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PFFシアター韓国短編特選リポート

Text by ござーる(「韓国ラジオ放送の世界」
2001/4/26受領



 去る3月25日、東京国際フォーラムにて開催された『PFFシアター<シネフィル・イマジカ世界傑作短編集〜韓国短編特選〜>』に行ってきました。

 今回はインディーズ系作品の上映ということで、客足が少々心配でしたが、会場の映像ホールは、定員142席の8割ほど埋まっていました。客層は20代〜50代、男女比も半々といった感じで、特に20代前後の方が多かったようです。99年のPFFや山形国際ドキュメンタリー映画祭など、上映の機会が少しずつ広がってきている今、韓国短編も決して敷居の高いものではなくなったと感じられます。

 上映はビデオプロジェクターに、シネフィル・イマジカ側で字幕を付けるかたちで行われました。上映された作品は全部で6本。以下感想とともに紹介します。

 『敬礼の行方』(原題:キョンネ=敬礼)は、ハーレムのアパートを舞台に、2人の少年とナチに心酔する男との数分間の顛末を描いた作品です。男の狂気が高まる中、所々にボケが挿入される間合いが何とも巧みで、会場の雰囲気も「緊迫感」から徐々に「笑い」に変わっていきました。

 『調理場にて』(原題:オディカッタワンニ?=どこへ行って来たの?)は、毎日中華料理屋の調理場に閉じこめられて働く男の日常と小さな反乱を描いています。コンロの熱やチャジャンミョンの匂いまで伝わってきそうな、調理場のリアルな描写が印象的で惹きつけられました。この映画を観たら、韓国で中華料理屋に入るのが恐くなってしまうこと間違いありません(笑)。

 心中を目前にした家族の姿を描く『最後のピクニック』(原題:ソプン=遠足)は韓国短編映画の代表といわれている作品です。たった20分のストーリーなのに、最後の老人と子どものシーンで、思わず涙腺が爆発してしまいました。ソン・イルゴン監督は新作『フラワー・アイランド』の公式サイト(現在は閉鎖)で「心中という行為の中にある暴力性と犠牲を『最後のピクニック』のテーマにした」と話していましたが、私はむしろ、絶望の中での生命力のような、ある種ポジティブなものを感じながら観ていました。

 『非/常識』(原題:サンシク=常識)は、非常識な言動から巻き起こる3つのエピソードで構成されていて、最後まで観ると、実は同じ時間に同じ町内で起きていた出来事だった、と分かる仕掛けになっています。ひどい運転マナーや理不尽な「長幼の序」など、いかにも韓国的な?常識観のぶつかり合いに、つい「あるある!」と手を叩いてしまいます。

 『現代家族』(原題:カファマンサソン=家和萬事成)は、欲求不満を二重瞼の整形にぶつける妻、浮気している夫、自分勝手な息子の3人家族の本音と建前が、ブラックに、でもどこか「のどか」に描かれている作品です。私には予定調和なTVホームドラマの辛辣な皮肉のようにも思えました。主人公とホテルに行った若いツバメがズボン脱いで「今回だけの割引ですからね」と囁く場面なんて、韓国のTVドラマでは多分NGでしょうから。

 『ペットの背中』(原題:Existence=存在)は、6作品中唯一のアニメーションです。毎夜ペットたちが1日の疲れを癒しにやってくる秘密のバー、そこで語られる犬と猫の人生?観は・・・ 2匹は犬語と猫語でしゃべっていますが、ちゃんとハングルの翻訳字幕もついてます。大学でのアニメーション教育環境が急速に整いつつある中、韓国の短編アニメ界も元気があるなあ、と感じさせてくれる一作でした。

 全体として観客の反応も良く、中でも『ペットの背中』は最後まで笑いが絶えませんでした。また、『最後のピクニック』の上映後、休憩に入ったのですが、会場が明るくなった途端、私と同じく目頭を押さえていた人がたくさんいたのにびっくり!

 気になったのが、日本側でつけた題名が原題から随分変わっていることです。字幕も全体に元の台詞より冗舌になっていて、もうすこし直訳でも充分伝わるのでは、と思いつつ観ていました。また作品によってビデオの画質にばらつきがあったことも残念です。『敬礼の行方』や『ペットの背中』は状態の良いものでしたが、『最後のピクニック』,『非/常識』,『現代家族』は正直なところ画質があまり良くなく、特に『最後のピクニック』は前にフィルムで観たときの印象が大変強かっただけに、その色彩が再現されなかったのが惜しまれます。

 もちろん、今回のような機会は短編映画ファンの私にとってはとても有難いことですし、今度スカイパーフェクTVの『シネフィル・イマジカ』でも今回の上映作品を含む韓国短編が放映されるとのこと(*)。これからもこうした上映会が定期的に行われるようになって、韓国インディーズの多様な感性が、日本でも広く認知されていくことを望みます。個人的には、韓国の短編系映画祭ではその存在感を大いにアピールしているアニメーション作品群が、もっと紹介されないかと期待を抱いているところですが・・・

(*)「シネフィル・イマジカ」が、4月27日に韓国短編特集で、『現代家族』,『眠る子供』,『非/常識』,『最後のピクニック』,『ペットの背中』,『調理場にて』,『月の影』を放映。

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