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シネマコリア2003
『夢精期』スペシャル・トーク




Text by SARU&西村嘉夫 Photo by 宮田浩史
2003/9/29受領

日時:2003年8月30日(土)
場所:草月ホール
ゲスト:尹春江、田代親世
司会:西村嘉夫

 シネマコリア2003で日本初公開され大好評を博した『夢精期』。性的好奇心いっぱいの中学生を主人公にした、ちょっぴりエッチでユーモアたっぷりな青春ラブ・コメディですが、東京会場では本作の字幕を翻訳していただいた尹春江さん、そして韓国エンターテイメントを語らせたらこの人の右に出る者なし!と言われる田代親世さんをお招きして、スペシャル・トークが開催されました。

 字幕のお話し、台詞に隠された意外な意味、作品の背景など、どうぞお楽しみ下さい。



司会: どうもありがとうございました。外で待機しておりましたら、皆さんの笑い声が聞こえて参りまして、楽しんでいただけたのではないかと思います。それでは引き続きまして、スペシャル・トークに移らさせていただきます。本日のゲストは、ただいまご覧いただきました『夢精期』に字幕をつけていただきました、字幕翻訳家の尹春江さん、そして韓国エンターテイメント・ライターの田代親世さんです。どうぞ盛大な拍手でお迎えください。(会場:拍手)

司会: 早速いろいろ伺っていきたいのですが、まずは尹さん、素敵な字幕をつけていただきましてありがとうございました。この作品は、かなり隠語が多くて、ものすごく翻訳が難しい作品だったと思います。色々な工夫がしてあるんですが、どうしてもひとつだけ字幕では伝えきれなかった部分、それはチ・ソック君の秘密なんですが、そちらをまずご紹介いただけますでしょうか。
尹: いわゆる女性器のことを韓国語では隠語で「ポジ」というふうに言うんですね。それでチ・ソック君は、その「ポジ」という言葉そのものを言ってるんじゃないんですけれど、「ポジ」という言葉が入る全ての台詞に股間が反応しちゃうわけですね。色々な箇所に出てくるんですが、ラストシーン、成人して実習生として女子校にやってきたときも、遅刻してきた女生徒に「新しい実習生みたいね(セロウン キョセンインガボジ)」と言われて、「あああああ」と反応して終わるという、最後のギャグにも使われています。
司会: コメディ系の言葉遊びっていうのは韓国映画に限らずどの国の映画でも翻訳に苦労するところですね。韓国語を勉強されている方は、「ポダ」が「見る」という意味だということをご存じかと思います。その変形で「ポジ」。中学生4人組とキム・ソナ演じるユリ先生が昼食を一緒に食べているシーンで、「ポジ マルゴ(見てないで)」と言うところがあって、そのときユリ先生の口の動きをアップで撮っていましたので、韓国語をある程度ご存じの方はなんとなくおわかりいただけたのではないかと思います。


左:尹春江さん、右:田代親世さん

司会: 続きまして田代さんにお聞き致します。「キャンディ」「テリー」という人名が頻繁に出てきまして、これもまたこの作品を楽しむキーワードだと思うんですが、このへんの事情を解説いただけますでしょうか。
田代: 日本でも『キャンディ・キャンディ』っていう漫画がすごく人気で、一世を風靡しましたが、韓国でもやっぱりすごく人気があったんですね。日本でテレビ放送されたのは1976年の秋からだったんですが、韓国はすぐその翌年の1977年からやっぱり放送が始まってたんですね。ですから、ほとんど日本と時差がなく人気があったわけなんです。それまで韓国ではアニメっていうのは小学生が見るものだっていうイメージだったんですけれど、この『キャンディ・キャンディ』はそれを中・高生にまで高めたっていうことで、それだけ大勢の人が見て夢中になったアニメだったんです。で、日本ではもう『キャンディ・キャンディ』は昔のことで、割と忘れられていて「テリー」だの「アンソニー」だのと夢中になった時代も過ぎ去ったかなと思うんですが、韓国ではまだまだ健在でして、ちょっとこう髪が長くて愁いを帯びた素敵な男性のことを「テリウス」っていうんですね。「テリー」のことを韓国では「テリウス」って言うんです。
司会: 芸能人の方でも「テリウス」というあだ名の方は、もう何人もいらっしゃるそうですね。
田代: もう何人もいるんですね。アン・ジェウクっていう俳優さんがいて、BS日テレでちょっと前だったかと思いますが『星に願いを』っていうドラマが放送されたんですが、このドラマ自体がもう『キャンディ・キャンディ』を元ネタにしているようなドラマなんですけれども、それでまさしくテリウスの役をやったのがアン・ジェウクだったんです。で、すごく陰りを帯びたちょっと孤独な青年ということで、髪がちょっと長かったので「テリウス アン・ジェウク」っていう枕詞が付くくらいで、あとウォンビンさんも髪が長い時代があって「テリウス」があだ名だった時期があるんです。あと、清水エスパルス(当時)にいるアン・ジョンファン選手っているじゃないですか。彼も髪が長いですよね。彼が「グラウンドのテリウス」というふうに言われていて・・・(会場:笑) 「芸能界のテリウス」とはまたちょっと違うよっていうことで「グラウンドのテリウス」って呼ばれているんです。それぐらい、今でも「テリウス」っていう表現が使われるくらいで、映画の中にも出てきましたよね「あなたのテリウスなの? あれが」という感じで。
司会: そうですね、この作品を今回紹介しようと思ったきっかけの一つは、色々なサブカルチャーを通じて日本と韓国は知らず知らずのうちに繋がっている、ということが作品を通じて分かるかな?と思ったからです。日本で30代、40代の女性でしたら『キャンディ・キャンディ』は皆さんご覧になってらっしゃると思うのですが、そういう方々が『夢精期』をご覧になると「キャンディ」「テリー」という台詞を非常に面白く受け止められる。そこから懐かしさを感じることができる。今、韓国で映画を作っている世代は、昔『キャンディ・キャンディ』を見て育った世代で、それを違和感なく映画に取り入れている。それを見た日本人の方はさらに楽しんでしまう。ひょっとしたら、韓国の方より日本の方のほうがより楽しめる作品なのかな?と感じまして、それで、今回上映することにしました。

司会: あと、ちょっと私が面白いなと思ったのは、教育実習生という制度が韓国にもあるんですね。
田代: そう、あるんですね。この映画の中でもキム・ソナ演じる先生が男子校に行きますよね。韓国では、自分で自分の好きな学校を選んでその学校の校長先生の許可を得れば、そこに実習に行けるという制度なんです。
司会: 日本の場合はだいたい自分の母校ですが・・・
田代: はい、韓国でもほとんど母校に行くんですけど、やっぱりみんなが母校に行っちゃうと定員オーバーになっちゃうじゃないですか。そういう場合も考えて、自分の選んだところに行けるという制度があるようです。最近、韓国で大人気の芸能人でクォン・サンウっていう男優さんがいるんですけれど、彼、ちょうど大学4年生で美術の勉強をしていて、自分のお兄さんが先生を務めている中学校に行って、一ヶ月間教育実習をしました。そういうふうに自分の好きなところに実習に行けるので、ユリは自分の憧れのビョンチョル先生の学校を調べたんじゃないかと私は思います。

司会: この映画は背景が1988年で、ちょうどソウル五輪の年なんですね、劇中「ホドリ君」なんかも出てきて、私は懐かしんでいたんですけれども、最後の現在2002年のシーンは一転して女子校になっていて、しゃべり言葉が全然違いますね。
尹: そうですね。1988年の中坊4人組がしゃべる韓国語と、2002年のワールド・カップが開かれた時期、女子校で話されている韓国語は、全く違うんですね。私なんかは、ああ言葉ってやっぱりすごく変わってるなって、もちろん男言葉と女言葉の違いはあると思うんですけれど、韓国が日に日に変わっているっていうことが言葉使いからも読み取れる、そういったことを感じました。
司会: この作品は1988年のソウル・オリンピックと、2002年のワールド・カップという、韓国という国にとって大きな節目となる年を背景にしているんですが、本当にたった14年の違いなんですが、その中でこれだけ変わったんだなっていうのを感じますよね。

司会: 尹さんは1988年からソウルに留学されていたと伺いましたが、この映画の1988年当時の描写というのはいかがでしょうか?
尹: うまく描いていると思います。素朴で純朴な古き良き時代を、場所は特定できないんですが、おそらくソウルの近郊だと思うのですが、そういったちょっとダサ目の風景をよく描いていると思います。
司会: ローラー・スケートが出てきますが、『友へ/チング』にも同じようなシーンがありました。これは当時、流行っていたわけですか?
尹: 流行ってました。いわゆる不良の溜まり場だったんですね。ちょっとした不良の溜まり場で、この映画で4人組がナンパする女の子達の格好がすごいですが、当時ちょっと遊んでる子たちのファッションはあんな感じでした。ちょっと垢抜けてないですけれど。(会場:笑)

司会: 服装で思い出したのですが、『夢精期』の中学生は私服なんですが、明日上映する『ムッチマ・ファミリー』の第2話『僕のナイキ』、これもやはり中学生を主人公にした作品なんですが、こちらのほうでは日本式の学ランを着ています。同じ韓国なのに、あれっ?と思ったのですが・・・
田代: 全斗煥(チョン・ドゥファン)大統領が政権を取ったのが1980年のことなんですが、その2年後、1982年から、制服は日本が支配していた頃の、植民地支配していた頃の残り香だから、やめようという動きがあったと聞いています。
司会: そうすると昔は学ラン、1982年以降は私服に変わったということですか。
田代: ええ、1982年ぐらいから私服になった時期があったんです。当時は軍事政権でしたから国策といっていいのか、一斉に私服になって、私の友人なんかは、当時みな喜んだらしいんですね。ただ、私服になると貧富の差が目立つ。特に1980年代初期の韓国っていうのは今以上に貧富の差が激しかった時代で、親からの反応がよくなかったそうです。それに、思いあまって少女たちがデパートで洋服を万引きするような事件もあって、この辺になってくると韓国の人も記憶が曖昧なんですが、おそらくなし崩し的に、各校の校長の裁量で、制服でも私服でも自由にしていいよ、というふうになったらしいです。私の友達で、1969年生まれの男性がいるんですが、中学校のときは私服だったけど、高校に入ったら制服だったと言ってました。それで、『夢精期』は1988年が背景なので、ああ、この学校は私服だったんだなって思いました。ちょうど、盧泰愚(ノ・テウ)大統領になって政権が変わったころですよね。
司会: 明日の『ムッチマ・ファミリー』の中の『僕のナイキ』は、おそらく1982年か1983年あたりが背景になっていると思いますが、そうすると、ちょうど服装に関する変わり目の年だったということですね。

司会: 尹さん、今回、字幕の翻訳で色々ご苦労があったかと思うのですが、なにか面白いお話がございましたら、お願いします。
尹: そうですね、最近はドラマの翻訳のお仕事も多いのですが、通常、横字幕で一行13文字が主流です。1秒間に人間が読める文字というのは、だいたい4文字なので、登場人物がしゃべっている時間を計測して、その秒数から一枚の字幕スライドに何文字まで入れられるかを計算して、字幕翻訳家はその文字数にあわせて字幕台本を翻訳していきます。それで、今回の字幕が、「縦字幕で一行11.5文字」と言われたときは、ちょっと戸惑いました。横字幕で一行13文字に慣れていましたので。たった2文字、3文字というのが私たちにはとても大きくて、最初聞いたときは「厳しいな」って思いました。あとスクリーンの右側に縦に字幕を出すというのも慣れていなくて、字幕が実際にスクリーンに投影されたとき、観客からどのように見えるのか、イメージしにくい部分もありました。
司会: 1行13文字と1行11.5文字ですと、2行あるので最大3文字違うわけなんですが、それだけでも翻訳は根本的に変わってしまうものなんでしょうか。
尹: 変わりますね。ですから、私なんか、変な話ですけれども、お風呂に入っていても、ご飯を食べていても、あれこれ字幕について考えちゃいます。本当はその場でパッパッと書いていかないと仕事にならないんですが、どうしてもいい訳が思いつかないときがありまして、あーでもないこーでもないと、四六時中考えています。あと、これは職業病かも知れませんが、プライベートで映画を見ていても、字数数えちゃうんですよ。いろんな映画で。(会場:笑)
司会: 今回は3人の方に字幕翻訳をお願いしたんですが、別の方からも、やはり縦字幕で一行11.5文字というのは初めてで、「いい経験させていただきました」と、お礼まで言っていただきました(笑)。その方は、韓国に行かれて現地でも作品をご覧になることが多いそうですが、「もし、この作品に私が字幕をつけるとしたらこんなふうに付けるわ」ということを考えながらご覧になっているそうです。あと、私もシネマコリアを主催する上での職業病といいましょうか、色々な映画祭に行くんですが、ホールに入るとすぐに座席数を数えたり、スクリーンの大きさをチェックしたり、音響の状態を調べたり、どの角度から観てもきちんとスクリーンが見えるホールかどうかチェックしたりするようになってしまいました。(会場:笑)

司会: 田代さん、今日ご覧いただいた『夢精期』に限らず、今回紹介する4作品の中で、こういう部分を押さえておくと面白く見れますよっていうポイントはありますか?
田代: ポイントですか・・・ 私は、職業病じゃないですけど、韓国と日本、ここが違うわね、っていう部分ばかり気にして見ちゃうところがあります。
司会: 今年、田代さんが出版された『韓国はドラマチック』の後半で、日本と韓国の文化的な違いなど書かれていて、非常に面白いなあと思いました。
田代: ええ、あれは、自分でもすごく興味のあるテーマなので、いつもそういった箇所ばっかり気になっちゃうんですね。香港映画も好きなんですが、「あ、香港はここが違う、韓国はこうなんだ」とか。今回の作品では『純愛中毒』で遺灰を撒くシーンがあるんですけど、「ああ、韓国でもやっぱり撒くんだ」って思いました。日本では火葬が普通で、お墓に納めますよね。韓国は儒教の影響もあって土葬が一般的なんですけど、病気や不慮の事故で亡くなったりとか、自分に子供がいなくて、子孫がいなくてお墓の面倒を見てもらえないような立場の方っていうのは、火葬にして、その骨を撒くんだと聞いていました。それで、『純愛中毒』のシーンを観て、「ああ、やっぱり撒くんだ。海とか川とか山とかそういったところに撒くんだなあ」と思いながら観ていました。
司会: どうもありがとうございました。明日『純愛中毒』をご覧になる方は、その点も気を付けてご覧になられると、より面白いかも知れません。さて、時間が多少残っておりますので、これからは観客の皆様から、ご質問を募ろうかと思います。

質問: さきほどの字幕の件ですが、例えば、元の原語のルビを振るとか、そういった手段は今回とれなかったのでしょうか。特定の言葉「ポジ」だけに反応しているのか、それともスケベな言葉が出てきたら常に反応しているのかが、観ている間は分からなかったというのが正直なところで、なにか代案がなかったのかな?と思いました。
尹: この箇所については、どうしたら一番わかりやすいか、という話し合いを何度かしたんですけれど、チ・ソックが反応するとき、効果音も入って分かりやすくなっているので、今回はルビを振らなくてもいいでしょうということになりました。
司会: 今、お話しいただいたルビを振るアイデアは当然検討しておりまして、ルビ振りバージョンの字幕も実は作ってみました。「ポジ」というのは女性器を表す「お」から始まる四文字言葉なんですが、それをそのまま字幕に出して、そこに「ポジ」とルビを振るという方法ですね。英語の作品で同じような言葉遊びがある場合、ちょくちょく使う手なんですが、ただ、英語ですと、だいたいみなさん中学校、高校と勉強されていて、ルビを振れば、なんとなくそういうことなのかな?とご理解いただける可能性が高いんですけども、果たして「ポジ」とルビを振って、それが韓国語であるということをご理解いただけるだろうか?というのが、ちょっと引っかかりまして、最終的には変にルビを振って字幕を読みにくくするより、普通に訳してスムースに字幕を読んでいただいたほうがいいだろう、という結論になりました。

質問: 田代さんに質問です。『夢精期』の中学生4人のうちで、顔がちょっとかわいい子が主役的なポジションにいたんですが、田代さん的に、この子はこれから注目するべきっていう子がいたら教えていただきたいんですが。(会場:笑)
司会: 主役の子は、ちょっと妻夫木君に似てますよね。
田代: 私もそう思って見てました。ただ、私は美男好みなので、彼はどちらかというと、ちょっとかわいいタイプだったじゃないですか。だから、うーん、どうなのかなあっていうのが本当のところです。(会場:笑)
司会: 田代さんは、パリッとした美男子でないとダメなんですね。
田代: はい、貴公子タイプが好きなので。(会場:笑) でも、韓国で映画で活躍するのは味のあるタイプなんですよね。韓国では、すごい美男俳優っていうのはテレビのほうで重宝されていて、「花美男」というように、花のように美しい男性がテレビでは活躍しているんですけど、映画の中で活躍してる俳優さんを見ると、ソン・ガンホだったりソル・ギョングだったりリュ・スンボムだったり・・・(会場:笑) 個性派っていうんでしょうか、今日のイ・ボムスもそうですよね。すごい個性派で強烈な何かを持っている、そういう人が主役を張って、マネー・メイキング・スターって言われるんですね。そのへんがちょっと日本とは違いがあります。だんだんテレビで活躍した俳優さんが映画に進出してくるようになってるんですけれど、顔がいいからといってヒットするとは限らなくて、今、日本でも大人気のペ・ヨンジュンさんも、今年、初めて映画に挑戦してますけど、みんな心配しながら期待しながら作品が出来上がるのを待っている感じです。結構、厳しいですよ、韓国の観客は。
司会: ちなみに4人の中ですとチ・ソック君(チョン・ジェヒョン扮)、先ほども話が出ましたが「ポジ」という言葉に反応してしまう彼なんですけれども、彼が年末に青龍賞っていう韓国の大きい映画賞があるんですけど、そちらで助演男優賞にノミネートされていました。私は、彼なんかいい味出してるなあと思って見ていたんですが。やっぱり彼が一番記憶に残りますよね。
田代: 確かに。役どころもおいしい役どころでしたしね。
司会: 彼、実はもう大学生でいい歳なんですよね。(会場:歓声「えーっ」) やはり彼は彼で化けているんですよ。だから、まさしくイ・ボムス型の俳優になっていくんじゃないかと思います。私はチ・ソック君、大好きなので注目しております。

質問: どなたにお伺いすればいいのか分からないんですが、カップラーメンをマスターベーションに使うという描写がありまして、そういうのって僕みたいな日本の若い男性の中でも、やっただやらないだって言われているような、一種の都市伝説みたいなものですが、韓国でもこういったものってたくさんあるんでしょうか?
司会: 女性のゲストお二人には厳しい質問ですね。(会場:笑) 私は韓国には住んだことがないので本当のところは分からないのですが、この映画で出てくる、中学生が溢れんばかりの性欲を処理する方法、いろんな処理法が出てきまして、あとマクワウリの想像のシーンもありましたけれど、韓国でもそういった描写が話題になっていまして、「それが懐かしい」というようなレビューも読んだことがありますので、だいたい、ここで描写されている内容は一般的なものなのではないかと思います。

質問: 尹さんに伺います。先ほど、1988年当時の男子中学生の言葉と、2002年の女子学生の言葉でたいへんな違いがあると仰られたんですが、1988年当時の男子中学生の話の中で、1988年当時をあらわすような流行語であったりとか、象徴するようなニュアンスの言葉が出てきていましたら、その部分を教えていただきたいんですが。
司会: そうですね、この作品の場合、台詞でというより、1988年当時の風俗を映像で語っている部分が多いかと思います。ローラー・スケートがその代表でしょうか。私が「こんなのあるの?」と思ったのは、映画の後半で、キム・ソナ演じるユリ先生に味の素とサイダーを混ぜて飲ませようとしますよね。あれは催淫効果があるってことなんでしょうか。そんなことある訳ないと思って、外国人の私は観ていたんですが、ああいったものは当時本当に流行っていたんでしょうか? これも一つの伝説かもしれませんが。
尹: 流行ってるという表現が正しいかどうかは分かりませんが、確かにありました。ああいうふうにして女の子をちょっとどこかに連れ込んじゃうみたいな時に、使うという。
司会: 今はもうないですよね。どう考えても効果あるとは思えないんですけど。映画の中でも何もなかったって言ってますし(笑)。
尹: 1988年当時を表す言葉・表現というのは、今、ちょっと頭には浮かばないんですけれど・・・ そうですね、あと、しゃべりの速度も違いますね。昔のほうが断然遅い。男の子達がしゃべっている言葉のほうが分かりやすいので、ヒアリングの勉強をするにはすごくいいと思いますね。反対に、女の子達のキャッキャキャッキャした言葉は、私はすごく聞き取りにくくて、苦労しました。

質問: いくつかのドラマを見ていて、お母さん、「オンマ」っていう言葉に対して、字幕が「ママ」だったり「おかあさん」だったりしたものを見たんですけれど、「オンマ」という言葉は、男の人も普通に使っておかしくない言葉なんですか?
尹: そうです。ええ、全然、大丈夫。男の子も女の子も大人でも子供でも「オンマ」は使います。ただ、私の場合、字幕を付けるときは、その人の育った環境などを考えて、「ママ」にするのか「おかあさん」にするのか使い分けます。
質問: お父さんは「アッパ」ですよね。あれも男の人も使いますか。
尹: ええ、使います。
田代: 私が聞いたのはある程度の年齢になると「アボニム」って言ったり「アボジ」って言ったり・・・
尹: 人前ではね。私たちが家では「パパ」って言っていても、人前では「うちの父が」と言うのと同じです。
司会: 字幕の定訳といったら変ですけれども、「オモニ」は「おかあさん」と訳し、「オンマ」は「ママ」と訳すとか、一応のルールみたいなものはあるんでしょうか。先ほどお話しされたようにケースバイケースだとは思うんですが。
尹: それはないと思います。ただ、前半で「ママ」って訳しているのに、後半では「おかあさん」になっているとか、そういうのは絶対いけないですね。あと、個人的には男の子については、「おかあさん」ではなくて、「かあさん」っていうのがいいかなと思っています。それ以外では、例えば、あまりに貧しい生活をしているのに、「ママ」って言うのもちょっと変な感じがしますので、そういうときは「かあさん」にすると雰囲気が出るんじゃないかと思います。

司会: どうもありがとうございました。尹さんは明日上映いたします『純愛中毒』の字幕もご担当いただいております。明日ご覧になる方は是非楽しみにお待ちください。田代さんのほうはご著書を物販コーナーで販売しておりますので、是非、手にとって読んでいただければと思います。では、お二人とも今後ともご活躍ください。ありがとうございました。(会場:拍手)


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