスの演奏曲はラフマニノフのピアノ協奏曲第2番ですが、当初はベートーヴェンの『皇帝』だったと聞いています。変更を提案されたそうですが、そのいきさつをお聞かせください。

 はい、最初はそのシーンでベートーヴェンの『皇帝』を使う予定でした。監督は1年間その予定で、その曲を想定した企画で考えていました。ピアノの恩師と久しぶりに会った喜びを伝える曲としてはたしかに『皇帝』がよいと思いましたが、その間の心の痛みも表現しなければいけない、と考え、心の痛みをも表現するためにはラフマニノフが良いと思って監督にそう伝えました。監督はしばらく悩んでいましたが…。『皇帝』のつもりで1年考えてきてらしたので…。最後はラフマニノフの曲になりました。

── そのラフマニノフの曲はキム・ジョンウォンさんのちょっとした転機にもかかわりがあると聞いていますが、よろしければお聞かせください。

 ピアノを習ってしばらく経った頃、こんなふうに想像したことがあります。もし、もう一度幼い頃に戻ったらチェロを選んだかもしれないなぁ、と。そんなふうに考えていたある時、ラフマニノフのピアノ協奏曲第2番を聞いて、ピアノでしか表現できないものがあると感じました。そして、ピアノで表現できる良さをあらためて感じて、気持ちがしっかりピアノに戻ったのです。

── 映画の主人公とご自身の共通点について何かありますでしょうか。

 主人公と似ているところは、やはり小さい頃から練習に追われ、それだけの犠牲を払っているところでしょうか。主人公と似ていないところは… ピアノと向かいあっている時間以外は、なかなか寂しさ、人恋しさに慣れないところかもしれません。

── それでソロだけでなく「MIKアンサンブル」や「キム・ジョンウォン氏と友人たち」といったコラボレーションをするようになったのでしょうか?

 はい。ひとりで楽器と向き合って、自分の出番が来るまでひとりで待っているピアニストのストレスが、アンサンブルや友人たちとの演奏の機会を通してなくなり、共同練習・共同作業をすることでストレスが解消されています。今年の7月にも友人たちとのコンサートを予定していますが、機会があれば今後も続けたいと思っています。

── ドラマ『春のワルツ』の演奏を担当されるようになったきっかけはなんでしょうか。

 ユン・ソクホ監督は『春のワルツ』を企画していた時、主人公をチェリストかピアニストにしようと考えていらっしゃいました。ドラマ制作前に私のコンサートに来て、演奏を聴いてから主人公はピアニストにすることに決めたそうです。ユン・ソクホ監督には「君がもう少し若かったら主演にしたのに」と冗談で言われました。ウィーンに留学している設定が主人公と同じなので、話はまったく違うけれど、ウィーンでの私のエピソードなどは材料としていろいろお伝えしました。


取材後記


 取材の翌日、東京文化会館でソロリサイタルが開催されました。

 インタビューでは、どんな質問にも気さくに正直に真摯に答える明るい方でしたが、演奏する姿はちょっと別人のよう。緻密で繊細でダイナミックかつ情熱と気迫に満ちあふれ…

 そしてお話されたように率直でまっすぐな音がホールに響き渡りました。

 ウィーン時代の日本の友人の方々も駆けつけ、アンコールは2曲。雨の日にもかかわらず大盛況のソロコンサートでした。

 映画『私のちいさなピアニスト』の中の演奏も楽しみです。



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