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『マリといた夏』 イ・ソンガン監督インタビュー

鄭美恵(Dalnara)
2005/1/4受領



 イ・ソンガン監督は、2004年3月に渋谷で開催された韓国インディペンデント映画2004で、短編アニメーション『オ−ヌ−リ』が上映された、韓国を代表するアニメーション映画監督である。

 2004年10月のコリアン・シネマ・ウィーク2004では、海の色やくすんだ緑の色が美しい長編アニメーション『マリといた夏』が上映された。イ監督のはじめての長編アニメーション映画は、主人公ナム(声:イ・ビョンホン)が幼なじみのジュノ(声:コン・ヒョンジン)と会って思い出話をし、いっしょに過ごした12歳のころを思い出すところからはじまる。

 ナムは子供のころ小さな漁村に母と祖母と一緒に住んでいた。事故で父親を亡くしたナムは同級生のジュノと猫のヨだけに心を開いているちょっと内向的な少年。漁師のおじさんギョンミン(声:アン・ソンギ)が男手のないナムの家によく手伝いに来るが、母親をとられるのではと、不安になったりもする。

 そんなナムが経験した不思議な出来事やマリとの出会いをファンタジックに描いた作品だ。

 コリアン・シネマ・ウィーク2004で来日したイ監督に作品について聞いた。



Q: 映画のテーマについてお話しください。
A: この映画は若者向けの映画ではなく、30代から40代向けの映画として作りました。人生にくたびれている人にこの映画を見てもらいたいです。人生にくたびれている人は、何かを忘れがちで現実にのみ生きている気がします。夢や希望や愛を忘れがちで生きていると思います。夢は現実でないものが多いですが、うそだとわかっていても信じることは重要です。そしてすべての人がもともとはそういった夢を持っていたということを訴えたいです。

Q: 画家から映画監督に転身したそうですが、絵と映画、映画と音楽についてお聞かせください。
A: 絵画は絵だけでおもしろくないですが、アニメーションにはいろいろなものが含まれます。音楽、ストーリーなどすべてのものが含まれます。一方、絵は平面だけで終わってしまいます。そして映画の中で音楽はとても重要な要素を占めています。この映画ではギタリストのイ・ビョンウがすばらしい音楽を作ってくれました。映画の音楽を依頼するときは注文をするのではなく、イメージを伝えるだけです。あとはイ・ビョンウのインスピレーションに任せました。特にモダンなものにしてくれとか、クラシックなものにして、といった要求は一切しないです。それから、エンディング曲をソン・シギョンにしたのは推薦された何人かのうちで声質があたたかい感じがしたからです。

Q: 声優の選択について伺います。
A: アン・ソンギさんもそうですが、イ・ビョンホンさんなどもキャラクターの顔と声優の顔がよく似ていると思いますので、声の質も役のイメージとよくマッチしていると思います。アン・ソンギさんの声の感じはちょっとぼーっとしたかんじで、ちゃらんぽらんなところがあるので、このキャラクターにマッチしているのではないかと思いました。

Q: 映画の冒頭でソウルにはない Adobe のビルが映りましたが(笑)・・・ CGでの製作などについて伺います。
A: ソウルの街に Adobe ソフトウェアの看板が出たのは、協賛を受けていたということもあります。ビルの看板(ビル名)をつけなければいけないのですが、他に思いつく名前がなかったからです。製作についてですが、コンピュータにつながったデジタルペンで作品を描いて作りました。

Q: 次回作の予定についてお聞かせください。
A: 2004年に1本映画を撮りました、今度の作品は実写作品で2005年春公開の予定です。タイトルは『私たちのセックスのこと(原題:肌)』です。『私たちのセックスのこと』についてですが、出演者はほとんどが新人の俳優なのでみなさんご存じないかと思います。内容はある男がお化けにとりつかれる話です。ただお化けが出るからといって恐怖映画ではないんですよ(笑)。2004年12月からまた次の長編アニメ作品の製作にとりかかります。

Q: 日本には何回かいらっしゃっていますか?
A: 日本には3回目です。必ず行く映画館、本屋やアニメーション・ショップなどは特にないですね。短い滞在で行く時間があまりなかったので。日本の監督では宮崎駿、高畑勲や今村昌平監督が好きです。

Q: 最後に日本のファンにメッセージをお願いします。
A: アクションでもなくアドベンチャーでもない映画で、情緒的に共感できるものを中心に描いています。ぜひ人生について安らかな心にもどれるような映画として見ていただければと思います。



取材後記

 映画の最初に映るソウルの街に Adobe のビルが映ったとき、プロダクト・プレースメント(PP)という手法が思い浮かんだ。映画『ターミナル』などで使われている、現実に存在する企業名や商品を作品に登場させる一種のブランド広告だが、『マリといた夏』の Adobe のビルは、PPというよりも映画に幻想的な雰囲気を与えているような感じがした。

 映画が現実と幻想、大人時代と子供時代を行き来する、リアルでファンタジックな二面性を備えていることを、ソウルに実在しない Adobe のビルが象徴しているような気がした。現実世界と夢の間を自由に浮遊して、いつか日常にくたびれた自分が癒され、解き放たれるような、不思議な力を持った作品だった。



【注】 映画祭では『マリ物語』という題名で上映されましたが、その後、『マリといた夏』という邦題で劇場公開されましたので、題名はすべて劇場公開時のものに統一しました。


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