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韓国映画を観る楽しみ

西村嘉夫(ソチョン)
1999/2/25執筆



 「一言で言って韓国映画の魅力とは何ですか?」と聞かれて戸惑うことがある。一昔前であれば、悲劇的な女性の一生を描いた作品など韓国映画には確かに一類型と呼べる物があった。しかし、最近の作品に関して言うと、個々の作品や監督一人一人の魅力を語ることはできても「韓国映画」という一つの枠組みの中で語ることは事実上不可能になりつつある。民主化から10年以上の歳月が流れ、それだけ韓国映画が成熟してきたとも言えるだろう。ともあれ、質問には答えなければならない。そこで、最近韓国映画が変貌しつつあるということを念頭において、「最近の韓国映画を観る楽しみ」について語ってみたい。

 以前の日本での韓国映画の紹介のされ方は、西洋に日本映画が紹介される方法と同じであった。つまり、韓国土着のもの、他の国にはないもの、西洋からみたオリエンタル・ミステリーなものが紹介されていた。言ってみれば日本とは違う異質なものを見ること。その典型例が『風の丘を越えて〜西便制』か。一方、韓国映画はこの数年大きく変わりつつある。プロデューサー中心の製作方法、新人監督の活躍、釜山国際を窓とした世界を見据えた映画作り、などなど。現在の韓国映画は土着的なものから、より普遍的なもの、その典型例は「愛」であり、それが1997〜1998年にかけての恋愛ドラマブームを呼んだのかもしれないが、そういった世界中の誰もが共感できるようなテーマを、個人的な出来事・平凡な毎日の中で見受けられる日常の些細なことを描くことによって扱っている(それは製作費ではハリウッド映画と太刀打ちできない以上、一つのありうる選択肢である)。土着的なものから普遍的でナチュラルなものへ、異質なものから同質なものへ、そのような方向で韓国映画が変貌しつつあるように感じる。

 そして、そのような韓国映画の変化を受けて日本での韓国映画の紹介のされ方も変わって行くことになるだろう。以前は、異質な文化との出会いを求めた。これからは同質な部分に共感する作品がより多く紹介されるに違いない。最近の普遍的でナチュラルな韓国映画の物語の中には、韓国と日本、両国民の感性の近い部分を感じることができる作品が多い。その典型例が『八月のクリスマス』だ。この映画は外国人の中では最も日本人に受け入れられるだろう。あの映画のワンシーン・ワンシーンは何か特別なこと、たとえば社会的なメッセージのようなものを訴えかけるものではない。ただひたすら死を前にした一人の青年の日常をホ・ジノという監督の緻密で情愛あふれる視点で切り取っているだけだ。しかし、そのごくごくありふれた毎日の中に多くの日本人は自分が経てきた「生」や「死」、「愛」や「家族」について思い出さずにはいられない。どのように感じるかは観客に委ねられているが、ほとんどの日本人の体験の「何か」に共鳴する映画である。そういうナチュラルな部分を、異質なものではなく同質な部分を感じ取り、共感する楽しみが最近の韓国映画には「ある」のだ。

 映画には現実にはありえない荒唐無稽さを楽しむという部分もある。そして、韓国にもそのような映画はもちろんある。しかし、荒唐無稽さを楽しむのであれば、それはハリウッド映画であったり香港映画、そして最近ではインド映画のほうが「日本人にとって」より突拍子もない荒唐無稽さを持っているので、韓国映画はそれらにかなわないだろう。些細な日常を切り取ることにより得られるナチュラルな物語。そこから得られる共感。「韓国」という異なる者との同質な部分を楽しむ映画鑑賞。これがこれからの「韓国映画を観る楽しみ」となるだろう。


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