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『ア・テイル・オブ・トゥー・シスターズ』
キム・ジウン監督インタビュー



Reported by 月原万貴子(月子)

日時:2004年2月21日(土) 16:20〜16:35
会場:ホテルシューパロ 千鳥の間
通訳:根本理恵
聞き手:月原万貴子

 ゆうばり国際ファンタスティック映画祭2004のヤング・ファンタスティック・グランプリ部門の審査員として来日されたキム・ジウン監督。ゆうばりの印象や、招待部門で上映された自作『ア・テイル・オブ・トゥー・シスターズ(邦題:箪笥)』についてお話を伺った。



Q: まず、ゆうばり映画祭の印象についてお聞かせください。
A: この映画祭にはこれまでにも数多くの韓国の映画人が参加していますが、彼らが皆、いかに素晴らしかったかを楽しげに語るので、自分も行ってみたいと思っていました。実際に来てみると、彼らの言うとおりでした。私も帰国後は、色々な人に語りたくなると思います。

Q: 監督は舞台演出を経験されてから映画監督になられていますが、舞台と映画の違いは感じられますか?
A: 私は演劇出身といっても舞台演出の経験は2本(つかこうへい作の『熱海殺人事件』と『蒲田行進曲』)だけなんです。『熱海殺人事件』は私の姉(女優のキム・ジスク)の主演が先に決まっていまして、その関係で私が演出することになりました。幸いにも好評だったので続く『蒲田行進曲』も演出しました。舞台も映画も現実ではなく、ある種のファンタジーを創造して作り上げていくものだということ、そして多くの人との共同作業だということは、同じだと思います。ただ舞台は劇場という空間の中で多角的に持続的印象を作り上げていくものなのに対し、映画は瞬間的な集中力を必要とされるものであり、舞台よりも総合的なものと思います。

Q: 『ア・テイル・オブ・トゥー・シスターズ』ですが、映像の美しさが印象的でした。特に物語の舞台となる古めかしい一軒家が素晴らしいと思いましたが、あれは元々あったものを改装したのですか?
A: この映画のために建てたものです。旧日本式木造建築に現代的な部分をプラスしました。木造にこだわったのは、そのほうがなにものかの気配や物音など気味の悪い音を出しやすいからです。

Q: キャスティングが絶妙ですね。特に継母役のヨム・ジョンアさんの演技は怪奇現象のシーンより怖かったです。クール・ビューティーなイメージだったヨムさんを、エキセントリックな継母役に選んだのは?
A: 確かに彼女は今まで出演した映画やドラマから、そのような印象を持たれていたと思いますが、実際の彼女は明るくてさばさばした感じの女性なんです。そのくせちょっとした物音にも飛び上がって驚くような神経質なところもある。彼女のそんな様子を見ていて、ホラーに出演してもらったら面白いかもと思ったのです。結果は成功で、「ヨム・ジョンアの新しい発見」という好意的な批評もいただきました。

Q: ヒロイン役の2人は、まったく顔が似ていないのに、不思議なくらい姉妹に見えましたが。
A: あの2人は性格がまったく違います。姉役のイム・スジョンは大人しくて口数が少なく、現場でも自分の出番まで緊張してじっと集中しているタイプです。一方、妹役のムン・グニョンは明るく元気で自分の出番のない時でも現場に来て、スタッフとおしゃべりしているような子です。それでいていざ本番となるとすぐに劇中人物になりきることができる。性格が正反対のせいか、最初はよそよそしかったんですが、撮影が進むにつれてどんどん仲良くなってきて、終わる頃には2人とも「本当の姉妹ができたみたい」と言っていました。その言葉を聞いて、私もうれしくなりました。



『ア・テイル・オブ・トゥー・シスターズ』 鑑賞ノオト

Text by 月原万貴子(月子)

 スミ(イム・スジョン)とスヨン(ムン・グニョン)の2人姉妹が病気療養を終え、水辺に立つ美しい自宅へと帰ってきた。継母のウンジュ(ヨム・ジョンア)は大はしゃぎで2人を迎えるが、2人はウンジュを嫌っており3人の間には険悪なムードが立ち込める。父(キム・ガプス)は逃げ腰気味で、双方の様子を伺うばかりだ。初日から悪夢に悩まされ、何ものかの気配に怯えるスヨンをスミは必至に守ろうとするが、次第に家の中のあちこちで怪奇現象が起こり始める。

 韓国の古典『薔花紅蓮伝』を基に作られた美しくも悲しいゴシック・ホラー。『薔花紅蓮伝』は、継母に事故死に見せかけて殺された姉妹が幽霊になって地方長官に訴え出るという話だそうだが、本作ではそこから継母と前妻の娘たちとの対立というモチーフのみを取り上げ、現代的家庭劇を作り上げている。


画像提供:ゆうばり国際ファンタスティック映画祭

 水辺にぽつんと1軒だけ建てられた木造家屋。物語はほぼこの家の中だけで進められる。花柄の壁紙、パステルカラーに彩られた家具など、まるで少女漫画のような内装なのに、そこにはなんの温かみも感じられず、ひんやりとした空気が流れている。それはこの家の中から愛情が欠落しているからだ。医師である父と看護士であった継母が、実母の生前から親しい関係であったことを暗示させる写真を見つけ苛立つスミ。そんな姉の陰に隠れつつ、継母に怯えるスヨン。娘たちの態度に次第に情緒不安定になっていくウンジュ。不穏な人間関係に反応したかのように家のあちこちで起こりだす怪奇現象。本作ではこれらをおどろおどろしく表現することなく、むしろ美しく描き出すことで、その悲劇性を高めることに成功している。

 キャストも充実。主役の姉妹を演じるイム・スジョン、ムン・グニョンの2人はキャリア的には新人なれど、ともに確かな演技力の持ち主で、将来が楽しみな若手女優だし、父親役のキム・ガプスは、板ばさみになった男の苦悩をきちんと伝えてくれている。この役は彼以外の俳優が演じたら、ただ優柔不断なだけにしか見えなかっただろう。しかし、なんといっても凄いのがヨム・ジョンアだ。これまでの彼女は、『カル』『H[エイチ]』で演じてきたような冷静な美人のイメージが強かったが、本作では違う。とにかく怖いのだ。ごく普通に早足で歩いてくるだけでも怖い。そして早口でまくし立てるのが怖い。正直言って、私は怪奇現象のシーンより、継母が声高に笑うシーンのほうがずーっと怖かった。

 本作は、2004年夏に日本公開予定。韓国での公開前にドリームワークスがリメイク権を獲得したことも話題となっている。

【評価:★★★★】


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