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第6回釜山国際映画祭リポート

Text by 尹春江
2001/12/3受領



● 注目株は韓国とタイ!

 第6回目を迎えた釜山国際映画祭(PIFF)が11月9日から17日まで開かれ、60の国と地域から集まった201本の作品が上映された。オープニングは韓国映画『黒水仙』、クロージングはタイ映画『スリヨータイ(Suriyothai)』。今アジアで最もエキサイティングな国として注目されている二つの国の作品が選ばれた訳だ。世界は今アジア映画に注目している。


BEXCO
画像提供:土田真樹

映画祭ポスター
 今年のオープニングは、従来の海雲台・屋外ステージではなく2001年5月にオープンしたばかりのBEXCO(釜山展示コンベンションセンター)第1展示場(客席数 4,000!)で行なわれた。オープニング作品は『黒水仙』。「1980年代韓国映画の旗手」ともいうべきペ・チャンホ監督が久々にメジャー映画会社と組んで製作したアクション・ミステリー。宮崎県でロケを行ない、撮影当初から話題となっていた作品だ。主演は日本でも人気のイ・ジョンジェ『イルマーレ』『純愛譜−じゅんあいふ−』)と、1980年代ペ・チャンホ監督作品に数多く主演したアン・ソンギ。この黄金コンビの復活に在りし日に思いを馳せたオールドファンも多いことだろう。

 朝鮮戦争当時、捕虜収容所内の共産主義勢力と反共勢力の対立を素材としながら歴史によって引き裂かれた者たちの悲恋を描いた内容だが、テレビのサスペンスものといった感が拭えない。韓国では11月16日から公開されたが本編に対する韓国人の評価が気になるところだ。


『黒水仙』
画像提供:CINEMA SERVICE

英語字幕付予告編300K(High Quality)
100K(Low Quality)
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リンク許諾:CINEMA SERVICE
※ CINEMA SERVICEは本作品の海外
セールスを担当しています。

● 386世代の成長

 今回注目すべき点は、デビュー作で脚光を浴びた若手監督が第二作を引っ提げて釜山入りしていたことだ。『八月のクリスマス』でカンヌに招待されたホ・ジノ監督の『春の日は過ぎゆく』をはじめ、『モーテルカクタス』パク・キヨン監督が『らくだ(達)』を、『蜂の飛行』ミン・ビョンフン監督が『だいじょうぶ、泣かないで』を、そして『三人友達』イム・スルレ監督が『ワイキキ・ブラザース』を出品。他にイ・ジェヨン『純愛譜−じゅんあいふ−』)、ソン・ヘソン『パイラン』)、チャン・ヒョンス『ライバン』)など、386世代と呼ばれる若手が中堅監督への道を着実に歩んでいる姿を力強く見せてくれていた。


● 海外でも好評な韓国映画

 他に、『フラワー・アイランド』『受取人不明』が、ヴェネチア国際映画祭など海外で高い評価を受けたことも大きな話題となっていた。『フラワー・アイランド』は、カンヌで韓国映画としては初めて短編コンペ部門の審査委員賞を受賞した『最後のピクニック(原題:遠足)』のソン・イルゴン監督の長編デビュー作。心に傷をおった10代、20代、30代の三人の女が、悲しみを忘れさせてくれると言われる伝説の島に向かうという内容。監督は韓国人女性の女としての「痛み」や「苦しみ」を今までとは全く違う視点で見せたかったそうだ。「大人の『童話』を作りたかった」とも。


ソン・イルゴン監督
画像提供:土田真樹


『フラワー・アイランド』
画像提供:ドラゴンキッカー

 『受取人不明』キム・ギドク監督は早撮りで有名な監督だが、既に韓国公開されている『受取人不明』の他に新作『悪い男』も映画祭でワールドプレミア上映されていた。二作品が一度に上映されたのは釜山映画祭はじまって以来の“快挙”といえそうだ。『悪い男』は、ひとめぼれした女子学生を売春婦にしてしまうヤクザ(悪い男)の物語。キム監督いわく「加害者と被害者、支配者と被支配者」というような簡単な構図ではなく、「二人の運命」を描きたかったとのこと。今や超売れっ子の彼だが、開口一番「僕の映画のチケットが釜山で売切れたのは初めてです。うれしいです」と観客を笑わせていた。


『受取人不明』
画像提供:ドラゴンキッカー


サインを求められるキム・ギドク監督
Photo by kame
画像提供:韓国映画情報 Korean-Movie.Net


● PPP部門にも有望な新作企画が

 一方、今年第4回目を迎えたPPP(プサン・プロモーション・プラン:映画の企画マーケット)には19作品がエントリー。注目すべきは今村昌平監督が次回作『新宿桜幻想』の総製作費6億円のうち4億円をPPPに出資要請したこと。記者会見には多くの韓国メディアが押し寄せ“日本の巨匠”に熱い質問を浴びせていた。監督はPIFFの「アジア映画の窓」部門に『赤い橋の下のぬるい水』も出品していた。


今村昌平監督
画像提供:土田真樹

 他に『青〜chong〜』の李相日監督が『ボーダーライン』を、『ペパーミント・キャンディー』イ・チャンドン監督が『オアシス』(今回も主演はソル・ギョングとムン・ソリ)を、そしてキム・ギドク監督がここでも新作の企画『弓』をエントリーしていた。


● 映画祭で感じたこと

 さて、釜山映画祭には毎回参加しているが今年、特に感じたことがあるので述べておきたい。ひとつは、全体的に少々盛り上がりに欠けていたように思えること。理由は、ここで上映される韓国映画の多くが、既に韓国内で公開されているか、もしくは既に各国の国際映画祭で上映されているせいではないだろうか。このことは、韓国映画が海外で注目を浴びている証拠でもあるので、喜ぶべきことなのかもしれないが、やはりココでしか見られない、ココで初めて見られる作品が少ないのは少々さびしい気分だ。

 そして、もうひとつが、韓国でヒットしなかった作品の中にも実は秀作がたくさん存在しているということ。今年の韓国映画界においては、『友へ/チング』『新羅の月夜』『猟奇的な彼女』『花嫁はギャングスター』など興行面で大成功した作品が数多く生み出されたが、作品自体の「質」や「深み」においては相対的に「貧弱」だったように思う。

 今回海外ゲストを対象にした「映画祭で最も印象深かった映画は?」という調査(『シネ21』デイリー取材チームによる)では、『子猫をお願い』チョン・ジェウン監督)がトップを占めた。またプレス用のビデオルームにおける貸出し順位第一位も同じく『子猫をお願い』だった。私もビデオルームで見たうちの一人だが、映画祭で見た八本の韓国映画の中で最も印象に残った作品だ。ただしこの作品、韓国内では10月13日に公開されたが不入りで約二週間ほどで上映打ち切りとなった作品でもある。


『子猫をお願い』
画像提供:CINEMA SERVICE

英語字幕付予告編300K(High Quality)
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※ CINEMA SERVICEは本作品の海外
セールスを担当しています。
 韓国人はもっといろんな映画を見るべきだと思う。見る側の水準が低い、というと語弊があるかもしれないが、韓国ではヒットし始めると皆が争ってその作品を見るため一本かぶりになる傾向が強く、「作品に対する評価」もあまりに画一的で単純すぎる。見る側が「底上げ」しない限り「良い映画」はきちんと評価されず、彼らのいう「面白い映画」も水準が低くなるばかりだ。

 滞在中、韓国のニュース番組の中で『ワイキキ・ブラザース』(これも韓国では10月27日に封切られたが、早い段階で打ち切られ、今は単館上映)や『子猫をお願い』を再上映しようという動きについて報じていた。特に『子猫をお願い』はその番組の中でも20歳前後の若い女性の友情や苦悩する姿をみずみずしく描き出していると肯定的だった。主演のペ・ドゥナが良かった。そして『ワイキキ・ブラザース』のオ・ジヘ。決して大スターではないけれど彼女たちの演技・存在は素晴らしく、見た後にじんわり胸に伝わるものがある。


『ワイキキ・ブラザース』
画像提供:ドラゴンキッカー


● 更なる発展に向けて

 最後に運営について少々苦言を呈したい。

 まずプレスに関してだが、今年の運営はかなり問題ありだ。プレスルームとチケット購入窓口がかなり離れた位置にあり、全く使いづらくそれ以前に分かりにくかった。加えて、チケットはどの作品も完売で、立ち見チケットですら売り切れという作品も。なのにそういう作品に限って、実際に会場へ行ってみるとかなり空席があるなど、理解しがたい状況をいくつか目にした。


賑わうメイン会場=南浦洞
Photo by kame
画像提供:韓国映画情報 Korean-Movie.Net

 釜山映画祭は当初から学生ボランティアの存在が大きな支えとなって運営されてきた。釜山のホスピタリティには目に見えない人たちの努力があったと思われる。しかし今年の400人の志願ボランティアには「マインド」を感じられなかったのは私だけだろうか。自分達だけで盛り上がっている感が拭えなかった。

 そしてティーチ・イン。だらだらと自分の意見を述べる韓国人には毎回少々苛立ってしまった。というより、これだけはそろそろプロに司会進行と通訳を任せてはどうだろうか? 一時間近いティーチ・インは果たして必要か? 監督や俳優が一生懸命しゃべっているのに無神経に席を立つ人も多い。


ティーチ・インの模様(本文とは関係ありません)
Photo by kame
画像提供:韓国映画情報 Korean-Movie.Net

 東京国際映画祭の運営と釜山映画祭のホスピタリティが合体したら最高に良い映画祭になると思うのだが・・・ 釜山映画祭も今年で6年目。これまでその良い面ばかりが強調されてきたが、アジア「最大」の映画祭という自己満足に陥るのではなく、次なるステージ、アジア「最高」の映画祭を目指してもらいたい。


第6回釜山国際映画祭決算

【基礎データ】

開催期間: 11月9日(金)〜11月17日(土)
会場: BEXCO、デヨン・シネマ1〜7、釜山劇場1〜3、シネシティ釜山1〜5
観客動員: 143,103人(うち有料入場者数 126,613人)
上映作品: 60ヶ国201作品を7部門で上映
ゲスト: 30ヶ国3,761名(国内 3,102名、海外 659名)
 ※ PPPゲスト(850名)とプレス(1,507名)を含む
HP: http://www.biff.kr/

【部門】

 ・アジア映画の窓(国際的に名声を受けたアジア人監督の新作と話題作)
 ・ニューカレンツ/新しい波(アジアの新人監督の作品部門)
 ・韓国映画パノマラ(最新韓国映画と未公開作を上映)
 ・ワールド・シネマ(アジア地域以外の作品部門)
 ・ワイド・アングル(短編とドキュメンタリー)
 ・オープン・シネマ(世界的な話題作をマンモス会場で上映)
 ・特別企画プログラム
  1.韓国映画回顧展 − シン・サンオク:時代の欲望を演出した「韓国映画の巨人」
  2.タイ映画の力 − ニュー・タイ映画との接近遭遇

【授賞結果】

PIFF
 最優秀アジア新人作家賞(ニューカレンツ賞)
  『フラワー・アイランド』(ソン・イルゴン監督)
 同Special Mention
  『子猫をお願い』チョン・ジェウン監督)
 功労賞
  Eva ZAORALOVA(Karlovy Vary国際映画祭執行委員長)
 国際映画評論家協会(FIPRESCI)賞
  『フラワー・アイランド』(ソン・イルゴン監督)
  『春の日は過ぎゆく』ホ・ジノ監督)
 アジア映画振興機構(NETPAC)賞
  『子猫をお願い』チョン・ジェウン監督)
 同Special Mention
  『ワイキキ・ブラザース』イム・スルレ監督)
  『悪い男』キム・ギドク監督)
 ソンジェ・ファンド(最優秀韓国短編映画賞)
  『シャム ハード・ロマンス』(キム・ジョング監督)
 ウンパ・ファンド(最優秀韓国ドキュメンタリー賞)
  『別れ』(ファン・ユン監督)
 PSB観客賞
  『フラワー・アイランド』(ソン・イルゴン監督)

PPP部門
 釜山賞(PPP部門最高の賞、2万ドル授与)
  『弓』(キム・ギドク監督)
  『The Moon Also Rises』(LIN Cheng-sheng,台湾)
 KTB賞(KTBネットワークが1万ドルを授与)
  『Nothing to Lose』(Danny PANG,香港)
 Hubert Bals基金賞(ロッテルダム国際映画祭のファンド、1万ドル授与)
  『The Truck』(Kambozia PARTOVI,イラン)
 コダック賞(2万ドル相当のネガ・フィルムかポスプロ・サービスを提供)
  『Cry Woman』(LIU Bingjian,中国)
 マイビー賞(マイビーが1千万ウォンを授与)
  『オアシス』(イ・チャンドン監督)
 イェテボリ映画祭基金賞(10万スウェーデン・クローナ授与)
  後日、発表
 KF-MAP(SONY PCL が韓国映画のポスプロを支援)
  『弓』(キム・ギドク監督)

以下、韓国の新しい才能を発掘するNDIF(New Directors in Focus)を対象とする賞
 Zemiro賞(Zemiroが1千万ウォンを授与)
  『ひび』(ナム・サングク監督)
 Movie Zemiro賞(Zemiroが500万ウォンを授与)
  『Mirror 鏡の中』(キム・ソンホ監督)
 無限賞(無限技術投資が1千万ウォンを授与)
  『ハンプティ・ダンプティ・ラブ・ソング』(チェ・ヨンジン監督)
 BFC賞(釜山フィルム・コミッションが1千万ウォンを授与)
  『ハナ』(チョ・ウルリョン監督)

【解説】

 釜山国際映画祭には、招待作品を上映する7つの部門に加えて、映画の企画マーケットであるPPP(プサン・プロモーション・プラン)部門がある。PPP部門は映画を作りたい人と、映画に出資したい人の出会いの場。韓国に限らずアジア全域から新作の企画を持っている映画人と、有望な企画を探している出資者が集い様々な交渉を行う。また、公式エントリー作品には製作を支援する11の賞が授与される。
 "PIFF"以下に記した賞は、映画祭でスクリーニングされた作品が対象。今年は韓国映画が独占した。一方、PPP部門は映画の企画に対する賞で、ここでの受賞作品はこれから製作される。また、PPP部門では今年から新たに韓国の新しい才能を発掘するNDIF(New Directors in Focus)プロジェクトがスタート。長編映画デビュー前の有望な若手韓国人監督がもちよった企画に対しても四つの賞が授与された。以上、釜山映画祭の"賞"について若干の解説をしたが、こういった賞のあり方からも、アジア映画を評価し、アジア映画に資本を供与し、かつ韓国の若手監督にチャンスを与える、つまり自国映画を中心にすえたアジア映画の発展に寄与するという映画祭の方針がはっきりと読み取れる。


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