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Review 『外出(邦題:四月の雪)』『家門の危機』
『僕の彼女を知らないとスパイ』『霊−リョン−』

Text by カツヲうどん
2005/12/25


『外出(邦題:四月の雪)』 ★★★

 日本でのタイトルは『四月の雪』ですが、原題の方が作品テーマを表していると思うので、あえて『外出』と明記します。なぜなら、この「外出」という題名は、普通に関係なく暮らしていた男女が、数奇なきっかけで「日常」という「家」から、「隠れた事実」という「外の世界」に足を踏み出すことで、新たな出会い、そして人生の始まりを見つけるという物語を、よく表現しているからです。

 主人公二人は全く面識がありません。その一方、二人の伴侶は不倫の関係にあり、密会を続けます。それが交通事故によって露見することで、主人公たちは「日常からの外出」を余儀なくされるのです。やがて「日常からの外出」を続けることで、主人公二人は互いの存在という、かけがいのないもう一つの人生を発見してゆきます。そして「物事はすべて繋がり、巡り巡ってゆく」という東洋的な運命感をも、映画『外出』は描いています。一組の男女が消えることで、面識のなかった別の男女が出会う、そこには「好きだ、嫌いだ」といった動物的な恋愛観では推し量れない、運命の車輪といったものを感じさせるからです。

 「外出」という言葉は、あまりにそっけない題名ですが、「旅行」でも「旅立ち」でもなく、ほんのちょっとした「外出」、しかし、その一時のハプニングの積重ねこそが人生の成り立ちであり、日常であるという、ホ・ジノ監督のメッセージが、そこには含まれているように思いました。

 この作品は、『八月のクリスマス』で韓国のみならず日本でも一目置かれたホ・ジノ監督の最新作ですが、キャリアの上では三本目、もしかすると彼の作品の中では一番こなれた完成度かもしれません。ただ、その分、こぢんまりとまとまってしまい、『八月のクリスマス』が大好きな人には、突き放されたような、もの足りなさを感じるでしょう。ただ、その冷ややかな視点があるからこそ、「人としての男女の絆」といったものが、ラストにきちんと浮かび上がってくるようになっています。この映画は、最近の偏った韓流ブームの弊害ゆえ、一部の方々や、ホ・ジノ監督のファンにとっては、ちょっと食指が動きにくいかもしれません。たしかに、『八月のクリスマス』のような深遠さはありませんが、世間が作り上げた先入観をひとまず忘れて、客観的に観てみることをお勧めしたい作品でもあるのです。そうすればホ・ジノ監督のスタイルやこだわり、俳優ペ・ヨンジュンの仕事に対する姿勢、女優ソン・イェジンの可能性などがきちんと見えてくる内容であると共に、今までハン・ソッキュやイ・ヨンエといった「外側に向けたオーラ」を放つ俳優たちを起用してきたホ・ジノ監督が、「内側に向けたオーラ」を放つ二人の俳優と組むことで、前二作以上に彼らしさを掘り下げていることがわかるでしょう。

 また、この『外出』という作品は、まさに「男の映画」だとも思います。なぜなら、登場する女性たちの心境よりも、ペ・ヨンジュン扮するインスの心理と生活を執拗に描いており、男性の私としては納得できるところが多々あったからです。インスはマッチョさを見せつける人物ではありません。むしろ、控えめで自己主張もあまりしないタイプです。仕事に没頭するあまり、妻との関係に変化が起きていたことを、大きな事件が起きてからも、なかなか認識できません。事故後、自分の仕事に取り組もうとしながら、どこか空虚なインスの姿は、あまりにやり切れなく、胸を打ちます。

 この作品の至らない部分を一つ上げるとすれば、主人公たちの日常があまりきちんと描かれていないことでしょう。それは監督の意思なのかもしれませんが、そのために、映画はテーマを今一つ伝え切れていない気がしました。この『外出』は、すぐ忘れられてしまいそうな映画かもしれませんが、ホ・ジノ監督にとっての新たなスタートを感じさせる、「韓流、ペ・ヨンジュン」といった一連の記号をデリートして、観ていただきたい作品です。


『家門の危機』 ★★

 ここ最近の韓国映画における企画の特徴として、続編がたびたび企てられていることが挙げられます。それまで、パート2や3といった企画がなかった訳ではありませんが、マーケットが流動的な韓国では続編は商売にならない、といったジンクスがありました。続編が作りにくい理由として、まず一作目を越えることが難しい、という事もあります。魅力的な作品とは、企画、スタッフ・ワーク、キャスティングの運命的邂逅に依存する要素が大きい上、前作を担当した監督や俳優の多くは、イメージの固定化を嫌い、続編への参加を渋る傾向があります。他の監督や俳優にしても、他人のフンドシで相撲を取って、良い結果を出さなければならない訳ですから、嫌なものでしょう。また、どんな優れたシナリオを書こうとも、前作と比較してどうしても否定されてしまいがちです。前作ファンである観客からすれば、続編は魅力あるものであっても、製作側からすれば、やりにくい仕事でしかない訳です。

 そこで折衷案として考え出されたのが、タイトルを「ブランド」として残し、幾つかの物語設定を基本ルールとして守りながら、全く別の作品を作る方法です。今回の『家門の危機』もまた、そうしたタイトル・ブランドのパート2として製作された映画といえるでしょう。

 基本的に前作『大変な結婚(原題:家門の栄光)』と共通することは「田舎の名門ヤクザ一家」「結婚騒ぎ」という状況設定だけで、キャストも物語も全く前作に関係ありません。結果、どういう映画になったでしょうか? まずいえることは、独立した作品として十分成功している、ということです。前作と全くスタイルの異なる演出は、映画を現代的なライト・コメディに仕上げています。ですから、濃い設定が嫌いな観客でも、観やすい感性の作品になっているのです。監督のチョン・ヨンギは『人形霊』で監督デビューした若手で、これまで『アウトライブ −飛天舞−』、『人形霊』、『恋の潜伏捜査』の脚本家として実績を積んできた人物でもありますが、今後、都会派コメディを撮らせたら、とても良い作品を作りそうな予感を感じさせました。

 物語は笑いよりも、身分や社会的立場を越えた人の絆を描いた、かなり真面目な内容です。ヤクザの惚れた女が敏腕検事だった、という設定はベタベタなマンネリ・ネタですが、きちんと最後の感動に繋がってゆくよう、シナリオは書かれています。ただし、前作『大変な結婚(原題:家門の栄光)』がまさにキャスティングのマジック、強烈なキャラクターたちの素晴らしいコラボレーションに、チョン・フンスン監督のハリウッド・キッズならではの感性が加わった濃厚なコメディであったことに比べると、今回は大変淡白で、前作の魅力を求める観客には、ちょっと期待外れかもしれません。

 白虎一家の親分演じたキム・スミはカリスマ的なキャラクターを持った女優ですが、出番が少ない上、前作のユ・ドングンのような驚くべき意外性がないので、あまり存在感がありません。彼女の長男、インジェ演じたシン・ヒョンジュンは都会的な三枚目で、企画に合った配役ですが、次男、三男演じた俳優たちも同じく都会的で泥臭さが無く、個性のオーラも少ないため、せっかくの地方ヤクザ三兄弟という設定がうまく生きていません。出番は少ないのですが、抜群におかしいのが、ヒロインの同僚検事を演じたコン・ヒョンジンでしょう。嫉妬に狂うさまは凄まじく、大爆笑です。また、インジェと亡き恋人との思い出シーンが、サイケデリックなパロディとして秀逸な出来になっていて、本編より笑えるかもしれません。

 この『家門の危機』は、決して大傑作とはいえないし、『大変な結婚(原題:家門の栄光)』のようなキャラクターの魅力もありませんが、チョン・ヨンギ監督作品としての個性を持つ映画になっています。ゆえに、前作を観ていない方こそ、一層楽しめる作品かもしれません。


『僕の彼女を知らないとスパイ』 ★★

 この映画を「つまらない」と一言で片付ける事は簡単だ。だが私が気になったのは、「面白い、つまらない」という事よりも、あまりのノリの悪さ、テンポの悪さ、である。なぜそれが気になったかというと、演出的技量が悪いから、というよりも、実はパク・ハンジュン監督が、確信的にやったのではないか?と思わせる部分が感じられるからなのだ。

 まず、シナリオの構成が特徴的だ。非常に複雑な組み立て方をしており、ベテラン監督でさえ、つまずきそうだ。過去と現在をカットバックさせる手法は韓国の作劇ではおなじみだが、この『僕の彼女を知らないとスパイ』の場合、そこに主人公たちの視点別にエピソードが綴られている。だから「過去・現在・過去」の、話の行き来に対して、更に、異なった個人の主観が加わって、互いの視線が一致する部分において、観客は初めて何が起こったか判明する物語になっている。

 この非常に凝った構成が、本来もっとポップで軽くなるべき内容を、ノロノロにしているのは明らかだが、映画は決してグチャグチャではなく、意外な事に人間ドラマは、それなりに描けているのである。それは決して洗練された手腕ではないし、特筆すべき感性でもないが、この監督のパク・ハンジュンという人物は、もっと作家志向の小作品であれば、いい映画を撮るのではないだろうか。

 ヒロイン、リム・ゲスン演じたキム・ジョンファは、まだまだ個性が出てくる段階には至らず、主演を張るには少し早すぎた感がある。相手役チェ・ゴボン演じたコン・ユも同様だ。ただ、彼の頼りないキャラクターは、韓国では貴重だし、好感は持てるので、今後に期待したい。

 ゲスンが韓国で身を寄せる北の潜伏工作員パク・ムスンを、ベテランのペク・イルソプが演じている。相変わらずの「韓国のオヤジ」ぶりは観ていて大変魅力的だ。その妻オ・ミジャ演じたキム・エギョンのアジュマぶりも凄まじい。彼女の演技こそ、この作品ではもっとも観る価値のあるものだろう。

 あまりにも、『猟奇的な彼女』や『同い年の家庭教師』の二番煎じを狙いすぎたためか、完全に的を外した作品ではあるが、監督のパク・ハンジュンの名前だけは、記憶の隅に留めてもいいかもしれない。もし、この企画を『同い年の家庭教師』のキム・ギョンヒョン監督が手がけ、北朝鮮のスパイうんぬんをやめていれば、かなり面白い映画になっていたのではないかと思う。


『霊−リョン−』 ★★

 この映画は、アン・ビョンギ監督の作品に、まるでそっくり、観る人によっては亜流の亜流、斬新さも何もないので、話にならないかもしれない。全編、どこかで観たような映像の連続に、やたら立て続けに起こるビックリ演出、おかしなカメラ・ワークと演出は恐怖のツボを完全に外してしまっていて、韓国の劇場では、最後まで観客の失笑が絶えなかった。

 亡霊がヒロインの前に初めて姿を現すシーン(韓国版貞子が、床の水たまりから、這い出してくる)は、日本映画『リング』そのまんま。ただ、このシーンでは、貞子系お化けが実に「格好よく」描かれているので、今後キム・テギョン監督は、リドリー・スコット監督(『エイリアン』、『ブレード・ランナー』)やポール・W・S・アンダーソン監督(『バイオ・ハザード』、『イベント・ホライゾン』)のように、スタイリッシュで変則的なホラー作品を撮った方が、面白いものを作りそうな気がした。

 ヒロイン、ジウォン演じたキム・ハヌルが、こうした「いかにも系」ホラー映画に出たことに、違和感があったファンも多かったと思うが、彼女は無難に役をこなしており、全く問題ない。彼女は一見癖が強そうでも、何をやっても観る側にイヤミな印象を与えない、希な存在なのだろう。話はそれるが、彼女こそ日本の連続テレビ・ドラマにピッタリなのではないだろうか?

 美少女系の出演者としては、ヒロインを恨むウンジョン役に、イ・ユンジ(最近、CFでもよく見かける顔だ)、物語の本当の主役であるスイン役のナム・サンミ(『僕の彼女を知らないとスパイ』、『彼女を信じないでください』、『恋の潜伏捜査』)らがいるが、全体的にイマイチなので、添え花で終わっている。出演者の中でちょっと目立ったのが、ミギョン役のシニ(『セックス イズ ゼロ』、『浪漫刺客』)だ。今回は、はっきりいってミス・キャストではあったが、若いのか、おばさんなのか、よく分からない風貌は、現代的なコメディに、とてもはまりそうな気がするし、韓国の若手女優では貴重な、個性派の三枚目といえるだろう。

 この『霊−リョン−』は、格別、個性的でもなく、突っ込みどころが幾らでもある平凡な作品だが、韓国製ホラーというものが、安定期に入ったことを思わせる作品である。


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