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Review 『R-Point』『オッケドンム』『孟父三遷之教』

Text by カツヲうどん
2006/3/18


『R-Point』 ★★

 この『R-Point』は、韓国だからこそ出来た異色のホラー映画だろう。だが、残念ながら、企画のユニークな魅力に、完成した映画は追従出来なかったようだ。監督&脚本のコン・スチャン(独立映画集団チャンサンコンメの元メンバー、脚本家として『カル』、韓国版『リング』に参加、監督は今回がデビュー作)は、人の心から生まれいずる闇を描くことに、非常に力を注いでいる。だが、それらは、あまりにも漠然としたものであり、作者の意図であることがわかっていても、観る側としては、面白くない謎々を提示されているのと同じだ。「現実と彼岸の境界」というネタはホラー小説ではお馴染みのものだが、映画でそれを表現する場合は、「それがどういうものであるか」を、どこかで具体的に提示しないと、観る方は辛いのではないだろうか。何も化け物と戦うばかりがホラー映画ではないが、敢えて作ったあざとい絵を提示することが、この作品には一番欠けていたことだったと思う。

 出演俳優はカム・ウソンにソン・ビョンホと、飛び抜けて地味。これもまた、作品にいまいち感をもたらしている。ホラーとはやはり、絶望と戦う主人公が必要だ。だが、登場人物たちは、妙に従順、のんびりとして、生きる事に対する執念が欠けている。そして結果が「超自然の前では人間はすべからず無力です」では、あまりにも盛り上がらない。

 カンボジアでの撮影も映えない。ラボの関係か、季節の問題か、インドシナ半島独特の雰囲気があまり出ておらず、映像美の点でも魅力に欠ける。

 企画の面白さでは、この作品を高く評価したいが、出来上がったイメージがあまりに貧困ゆえ、その面白さを活かせなかった映画である。


『オッケドンム』 ★★★

 この映画のタイトルは、直訳すると「ヤクザ(=オッケ)・ドンム(=個人名)」だが、韓国語の「竹馬の友」という意味が引っかけられている。物語は、なさけない若者ナ・ドンム(イ・ソンジン)が、警察の極秘捜査を記録したVTRを手に入れた事から、それを取り返そうとするチンピラ、テシク(ユ・ドングン)らに拉致されるところから始まるが、肝心のVTR争奪戦はすぐにどうでも良くなってしまい、果てしなくドンムとチンピラたちの奇妙な友情がドタバタで描かれて行く。そういう点では、かなり破綻した内容で、登場人物のドタバタばかりで、中身が無い、といわれると、否定できない映画でもあるが、そのかわりに、主演俳優たちのコラボレーションが、そういった欠点を十分に補っている。

 監督のチョ・ジンギュは、本作が第二作目となるが、「家族関係」があくまでも映画の中心であることは、前作『花嫁はギャングスター』と全く同じである。

 ドンム役のイ・ソンジンは、ラップ系グループNRGで活躍しているアイドル歌手だが、本来は俳優志望だという。今回は、抑えの効いた演技を披露しているので、テレビで彼の三枚目ぶりを観ていた方には、かなり物足りないかもしれない。テシク演じたユ・ドングンは相変わらず芸達者だが、『大変な結婚』に比べるとおとなしさは否めない。『大変な結婚』が彼の暴走ぶりに支えられていたとすれば、少し寂しい気もする。

 間抜けな相棒役コルトン役のイ・ムンシクが今回、一番の好演だろう。出番は意外に少ないが、彼が本来ドタバタ演技をさせると抜群であることが非常によくわかる。なお、大きくクレジットされていないが、一番若いチンピラ、サンカルを演じたチェ・リョンは、将来性を感じさせる新人だ。映画は今回が初めてだが、当たり役をつかめば大化けしそうだ。

 なお、本作は全州フィルムコミッション協力の元、ほとんどを全州で撮影したが、ソウルやプサンにはない、一般的な韓国の街のイメージがよく出ており、外国人には違和感は全くないと思う。

 韓国のコメディが嫌いな人には、ちょっとダメかもしれないが、何かの折りに観る機会のある方には、お勧めしたい作品である。


『孟父三遷之教』 ★★★

 映画のタイトルは「孟母三遷之教」を、もじったものだ。物語もこの故事に沿っており、基本的には教育パパ物だが、ヤクザを絡めた集合住宅でのご近所問題に時間を割いて描いている部分が、今の映画らしいといえるだろう。学校や教育を描く部分は思いほか比重が軽く、映画の中心は魚屋をやりながらソウル大学に一人息子サソン(イ・ジュン)を進学させようと躍起になる父親マンス(チョ・ジェヒョン)と、隣のヤクザ、ガンドゥ(ソン・チャンミン)一家の闘いである。

 マンスは、古臭い両班教育にこだわる田舎からソウルに出てくるのだが、故郷でのドラマ、ソウルに出てくるまでのドラマがあっさりと短く描かれているだけなので、彼の教育パパぶりに感情移入するには少し時間がかかるかもしれない。だが、一見古典的な題名とは異なり、監督キム・ジヨンの演出ぶりはなかなか、あかぬけており、韓国映画定番のヤクザとの闘いも含めて、決して泥臭くない仕上がりになっている。

 息子サソンの学校生活は、さらりと描かれているため、あまり印象に残らないかもしれないが、決して劇中のバランスは悪くなく、サソン役イ・ジュンの普通ぶり、ガンドゥの姪で秀才のヒョンジョン演じるソ・イヒョンのクールな美少女ぶりも好感が持てる。この二人の若手俳優は日本のドラマに出ても、あまり違和感は感じないだろう。

 進学校ならではの、熾烈なおかしさがもっとあれば、とも感じたが、この映画で描きたかった事は学園生活そのものではなく、子供たちを巡る親の思いであることは、映画を観てもらえればわかると思う。また、ここ十年、急速に乱立している韓国都市部周辺の集合住宅の問題(近所の住人との諍いや環境問題など)がきちんとエピソードの中に組み込まれていたことは逆に目新しい部分だし、日本人にも共感できる部分だろう。

 マンス演じたチョ・ジェヒョンは、今回はまり役といってもいい。彼独特の殺伐さとユーモラスな部分がバランスよく融合しており、一途な教育パパの役を好演している。隣のヤクザ一行を演じた他の面々(キム・レハ、チェ・ジュニョン、ト・ギソク)も、皆個性的で笑える。こういうキャラクターは、えてして田舎臭くなってしまいがちな役だが、なかなか現代的で実際にいそうなヤクザ像になっている。

 韓国は、ソウルにある名門大学に進学・卒業することが、人生に大きく影響してしまうようなところがある。大学のレベルに差があっても、軒並みソウルにキャンパスがある大学および学部は競争が激しく、入学する事は一種のステータスにもなっている。だが、日本でも有名大学を出たからといって、皆成功して幸福に暮らしているではないのと同じように、今の韓国でも社会に多様性が出てくるにつれ、以前よりも有名大卒業という威光は確実に権威を失いつつある。それがよくわかっているのは、この映画を観ている観客の中で、該当する世代の当人たちなのだろう。だから、この映画は韓国の若者にとって笑えない苦味がちょっと含まれたコメディかもしれない。


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