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Review 『甘く、殺伐とした恋人』『カリスマ脱出記』
『青春漫画〜僕らの恋愛シナリオ〜』『死生決断』

Text by カツヲうどん
2006/9/11


『甘く、殺伐とした恋人』

 この映画を一口で紹介するとすれば、「変調のリズムで奏でられる奇妙なラブストーリー」といったところでしょうか。「猟奇的」と表現した方が韓国的ではありますが、この表現はかなり狭い意味合いになってしまうので、「甘く、殺伐とした恋人」の持つ複雑なイメージを伝えるには、ちょっと違う気もします。シノプシスこそ、韓国ではよくあるブラックコメディなので、話だけでは「またか」と感じる人も多いでしょうが、この作品の奇妙な人間ドラマは、実際に観ないとわからない不思議な色彩から成り立っているのです。

<物語>

 外国文学の講師を勤めるファン・デウ(パク・ヨンウ)は、独身の生活を自由気ままに生きていました。別に女性が嫌いという訳ではないのですが、恋愛に対して独特の間というかネガティブなところがあって恋人はいません。でも、不幸かといえばそれも微妙です。

 彼の住む高層アパートに新しい住人がやってきます。人がいいデウは冷蔵庫を運ぶおじさんを手伝ってその部屋を訪れますが、冷蔵庫の重さでギックリ腰に。一人休んでいると、新しい住人のイ・ミナ(チェ・ガンヒ)が戻ってきますが、知らない男がいるのでビックリ。こうして二人は最初の出会いを果たすのでした。

 やがて近所ということで言葉を交わすようになりますが、デウにとって、ミナが一体何者なのかイマイチ釈然としません。お水風のルームメイト、パク・チャンミ(チョ・ウンジ)と二人暮らしといっても、なんだかヤクザ風の男が出入りしていたりもします。次第に距離が縮まる二人でしたが、どこか違和感が漂う恋人関係。そしてミナが買い込んだ巨大なキムチ用冷蔵庫に大きな秘密が隠されていたことから、物語は一挙、猟奇的サスペンスへと転換してゆくのでした・・・と、いいたいところですが、そうはならないで更におかしな人間ドラマへと発展してゆきます。

 『甘く、殺伐とした恋人』において最も個性的なのはそのリズム。端正ながらどこかオフビートな感覚は韓国映画でも珍しく、そのリズムが最後まで徹しているところは注目です。俳優が演じるキャラクターも徹してこの感覚に沿って造形されていて、登場人物たちのズレまくったオフ・コミュニケーションともいうべきものが、異様ながらも魅力のある笑いを醸し出してゆくのです。全編HD撮影であることが隠し味になっていることも大きな特徴。監督のソン・ジェゴンは今回が商業デビューですが、その個性はちょっと注目株になりそうですね。

 主演の俳優も通好みの配役ばかり。皆韓国では良く知られていますが、人気スターというよりも好きな人は大好きといった感じの俳優たち。その中でもこの映画の個性を大きく支え、看板ともなったのがデウ演じたパク・ヨンウ。若いんだか、おっさんなんだか、よくわからない不可解なデウのキャラクターを本当によく作り上げました。ヒロイン、ミナ役のチェ・ガンヒは、当たり障りなくといった感じですが、ルームメイトのチャンミ演じたチョ・ウンジの個性は、ミナとチャンミの「二人で一人」といったキャラクターを対照的に支えていて好演です。チョ・ウンジは、どちらかというと品の欠けた役柄が多いようですが、個性的な顔立ちながらも、とってもかわいい女性も演じることが出来るので、もっと映画で活躍してほしい女優の一人といえます。

 劇中、明らかに日本ネタともいうべきギャグが出てきますが、一つは日本の小説や漫画ばかりが韓国内で人気を集めることへのイヤミであり、もう一つは韓国のごく限られたドラマや映画ばかりが外国で人気を集めることへのイヤミであって、かなり笑えます。ここら辺は、韓国の映画業界のみならず一般的な韓国人の感想もかなり入っていると思うので、分かる人には良く分かるでしょう。

 映画の最後は、デウとミナが旅行先のシンガポールで偶然再会し、再び別れて終わります。映画のストーリーを考えると「倫理的にこれでいいのか?」と思う人もいるでしょうがこれでいいのです。「世の中、噛み合っているようでズレている、うまくゆくようで、うまくゆかない。だけど最後はつじつまが合うものなんだ。男も女も、本音も建前も、悪も正義もね」といった具合なので、この作品らしい締めくくりでした。

 『甘く、殺伐とした恋人』は、韓流に夢を見出そうとする人には、ちょっと抵抗があるかもしれませんが、次世代映画作家の台頭に関心がある方には是非観てほしい一本です。



『カリスマ脱出記』

 ここ数年、日本では韓国のドラマや映画が一気にメジャーになってしまい、ピンからキリまでいろいろな作品がなんでもかんでもO.K.状態。あの『狂詩曲 −THE RHAPSODY−』や『HEAVEN ヘブン(原題:天士夢)』までがDVD化され、『ひとまず走れ!』や『氷雨』、『盗られてたまるか』が劇場で人気を集めるという、数年前までは想像もつかなかった状態に。しかし、日本で公開される韓国映画というものは、ある程度パターンが決まっているのも事実で、「固定ファンの動員が確実な作品」か「明らかに作家性が認められる」が基本法則。それ以外は買い付け担当の強いこだわりか、メジャー作品との抱き合わせでもない限り、B級作品、C級作品といったものはまだまだこぼれがち。この『カリスマ脱出記』も、そんなこぼれ落ちそうな作品ですが、チープでジャンクな味わいは、それなりに楽しませてくれる一本といえるでしょう。

 まず、のけぞったのは主演がアン・ジェモであること。すっかり太って別人のような容姿になってしまったことも二重の驚きですが、彼が堂々と高校生役で出演しているのは、ミスキャストというより誰かのひねくれた狙いとしか思えません。この「高校生アン・ジェモ」という難しい第一関門を突破できないと、この映画に乗って楽しむことは、多分出来ないでしょう(笑)。しかし、それを越えることが出来た人には、逆にシュールでへんてこりんな韓国B級映画の懐かしい世界が開けてゆくのです。

<物語>

 舞台は、全然活気がなくてなんだかよくわからない高校です。そこの一クラスに巣食う三ばかトリオが「今度、伝説のセブン・カッターが転校してくる!」と尾ひれはひれつけて大げさに語り合っています。「セブン・カッター」とは、たった一人で不良軍団全員に重傷を負わせた謎の高校生。「7」と印された巨大なカッターを武器に、負けた相手にそのカッターで紋章を刻みつけるといわれています。番格のペク・ソンギ(イ・ジョン)は「そんな話は大嘘だ」と見栄を張りますが、本当は怖くて仕方ありません。

 やがてやってきたのがチョン・ハンス(アン・ジェモ)。永井豪の漫画に出てきそうな家庭に育った彼ですが、礼儀正しくて人が良く、とても噂どおりのセブン・カッターとは思えません。ビビって強がる三ばかトリオはハンスを屋上に呼び出して、真相を確かめようとします。あーだ、こーだと弁解するハンスでしたが、揉めあう拍子にポケットから「7」と印された巨大なカッターがゴロリ。勘違いが勘違いを呼んで、ハンスは伝説の凶悪高校生セブン・カッターとして学校中に名を知られてしまいます。

 しかし、そんな噂に動じない女の子がひとりいました。ボクシング部のハン・ミンジュ(ユン・ウネ)です。ハンスがたまたま彼女の着替えを覗いてしまったことから、彼女にとってハンスは天敵同然です。しかし二人は反目し合いながらも惹かれてゆくという、超お約束通りの展開へ。やがて、ラブコメ学園ドラマにありがちな、笑わせ役教師同士の恋のドタバタなどを経て、ひと騒動の中、修学旅行先にハンスを追ってチンピラ連中がお礼参りに姿を現します。いじめられっ子の学友を人質に取られたハンスと三ばかトリオは、彼を救うために、圧倒的不利な戦いに臨まざるを得なくなります。果たして、伝説のセブン・カッターを巡る真実とはいかに?!

 とにかく、すべてが一昔前のフォーマット。映画というよりバラエティにおける寸劇コントの連続のようです。あまりに古臭い内容なので、今の韓国の若者もついてこられないのでは? 相当の低予算で作られたのか、学園ドラマなのに生徒も全然出てきません。まるで過疎地の高校みたいですが、その空疎な画面が貧乏なシュール度をより高めます。確か、この作品、当初は2005年10月末くらいに公開される予定で、巨大なポスターも半年くらい前から某地下鉄駅構内に放置されたまま(2006年4月現在)。

 つまり、誰からも見放されたような映画という訳なのですが、退屈するかといえば、そうでもありません。結構笑えるのです。それはきっと、お約束を守ったお話だからなのでしょうね。俳優たちもスターと呼ぶにはイマイチの連中ばかりではありますが、皆個性がはっきりしていて私は好感が持てました。主演のアン・ジェモはテレビ・ドラマ『野人時代』で一躍スターになった俳優ですが、彼は二枚目よりもちょっと間抜けな二枚目半か三枚目をやった方がこれから伸びそうな気がします。とても高校生に見えませんが、これはこれでキャラクターとして成立しているといえるでしょう。

 ヒロインのユン・ウネは可愛いとも美人とも言い難く、かなり個性的な顔立ちですが、アイドル歌手をやっているより脇役で光りそうな女の子です。個人的に注目株だったのは、三ばかのリーダー演じたイ・ジョン。田舎臭い顔立ちにずんぐりむっくりの体型と、とても格好悪いのですが、妙に味があるキャラクターで、よく見るとかなり体も鍛えています。実は彼が一番の熱演で出番も多かったのではないでしょうか? そのほか、テレビや映画で活躍している個性派脇役たちが、全体のバランスを無視するかのような大活躍ぶり。まるでお笑い俳優の品評会。これは果たして監督が意図したことなのかどうなのか、全くわかりませんが、そのバラバラぶりが逆に映画を楽しくさせたことは、うれしい誤算だったのではないかとも思いました。

 『カリスマ脱出記』は、今後、誰からもまったく評価されないでしょうし、日本でも話題になりようもない作品ですが、B級映画を発掘するのが好きな人とっては、価値を見出すことができる作品だとは思います。



『青春漫画〜僕らの恋愛シナリオ〜』

 この映画の監督イ・ハンといえば『永遠の片想い』で、古典的な内容ながらも作家性と職人技の両方を兼ね備えた手腕を発揮した監督ですが、今回の『青春漫画』は、それらが全て裏目に出てしまった感じで、残念ながら安っぽい作品となってしまいました。物語の進行やキャラクターの関係など、イ・ハンの個性というものは出ているのですが、逆にいえば韓国の映画やドラマであまりにも使い古されたテーマであって、何か強力な隠し味がないとマンネリで安くなってしまいます。『永遠の片想い』の場合、主演三人のアンサンブルと映像美、ミステリアスな物語を加えることで、深い味わいを感じさせる映画になっていましたが、『青春漫画』では、そういった深みまで演出が到達できなかったようです。

 物語は、幼なじみのイ・ジファン(クォン・サンウ)とチン・ダルレ(キム・ハヌル)の成長と愛を中心に、片やスタントマン、片や女優と、芸能界を目指す二人の若者像を描いてゆきます。二人の道のりは決して平坦ではなく、ご都合主義に物語は進行しませんし、最後も絶対的ハッピーエンドとはいえないものです。いわば『ラスト・プレゼント』の俳優版ですが、業界の内幕を描いたにしては不十分ですし、スターを目指す人々の姿を描いたドラマとしても不十分、かといって主演二人の恋愛模様もコメディとしての笑いも、どれも妙に不足した内容で、最初から最後まで薄ら寒さ感がつきまといます。そして一番気になったのは、画面から漂い出てくる何か冷え切った感覚。特にキム・ハヌルにはノリが全く感じられません。元々、彼女は器用で上手な俳優ですから、基本的には役を無難にこなしていますし、芝居度胸をつけるため、バスの中で演技の練習をするシーンなどは、とてもよい演技を見せてくれます(仲代達矢の修行時代を連想させるエピソードですね)。でも、彼女に始終白けた雰囲気がまとわりついているのはなぜでしょうか? 観る側としては非常に気になってしまいます。

 クォン・サンウは、熱を込めて役作りに励んでいるように思えましたが、映画俳優としての限界が見えたような気もします。『美しき野獣』で一皮むけた感のある彼ですが、昔より格段に演技が上手くなったとはいえ、『青春漫画』では役作りに幅がないというか、決められたカメラフレーム内で型どおりの芝居を繰り返しているだけで、+αという魅力があまりにもなかったように思います。彼が無名時代の朴訥さをスターになるにつれて失ってしまうことは仕方ないことですが、一昔前のクォン・サンウであれば、演技の良し悪しは別としても、もっと共感出来る役作りが出来たのではないかと考えると、ちょっと残念な気がします。

 子供時代のジファンを『奇跡の夏』で一躍有名になったパク・チビンが演じていますけど、彼はちょっと個性が強すぎて、幼いダルレの影を薄くしてしまっており、それも過去のドラマを弱くしてしまったようでした。また、過去と現代が交差する物語は『永遠の片想い』では大きな効果を生み出しましたが、今回は蛇足的であまり必要がなかったのではないでしょうか? 話が散漫になるだけで、現代との繋がりにあまり必然性を感じられませんし、大人になったジファンとダルレを描くだけの方が、映画はもっとシットリしたものになっていたのではないでしょうか。

 この『青春漫画』という作品はラブコメというよりは、人間成長を描いた地味な教養ドラマであり、お笑いや主演二人の大活躍を期待すべき内容ではありませんが、監督イ・ハンのロマンテックな作家性というものだけは、そこそこ出ていた作品といったところでしょうか。



『死生決断』

 その出だしは1970年代にたくさん作られた日本のB級アクション。松田優作や千葉真一なんかが暴れまわっていた世界観そのもので、懐かしさを感じさせる異色のフィルム・ノワールです。IMF体制直下の釜山が舞台ですから、そんな昔の話じゃないのですけど、編集や映像・美術と、今では姿を消してしまったタイプのB級アクションそのもの。なんだかムサくて、ダサイけど、カッコイイみたいな感覚をスタイリッシュに再現する事に大変な労力をかけています。

 監督のチェ・ホは1998年の『バイ・ジュン 〜さらば愛しき人〜』でデビュー、2002年の隠れた佳作『フー・アー・ユー?』で一部のファンには知られた通好みの監督。今回の『死生決断』は、前作とはうって変わって「へー、こんな趣味があったのね」といった感じですが、決して180度大回転の趣向変えではなくて、2002年以前の韓国映画では出来なかったことを、出来る限りやってやろうじゃないか!といった意気込みが映画からは伝わってきます。

 映画のスタイルは一見古いものですが、裏社会の住人たちが持つ、姑息で逞しい魅力を、現代的に描いているので、今の若い観客にとっては逆に目新しかったのではないでしょうか。逆にちょっとお年を召した世代には、落ち着きのない映像について行くのが大変かもしれませんね。

 物語はとにかくダーク。主演がリュ・スンボムと、おちゃらけ系のファン・ジョンミンなので、そこそこ人間喜劇として可笑しい部分はありますが、それは厳しい人生つかの間に垣間みせる笑顔、といった感じで、かなりハードです。特にラストは、ハードボイルド小説の定石をそのまま踏襲することにこだわった韓国映画としては珍しい終わり方。チェ・ホ監督は今回の映画製作にあたり、実際の取材をかなり重ねたようですが、「実録・警察VS麻薬組織」というよりも、レイモンド・チャンドラーやダシール・ハメットといった、古典的アメリカン・ハードボイルド的無常観の再現をしたかったのではないかと思いました。

 出演者でまず注目してほしいのは、麻薬におぼれるジヨン演じたチュ・ジャヒョン。恋人に裏切られ、麻薬中毒となる汚れ役を熱演しています。美人というタイプの女優ではありませんが、今回の演技には彼女のプロ意識というものが感じられ、非常に好感が持てました。男優としては、リュ・スンボム演じるサンドの弟分ソングンを演じたオン・ジュワンが、ちょっと印象に残ります。大した役じゃないし、もっと突っ込んで描くべきキャラだったとも思いましたが、今の韓国を象徴するような「かわいい系」の若手男優なので、チャンスがあれば、日本でも支持されそうな感じの個性を持っています。

 この『死生決断』は、東映B級アクションが好きな人には、懐かしい魅力的を持った映画だと思います。反面、最近すっかり姿を消した一昔前の「韓国? なにそれ、イヤー!(→準死語)」といったフィーリングいっぱいの作品ですから、おしゃれな感性を第一優先にする人には、生理的に受けつない映画かもしれませんね。一種の回顧パロディだと割り切って観た方が、この作品の長所が観えてくる作品なのではないかと思います。


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